首都圏に住居を構えようとする時、「狭小住宅とタワマン(タワーマンション)で迷う」というご家庭は多いようです。費用を抑えて戸建てを持てる狭小住宅は魅力的ですが、好立地に建てられスタイリッシュな外観のタワマンも憧れの住まいとして外せません。


では、両者が同じ価格と仮定した場合、お金の面から将来的なことを考えると、狭小住宅とタワマンはどちらがお得なのでしょうか。今回は、将来を見据えた場合の狭小住宅とタワマンのメリット・デメリットをまとめました。

■狭小住宅・タワマンとは? 平均価格は?
<狭小住宅・タワマンとは>

住宅資金は「人生の3大資金」の1つであり、一般的に、住宅の購入には大きな金額が必要です。特に、都市部など地価の高い場所では、マイホーム購入が大きな負担になる場合も多いでしょう。そんな時、選択肢の1つになるのが「狭小住宅」です。

狭小住宅に明確な定義はありませんが、一般的には、15坪(50平方メートル)以下の土地に建てられた住宅のことを指します。
「くの字型」や「三角形」など、本来ならあまり住居には適さない変形地に建てられることも多いです。

また、ほとんどの狭小住宅には庭がなく敷地ギリギリまで家が建てられており、床面積を増やすために地下室が設けられていたり、3階建てになっていたりする住宅も多くみられます。

一方、タワマン(タワーマンション)とは「超高層マンション」のことで、従来のマンションよりも高層のマンションがタワーマンションと呼ばれます。こちらも明確な定義はないものの、20階以上の超高層マンションを指すのが一般的です。

タワマンの特徴としては、駅をはじめとした大規模な再開発を同時に行い、交通アクセスや周辺施設の充実を売りにしているものが多いということです。また、スポーツジムやプール、ゲストルームなど、住む人の快適さをサポートする共用施設が併設されているタワマンも多くみられます。

<狭小住宅・タワマンの平均価格>

では、狭小住宅やタワマンの平均価格はどのくらいなのでしょうか。まず、10坪の土地に狭小住宅を建てるとした場合の土地の価格と住宅の価格の目安を出してみます。東京都内の地価を参考に考えると、山手線内の地域の土地の価格は3,000~6,000万円、それ以外の地域は1,000~2,500万円が相場となりそうです。

これに住宅の価格が加わりますが、10坪ほどの狭小住宅の場合、坪単価は50~70万円が相場で、たとえば延床面積が70平方メートルの家なら、住宅価格は1,000~1,500万円が目安となります。ただし、付帯工事費用や諸費用が加わり、実際の金額はこれよりも多くなります。

一方、「ニフティ不動産」によると、2022年12月時点の品川区のタワマンの価格目安は3,880~1億7,980万円となっています。
これらのデータを見た限りでは、都内に狭小住宅を建てる時にかかる費用と、タワマンを購入する時にかかる費用はさほど変わらない場合もあるでしょう。

では、住宅購入にかかる金額が同じとした場合、お金の面から将来的なことを考えると、狭小住宅とタワマンにはどのようなメリットやデメリットがあり、どのような人に向いている住宅なのでしょうか。
■狭小住宅のメリット・デメリットと向いている人
<メリット>

・都市部に家が建てられ、コストも抑えられる

狭小住宅なら、地価の高い都市部でも、土地を安く購入できます。本来なら購入が難しいような土地に戸建てを持ち、周辺環境の整った場所に住めるのは大きなメリットでしょう。

また、小さい家のため入居後の光熱費などコストが安く済み、節約にも役立ちます。

・税金が安い

不動産を購入すると固定資産税や都市計画税がかかりますが、狭小住宅は小規模住宅用地に当たるため、一般住宅用地よりもそれらの税金が安くなる傾向にあります。
ただし、お住まいの自治体によっても税率は変わりますので、よく確認してみましょう。
<デメリット>

・高齢者には暮らしづらく、リフォームや修繕のコストが高くなる

狭小住宅は敷地面積が狭いため、3階建ての物件がメインになります。3階建てになると階段の上り下りが多くなり、高齢者になった時には負担がかかるでしょう。

さらに、3階建ての狭小住宅では、リビングや居室、水回りなどの機能が別々の階に配置されていることが多いため、各階を頻繁に移動しなければならないことも考えられます。

将来はリフォームでホームエレベーターを設置することも可能ですが、前面道路が狭かったり隣家との距離が近く足場を組みづらかったりする場合、リフォームできないケースもあります。仮にリフォームできても、他の場所に作業場を確保したり人員を増やしたりする必要があるため、余計なコストがかかってしまうでしょう。


・長期優良住宅の認定を受けられない場合が多い

長期優良住宅とは、「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた家」のことです。購入する家が一定の基準を満たし長期優良住宅に認められると、税金が安くなり低金利の住宅ローンが利用できるなどのメリットが受けられます。

しかし、狭小住宅では、「最低でも12坪(40平方メートル)以上の床面積」という基準を満たしていないことが多く、長期優良住宅として認められない可能性があります。狭小住宅でも長期優良住宅として認められるには、家を建てる前に基準をしっかりと確認しておきましょう。
<どのような人に向いている? >

狭小住宅は、都市部など周辺環境や交通アクセスの良さを得ながら、なおかつ戸建てにこだわりたい人に向いているでしょう。また、土地代や税金が安く済むことから、その分子どもの教育にお金をかけたり、老後資金に回したりしたいという家庭にもおすすめです。

■タワマンのメリット・デメリットと向いている人
<メリット>

・共用施設やサービスが充実している

住戸数の多いタワマンほど、ラウンジやトレーニングジム、ライブラリーなどの共用施設が充実しています。また、コンシェルジュによる訪問者の受付や案内、宅急便の取り次ぎなど、さまざまなサービスが提供されます。

こうした共用施設やサービスは、売却時にも物件の大きなアピールポイントになるでしょう。

・資産性の高さが売却時、有利になる

都心部のタワマンや、都心から離れていても駅から近く利便性の高い立地に建てられているタワマンは、資産価値が落ちにくい傾向にあります。購入した時の価格から大きく下がらない価格で売却できれば、住宅ローンの残りも完済しやすいでしょう。
<デメリット>

・管理費や修繕積立金が高い

マンションでは、管理費や修繕積立金などの維持費が毎月発生しますが、タワマンでは、これらの費用が一般的なマンションより高いという特徴があります。管理費や修繕積立金は高層階ほど高く設定されていますので、よく確認しましょう。

また、修繕積立金は築年数の経過とともに値上がりします。住み始めた当初は気にならなくても、子どもの教育費がかかる時期や、共働きをやめて収入が減った場合などはこれらの費用が負担に感じるかもしれません。

・共用部分を使わない人には無駄なコストがかかる

先ほどもあったように、タワマンには共用施設が充実しているものも多くあります。しかし、このような施設に興味がない人や、だんだん使わなくなってしまった人にとっては、無駄な費用を負担するだけになる恐れもあるでしょう。

長い目で見ると、使わない施設のために大きな金額を支払ってしまうことになるかもしれません。
<どのような人に向いている? >

タワマンは、将来的な売却を視野に入れている人に向いていると言えます。特に、高齢者になるとマンション暮らしが不便になる場合もありますので、住み替えを前提にタワマンを選ぶのも選択肢の一つでしょう。
■長い目で見た時のコストもよく考えよう

狭小住宅とタワマンには、それぞれ違った魅力やデメリットがあります。どちらがより「お得」とは一概には言えませんが、家を持つには大きな費用がかかるため、それぞれ長い目で見た時のコストをよく考えることが大切です。また、費用面はもちろん、さまざまな角度から狭小住宅とタワマンを比べ、ご自身の生活によりマッチする住まいを選びましょう。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら