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Text by 川浦慧
Text by マキヒロチ



ブルックリンのゲストハウスで出会った、日本生まれのニューヨーカー。マキヒロチの記憶

マキヒロチ
第46回小学館新人コミック大賞入選。ビッグコミックスピリッツにてデビュー。

『いつかティファニーで朝食を』では「朝食女子」というワードもブームに。現在は人生の岐路に立つ女性たちが新しい街で一歩を踏み出す姿を描く『それでも吉祥寺だけが住みたい街ですか?』、スケートボードに魅せられた女子の挫折と再生の日々を描いた『SKETCHY』(ともにヤンマガサード)を連載中。



私の思い入れのある街といえばニューヨークだ。正直「ケッ」と思われるかもしれないが仕方がない。



1980年代生まれの私はそもそも『グレムリン』『ゴースト ニューヨークの幻』『ゴーストバスターズ』などのニューヨークが出てくる映画で育ち、音楽もパンクではRAMONES、メタルではANTHRAXを好むような何かとニューヨークに共鳴してしまう人間なのだ。



私の代表作『いつかティファニーで朝食を』も図らずしてニューヨークが舞台の原作の作品をモチーフにしたため、作品取材のために何度もニューヨークに足を運んだ。

取材もプライベートも含め5回ぐらいニューヨークを訪れたが、そもそも海外への渡航回数が少ない私からしたら一つの街にこんなに行くことは異常だ。



幼い頃『ホームアローン』を見て憧れたタイムズスクエアに訪れた時は人生の目標を達成したような気持ちになり、ダコタハウスの前に立っては私が生まれた年にジョンはここで死んだんだなと勝手にシンクロし、ウェストビレッジで『SATC(SEX AND THE CITY)』のキャリーの家を見に行った時は、通りに入った瞬間にドラマの様々なシーンを思い出して嗚咽した。



いろんな場所に「ああ、会いたかったです!」という気持ちにさせてくれるところがある。ニューヨークはそんな思いにさせてくれる特別な街。



そしてニューヨークでの大きな出会いは、こーへーくんとさこちゃんとの出会いだ。



もともと友達だったじゅんきくんが、ブルックリンのモーガンアベニューのアパートメントで小さな宿をやっていて、ニューヨークに来るならおいでと誘ってくれて泊まらせてもらったところ、その宿でじゅんきくんとともにルームシェアしていたのが、こーへーくんとさこちゃんだった。



こーへーくんはフォトグラファー、さこちゃんはウェブメディアの編集長。二人とも私より10こぐらい歳下なのにニューヨークで活躍していてかっこいい若者だ。もともと私の漫画の読者だったさこちゃんとも、スケーターを被写体に写真活動をしてたこーへーくんともすぐ仲良くなり、私は二人が大好きになった。



私が宿に帰ると大きなソファのあるリビングで二人はまったりしていて、お腹が空いたといえばこーへーくんがパスタをつくり、その横でまったりおしゃべりしているさこちゃんがいる空間がとても居心地が良くて、ニューヨークでのホームを見つけたような気持ちになった。



その宿での出会いから、ニューヨークに行くたびに二人に会うようになった(二人が日本に帰って来る時も連絡をくれて遊んでくれる)。



モーガンアベニューの宿はもうないが別の場所で二人はまだ一緒に暮らしていて、私がニューヨークに行くたびに会いに来てくれて、たらたらとニューヨークを散歩するのにつきあってくれる。



私がスケートボードに夢中だと知るとこーへーくんがニューヨーク中のいろんなスケートパークを案内してくれて、クーパースケートパークでは憧れのスケーターのレイシー・ベイカーと遭遇して記念写真を撮ってもらえたのもいい思い出だし、その後『スケート・キッチン』を観るとどのパークも見覚えがあって、本当にいい経験をしたなと、こーへーくんに感謝した。



ロベルタスのピザを一緒に食べたり、街で音楽に反応する猫のおもちゃをたくさん横に置いて演奏するトランペッターに遭遇したり、ガイドブックには載っていないようなお店でシュリンプカクテルを食べたり、ニューヨークの街には二人との思い出がたくさん転がっている。



また早くニューヨークに行って二人に会いたい。ただ街を歩いて景色を見ながらおしゃべりするだけでいいから、そんなゆるい目的で旅がしたい。