Text by 廣田一馬
Text by 於ありさ
ハローキティやシナモロールなどが所属しており、日本だけでなく、世界から愛される存在のサンリオ。そんなサンリオのキャラクターが人気を競い合う、年に1度の人気投票イベント『サンリオキャラクター大賞』が今年40周年を迎えた。
いまやファンのみならず、多くの層が注目する本イベントの魅力はいったいどこにあるのか。その魅力について改めて解説しよう。
まず第一に、サンリオは非常に推し活との相性が良いコンテンツとされている。
近年、アイドル界隈を中心に、アーティスト、俳優、お笑い、スポーツ選手などありとあらゆる界隈に推しを持つ人が多い。もはや1億総推し活時代と言ってもいいほどに「推し」や「推し活」という言葉は年齢層を問わず浸透している。
では、具体的に推し活とは何をするのか。まずはなによりもコンサートやライブ、リリースイベントなどといった「現場」に行くという行為がそれに当たるだろう。その際に持っていくことが多いのが、応援うちわだ。手作りをする人も多いなか、公式から出るものは大抵タレントの首から上、顔面がどんとプリントされているもの。
そこに個性を出すため、最近ではハート型のシールでデコったり、ラインストーンを貼って周りの余白を装飾する人も多い印象だ。ただ、みんながみんな器用だとは限らない。そんななか、2015年前後に登場したのが、サンリオのエンジョイアイドルシリーズの先駆け的存在となる、うちわの収納や持ち運びに便利な「うちわケース」である。

うちわケース
うちわケースはいまやほかのキャラクターやアパレルブランドでもメジャーとなっているが、サンリオのうちわケースが出た当時はうちわケースそのものが珍しく、コンサート会場ではそれぞれのファンが推しのメンバーカラーやイメージに近いキャラクターのうちわケースを使用していたように思える。
また、サンリオのうちわケースは、上部のほうにキャラクターがプリントされているため、まるで推しがキャラクターのフードをかぶっているようにかわいくなるのもポイント。サンリオのロングセラー商品の1つだ。
そして、もう1つのロングセラー商品といえばアクリルスタンドケースである。2025年6月現在発売されているアクリルスタンドケースは、オーロラカラーが煌めくデザインのものや、キャラクターがアクリルスタンドを抱っこしているようなデザインが楽しいボアデザインのものなどさまざま。ただ、もともとは布団のようなデザインがあしらわれたものが主流で、まるで推しがベッドに寝ているようなかわいらしいものが一世を風靡した。

アクスタケース
そもそもサンリオのエンジョイアイドルシリーズとは、推し活ブーム以前から開発担当者自身が「かわいくて便利な推し活グッズがもっとあればいいのに」という思いを形にしてきたシリーズ。かわいい推し×かわいいサンリオのキャラクターの相乗効果で、「現場」にはエンジョイアイドルシリーズを使っているファンが溢れている。
また、サンリオのテーマパークであるサンリオピューロランドやサンリオハーモニーランドで作成できる「おなまえホルダー」もサンリオ×推し活ブームの一端を担う存在だ。これは自分自身で、好きなキャラクターと文字パーツを選んで自分だけのおなまえホルダーを作れるというもの。

もともとは自分の名前で作っていた人が多いなかで、いまは推しの名前と推しのイメージで作成する人も多い印象だ。一時期、ピューロランドでは開演時からこのおなまえホルダーを作れるコーナー「メルヘン工房」への列がどのアトラクションよりも伸びていたことがあるほど。
推しのいる人にとって、サンリオキャラクターの存在は切っても切れない存在なのだ。
もちろん、推し活との相性の良さもあって近年のサンリオが盛り上がっているのは否めないが、サンリオキャラクターそのもののタレントパワーも強いと分析している。
実際、街にはスナック菓子やコスメ、アパレルブランドなどさまざまなメーカーとサンリオキャラクターのコラボグッズが溢れている。それは日本のみならず、海外においても言えること。
アジア圏の国はもちろんだが、昨年筆者がヨーロッパ圏を旅行した際には、当たり前のようにハローキティがプリントされたファッションを身に纏ったり、かばんにクロミのマスコットキーホルダーを着けたりしている人とすれ違うということも複数回あった。
そんなサンリオの人気投票企画『サンリオキャラクター大賞』は年に1度の大イベント。もともとは1975年にサンリオの機関誌『月刊いちご新聞』上で行われていたサンリオキャラクター人気コンテストが始まりで、1985年から現在の形となった。2000年代には、現在と同じくウェブ上で誰でも無料で簡単に参加できることになったのもあって、ぐっと得票数も伸びた印象だ。実際、2024年の総投票数は5707万4053票と歴代最多をマークし、その注目度の高さが伺われる。
近年は白い子犬の男のコ・シナモロールが5連覇を記録中。今年は6連覇なるか……と注目されている。しかし、そんなシナモロールを追いかけて、今年の初日速報や中間発表で1位をマークしているのは昨年4位だったポムポムプリン。
ここまで紹介して、すでに気づいた方もいるかもしれないが、じつは近年トップを飾っているのは犬の男のコの3キャラクター。これは、近年キャラクターが女性や子どもだけのものではなく、老若男女問わず多くの人たちを魅了する存在となっているため、かわいい、だけど男のコ、という一見ジェンダーレスな魅力のある3キャラクターが人気なのかもしれない。実際、中間順位発表の4位にはクールな一面もある黒い頭巾が特長のうさぎのキャラクタークロミがランクイン。
その後には、昨年50周年を迎えたハローキティ、今年50周年を迎えたマイメロディやリトルツインスターズ(キキララという呼び名で覚えている方も多いだろう)、40周年イヤーのハンギョドンとアニバーサリーのキャラクターたちが続いている。
投票は海外からもできるのだが、海外票の傾向はまた異なるため、それもおもしろい。
2025年の中間順位発表ではポムポムプリンがアメリカを始めとする10の国と地域で中間発表1位を獲得する一方、チョコキャットやウサハナといったキャラクターも大きく得票数を伸ばしている。
この海外投票の結果がいったいどこまで影響するのか、最終結果が発表される瞬間までわからないのもおもしろい点だ。
サンリオの魅力といえば、かわいらしいということは言うまでもない。
例えば直近、父の日があった際には、弟と一緒にお父さんに肩たたき券を渡すマイメロディの姿が公式Xにて投稿された。3人が微笑み合う姿はなんとも優しい気持ちになれる。
その一方で、同じ日にポムポムプリンは「パパ、ぎゅってしてね♡」とちょっと恥ずかしそうに手作りの装飾でお祝いしている姿を投稿。これもまたポムポムプリンの普段のやんちゃな姿とのギャップでかわいらしい。
このように同じ日、同じイベントであってもそれぞれのキャラクターの個性が見られるのはサンリオキャラクターのかわいらしさであり、楽しいところである。
また、サンリオキャラクターをこれから知りたいという人にぜひ見てほしいのが、サンリオの公式ホームページに載っている各キャラクターのプロフィールだ。フリーワードやデビュー年、誕生月などさまざまな要素で検索できるこのページ、見れば見るほどクスッと笑ってしまうおもしろさがある。
例えば、1970年代で検索してみよう。1970年代といえば、いまも活躍するハローキティやマイメロディ、リトルツインスターズといったキャラクターが生まれた時代。一際目を引くのが、汽車と木馬だ。単語ではなく、これも歴としたキャラクター名。
さらに西洋の文化を学ぶために華の都パリに洋行したお侍さん、夢之介と鉄之進によるカルチャーショックや、どこにでもいるフツーのしがないサラリーマンの3人組・中年ひろいん Ojisan'sといった一度見たら忘れられないインパクトのあるキャラクターも多い。
いずれにせよ、1キャラクター1キャラクターにサンリオの「かわいい」のエッセンスと、見る人を笑顔にする要素が込められているので、ぜひとも時間のある時にぼーっと眺めてもらえたらと思う。きっと気になるキャラクターが見つかり、気づけばサンリオ沼へとハマっていくことだろう。