人生100年時代ともいわれる中、一人ひとりがいかに心身の健康を実現すればよいのか、そのソリューションへのニーズが高まっている。

今年で創業122年を迎えるロート製薬は、2019年に2030年に向けた経営ビジョン「コネクト フォー ウェルビーイング」を発表し、一人ひとりの身体、心、そして社会を健康にしていくために、製薬会社だからこそできるアプローチを通して価値を提供し続けている。

今回、同社のブランド&カスタマー戦略デザイン本部の藤澤香織さんに、実現したい社会の姿や今後の展望を聞いた。

ウェルビーイングのあり方にも多様性を追求

ロート製薬 ブランド&カスタマー戦略デザイン本部 チーフデザイナーの藤澤香織さん

現在は、ロート製薬にてマーケティング全体の中長期戦略の立案を手掛け、100を超えるブランドのポートフォリオを土台に、人や社会のウェルビーイングにつながる構想をデザインしている藤澤さん。

P&Gの営業からキャリアをスタートし、マーケティングに異動後はSKⅡ・イリュームなどを担当。ロート製薬に中途入社後、オバジのブランドマネージャー、スキンケアを中心とした管理職業務に従事。転職し、ロクシタンやロレアルのマーケティング責任者として活躍していたこともある藤澤さんだが、再度ロート製薬に戻ろうと決意したきっかけを、「ロート製薬が掲げた肌や眼を超えた、健康に対する取り組みやウェルビーイングを目指すビジョンを共に創りたい」と感じたこと。

藤澤さんを惹きつけたビジョンや想いとは、どのようなものなのか。一見すると二律背反の要素に思える“社会のウェルビーイング”と“組織としての成長”を、どうブリッジするのだろう

ロート製薬がこのビジョンを掲げた背景には、企業活動において利益を追求する上でも、一人ひとりを大切に、個人と社会が共に成長できる組織を目指したいという思いがあった。まずは社員がさまざまな挑戦をする土壌と主体性を育む経営を大切にしているという。

ウェルビーイングへの想いを、ブランドのビジョンや戦略に反映し、お客様につなげるためのデザインをしています。既存ブランドの延長線上には、未来を描けない。現在ある商品やサービス、そして会社の強みをいかに社会全体のウェルビーイングにつなげるかが、一番の課題」(藤澤さん)

One Fits Allの時代から、個の時代へ。ニーズも変化

Image via Shutterstock

さらに“個の時代”と言われる今、一人ひとりのニーズに合った商品やサービスへの必要性が高まっていると、藤澤さんは語る。

「社会全体が同じことをすればよい、という時代ではなくなったように思います。また、自分が人生をより幸せに過ごすためには何が必要か、という視点を持つ消費者が増えていると感じます」(藤澤さん)

目指すのは、一人ひとりが身も心もイキイキと過ごせる時間が長くなること。この想いをウェルビーイングの言葉に込めています」と、藤澤さん。では、製薬会社であるロートのバックグラウンドを活かして、どのような価値を顧客に届けるのか。そのひとつとして、ロート製薬の強みであるセルフケアのサポートがある。具体的には、ヘルスケアに対する意識の向上や、自分自身で健康を守る「セルフメディケーション」だ。

「私たちが参入しているOTC(市販薬、医師の処方箋がなくても薬局などで購入できる薬)は、自分で身体の変化や予兆に気づき、ケアするためのアイテム。しっかりとエビデンスをベースにした提案ができている点は、ロート製薬だからこそできること」(藤澤さん)

さらに、個人が自分の意志でケアメソッドを選択できるようになってほしいと語る。藤澤さんは、「そのためには正しい情報が必要。自分の身体について正しく知ってもらうために、貢献できれば」と語る。

休暇からの復帰率100%。女性活躍が根付く文化

「ヘルスケアや、セルフメディケーションに対する意識、始めるきっかけを提供したい。
ロート製薬が持つ知見を融合させ、お客様によりウェルビーイングを感じてもらえたら」と語る藤澤さん。

一般的な女性のキャリア全体で見ると、ライフイベントに伴う離職などもまだまだ多い。しかし現在、ロート製薬では、社内の6割が女性社員、管理職の23%※が女性と、女性活躍が文化として自然に根付いている。※2019年度

また、ライフステージに変化があっても、それがキャリアへのマイナス影響にならないカルチャーは、育休、産休からの復帰率100%という数字が物語っている。藤澤さんもそうであるように、管理職に就く女性社員も増えてきた。30代、40代女性の活躍に伴い妊活、不妊、更年期など女性特有の健康課題は、社内でも身近なトピックとなっているのだそう

これらのトピックに関するセミナーの実施や、新入社員への研修、また社員の健康診断で婦人科系の項目をより充実させるなど、自らの健康に向き合いながら、お客さまや社会への具体的な取り組みを考える環境が充実してきているという。

「働く女性は、病院との距離が生じがち。忙しくてなかなか通院できなかったり、そもそも何科にかかればよいのかわからなかったり、時間と情報不足ゆえに自分の身体を置き去りにしている方々は多いと感じます。

ロートもそんな女性の悩みに寄り添った商品や情報をお届けしていますが、まだまだ道半ば。私自身もこれまで女性の内面から滲み出る美しさや健康的な姿を目指すマーケティングを目指して取り組んできましたが、今後は、変化する女性の体も捉えた、真の健やかさを顧客に提案することをウェルビーイングの観点を取り入れながら推進していきたいと思っています。これからもニーズにかなうソリューションを提供していきたい」(藤澤さん)

社会全体のウェルビーイングという大きなテーマに向かって挑戦を続けるロート製薬。

誰もが自分にあった健康を手に入れ、より幸せに過ごすために、これまで見落とされていた健康課題に寄り添う新たな取り組みに期待したい。

撮影/柳原久子

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