2024年4月にデビュー10周年を迎えるWEST.の神山智洋が、自身初の単独主演作品且つ、初のWOWOW作品の主演に挑んだ連続ドラマW-30『白暮のクロニクル』(WOWOWプライム/WOWOW 4K/WOWOWオンデマンド 全12話 毎週金曜23:00~※第1話無料放送)が、3月1日から放送&配信される。

原作は、『機動警察パトレイバー』など数々の人気作品を生み出している漫画家ゆうきまさみが、2013~2017年まで漫画誌『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載し、不老不死の種族"オキナガ"×公務員"という異色のコンビが難解な事件に挑むという斬新な設定が人気を博した同名コミック。
不老不死の体質を持つ「オキナガ」である雪村魁は、「オキナガ」絡みの殺人事件の捜査に協力する傍ら、60年間にわたり、未年のクリスマスに起こる連続殺人事件、通称「羊殺し」にかつての恋人を殺されており、犯人を突き止めて復しゅうを果たすことを目的としている。

オキナガたちを管轄する厚生労働省の「夜間衛生管理課」、通称“夜衛管”への異動を通告され、魁との連絡係を命じられる新米職員の伏木あかり(松井愛莉)とバディを組み、衝突を繰り返しながらも事件解決に向けて協力し合い奔走していく。「見た目が18歳、実年齢は88歳」の雪村魁を演じた神山智洋に、本作を通じて得た“学び”を語ってもらった。

○撮影が終わるまでひたすら考え続けた

――今回の作品の主演に決まった時の心境は?

4年ぶりのドラマということもあって、ドキドキワクワク でしたね。ここ最近、僕は主に演劇をメインにやってきたこともあって、表現の仕方が異なる映像のお芝居に対応できるかなという気持ちもありつつも、雪村魁を演じるのが純粋に楽しみで仕方なかったです。

――WEST.のライブを見たプロデューサーが、雪村魁役を神山さんに決められたとか。


ちょうど襟足を伸ばしていて、雪村魁っぽいビジュアルではあったと思うのですが、ライブパフォーマンスやステージ上の僕のたたずまいを見て、「あ、魁だ!」だと思ってもらえたというのは、本当にありがたいことですね。どの仕事がどこでどう繋がるかわからへんなって。人生には、無駄なことなんて何一つないなんだなって、改めて思いましたね。

――"見た目は18歳、実年齢は88歳"という雪村魁を演じる上で、心がけたことは?

18歳の子が(そのままの見た目で)70年生きているという、現実にはあり得ないことが起きているわけで。88歳のおじいちゃんと一緒かと言うとそうではないし、18歳の子と一緒かと言うと、そうでもないし……みたいな。雪村魁はどこか達観しているというか。
「見たくないものを見て、聞きたくないものを聞いてきて……」という経験を散々してきた18歳の子である、というところから原作や台本と照らし合わせつつ、「原作ではこんなふうに動いてこんな感じで喋っているんだ」って。自分の持ち得る限りの想像力を働かせてできるだけリアルに演じたかったので。撮影が終わるまでひたすら考え続けました。

――現場でもどんどん進化させていったわけですね。

もちろんある程度のところまで自分の中で"魁像"を作り上げた上で現場に行って、そこでまずは1回やってみて。「これはちょっと違うかも……?」となった時は、監督やスタッフさんたちとディスカッションを重ねていきました。
今回の現場は同世代の俳優さんも多かったので、なるべく自分から率先してコミュニケーションを取ろうと心がけていたんです。現場を盛り上げていい空気を作ろうと。監督からいただいたアドバイスの中でも特に軸になったのは、 「雪村魁は、他人に期待する気持ちを失くしている」という言葉でした。

松井(愛莉)さん演じる伏木あかりと魁が出会う場面についても、「魁は伏木に期待もしていなければ、自分からは近づこうともしない」と監督から言われて、「なるほど!」と。二人称ひとつとっても、「あんた」なのか「君」なのか、「お前」なのかによって、距離感や関係性が変わってきますよね。台本を読みながら監督と「この段階では、まだ『お前』って言わないと思うんですよ」みたいなところまで、とことん突き詰めていったんです。
もともと僕には読解力があまりなくて。楽曲を聴いている時も、自分以外の人が作った曲だと、僕の場合はどうしても歌詞より音の方に耳がいってしまうんですよ。実のところWEST.の曲であっても、すべての楽曲の世界観を理解しきれてはいないというか……

他のメンバーに「これってこういう歌やんね」って言われて「あ、そうなん」ってなることが結構多くて。これまで僕の持ち得る読解力では読み解けなかった部分も正直あったんです。でも、今回は「それじゃいかん」と思って、本当に最後までちゃんと粘って自分の頭で考えて、相談しながら決めていくことを目標にしていて、それは実践できましたね。なので、ぜひとも今回の作品では、二人称の使い分けまで聞いていただければと(笑)!

○皆で話し合って決めていくというスタイルを

――アクションシーンもかなり本格的だったようですね。


身に覚えのない傷や痣が、撮影期間中はとにかくいっぱいありました(笑)。風呂に入った時に、「ん…? こんなところに傷あったっけ?」って、その日の撮影を振り返って、「あ! あの時のあれか!」みたいな感じで。というのも、撮影している最中はアドレナリンがドバドバ出ているから、自分では全く気がつかないんですよ。僕にとっては、頑張った証でもあるというか。それだけちゃんとそのシーンに向き合えたということだと思っていて。今回は、「とにかくできることは全部やったろう!」っていうのが自分の根底にもあって。
アクションシーンも多いのですが、たとえどんなハードなことでも決して「NO!」とは言わず、「むしろ自分から進んでやりに行こう」みたいなところもあったかもしれません。身体を張って演じるシーンもすごく多かったので、ぜひ注目して観ていただきたいです。

――ビジュアル的にもかなり攻めた表現のドラマになるではないか、と期待しています。

そうですね。そこは僕が口で説明するよりも、ぜひともドラマを観ていただいて、ご自身の目で確認していただければと。「できるだけ原作に忠実にリアルに近づけたい」というのが、この作品に関わったスタッフ・キャスト全員の思いだったので。ギリギリまで攻めています。WOWOWさんだからこそ実現できた表現に溢れているのではないかと思います。

――ちなみに、雪村魁はオキナガですが、神山さんご自身は"不老不死"に憧れますか?

いや、憧れないですね。僕自身はちゃんと人生を全うしたいというか、もしも魁みたいにずっと年を取れなかったら、精神が崩壊しちゃいそうな気がします。そう思うと、雪村魁はすごく強いキャラクターですよね。魁には絶対に果たしたい"執念"があったからこそ、生きてこられたんだろうなとは思います。かっこいいおじいちゃんになるのが目標です。

――とはいえ、「なるべくなら若く見られたい」という願望も……?

僕自身は実年齢よりは落ち着いて見られることが多くて、それこそ20代中盤ぐらいまではなぜか常に2個上に見られていたんですが、 27ぐらいの時にやっと年相応になって、最近ようやく実年齢より若く見られるようになりました。出来ることなら、このまま60~70歳くらいまで、いまの自分の見た目をキープしたいですけどね。

――周りの方からどんな反響がありましたか?

僕の祖父ちゃんと祖母ちゃんは、僕の出演作品は毎回かかさずチェックしてくれているので、今回も絶対にWOWOWに入ってくれると思います。なんなら、もう既に入っているかもしれないです(笑)。WEST.のメンバーに「見た目は18歳、年齢88歳の吸血鬼探偵の役をやる」と話したら「どんな設定やねん!」ってツッコまれましたけど、重岡がこのドラマの特報を観て「面白そう!」と言ってくれました。魁の場合はシリアスな芝居が多くはあるのですが、この作品には思わず関西人の血が騒いでしまうようなコメディパートも意外とあったりするんです。『白暮のクロニクル』というタイトルだけあって、描かれる時代設定も多岐にわたるので魁が「オキナガ」になる前の演じ分けも大変だったのですが、"活動弁士"に扮しているところは個人的にぜひ注目していただきたいです。自分で言うのもなんですが、かなりはっちゃけていて面白いシーンになっていると思います。撮影中にスタッフさんに撮ってもらったオフショットも1,000枚近くあるので、ドラマの放送&配信に合わせて発信できたらいいなと思っていて。ネタバレ厳禁の作品なので放送前は難しいですが、解禁になった後はインスタライブで裏話なんかも披露できたらいいですよね。

――では最後に。この作品を通じて、神山さんが学んだことは?

これまでは、求められることにひたすら必死に応えている感じだったのですが、今回の作品では、現場で皆さんと積極的にコミュニケーションを図りながら作品を作り上げていけたことが、僕の中ではすごく大きくて。やりがいも感じましたし、今後お芝居を続けていく上でも、役や作品との向き合い方が劇的に変わってくると思います。台本の読解力も以前と比べて格段に上がりましたし、自分が感じたことを周りに伝えながら、皆で話し合って決めていくというスタイルを実現できたことが、今回僕が得られた大きな収穫ですね。