「ウーバーイーツ?って頼んだことないんだけど、配達してくれる人の服装の清潔感とかサンダル履き禁止とか自転車の汚れ方とかについてのルールはないみたいだね」
糸井重里さんの、こんなツイートが話題を呼んだ。
現役ウーバー配達員でライターの飯配達夫さんは、このツイートに違和感を覚えたという。
■サンダル履きは「レアケースのはず」
僕は3年半ほど主に都内で配達員をしているが、サンダルを履いている配達員を見たことはない。糸井さんはサンダル履きで稼働している配達員を実際に見たのだろうか? もし見たのだとしたら、かなりのレアケースのはずだ。
糸井さんの言う通り、そもそもUberには、配達員の服装規定はない。サンダル履きでもルール違反にはならないので、そういう人がいてもおかしくはない。
しかし、日常的に配達員をしている人なら、足元は必然的にスニーカーになっていくはずだ。
Uber Eats 配達員の稼ぎは、1件いくらの完全出来高制だ。日給や時給で給料をもらっているわけではない。だからたくさん注文をこなさなければ、期待通りの収入は得られない。1日あたりの配達件数は人それぞれだが、みんな稼ぎたいと思ってサドルに跨がっているはずだ。
サンダルは歩きにくいし、自転車にも乗りにくい。
■配達員のプライド
配達員がサンダル履きを避けるべき理由は、実はもうひとつある。それは、メンタル面でへこまないためだ。
僕は、2017年に横浜で稼働を開始し、翌18年に東京に移籍。配達の足は自転車で、週3日程度の副業で働いている。コロナ禍以降は稼働を抑えているものの、現在までの配達回数は約6000件だ。
港区や渋谷区で配達していると分かりやすいが、Uberの利用客には富裕層が少なくない。2019年あたりまでこの傾向は顕著だった。
個人的な経験だと、ゴールドマンサックスの社員に六本木タワーまでランチを配達したことが何度かある。また広尾の赤十字センターの近くで富裕層の子弟たちがホームパーティーをしている現場に食事を届けたこともある。タワーマンションへの配達など日常茶飯だ。
毎回感じることは、上級国民と自分の間に横たわる埋めがたいギャップだ。いかんともしがたい無力感。こういうことを日常的に経験していると、メンタルにじわじわダメージが蓄積してくる。
この感じ、分かっていただけるだろうか?
このダメージを少しでも和らげるために、身なりはきちんとせざるを得ない。さもなくば心が削られてしまう。
■ママチャリではメンタルがもたない
よく「ママチャリでも配達できますか?」と聞かれる。配達自体は可能だ。なんの支障もない。
もちろん、ひとくちに配達員と言っても、自転車歴とか、副業か専業か、どんな地区に住んでどこを配達しているか、年齢や経験年数はどの程度かなど、属性によって差が大きいため一般化するのはむずかしい。
糸井氏のいうような配達員も、もしかしたらいるのかも知れない。しかし少なくとも僕の配達エリアでは、めったに見かけないタイプだ。