パソコン大手のレノボは2月27日、日本を含むアジア太平洋地域の企業によるAI(人工知能)への投資に関する調査結果を発表した。これによると、日本の最高情報責任者(CIO)の89%が、2024年のビジネスにAIは不可欠と認識している一方で、生成AIに投資した国内企業はわずか2%にとどまっていることが分かった。


同日に記者会見したレノボ日本法人の多田直哉社長は、日本の生成AIの導入率が低いことに対して「好機だと捉えている。日本のCIOの多くは生成AIがビジネスにとってメリットであると確信している。2024年は大きな転換期で生成AIの活用がさらに進むだろう」との見解を示した。

生成AIに投資する日本企業、韓国の16分の1

同調査は、2023年7~10月にかけて、インド、韓国、日本、ASEAN諸国(シンガポール、香港、タイ、台湾、フィリピン、マレーシア、インドネシア)、ANZ(オーストラリア、ニュージーランド)からなるアジア太平洋地域の12カ国で900人以上のCIO(日本は150人以上)を対象に実施された。

生成AIに投資した国内企業は2%だったが、79%が「2024年内に投資予定」と回答した。残る19%が「計画なし」または「聞いたことがない」と答えた。
日本以外に目を向けると、投資済みと答えたのは韓国が33%、インドが28%、ASEAN諸国が11%だった。「日本は依然として慎重だ」(多田氏)

生成AIは、あらゆる業界・職種で業務の効率化や自動化が期待できる技術だが、生成AI活用のユースケースが不足していることが課題として挙げられた。多田氏は「AIを活用したビジネスの事例づくりがまだまだ足りない。従業員たちが抱える『自分の仕事が脅かされている』といった不安を払拭することも重要。従業員へのAIツールのトレーニングも欠かせない」と述べた。

業界別にみてみると、金融業や官公庁、小売業などは生成AIへの投資を進めている一方で、医療機関は慎重な姿勢をみせている。
生成AIへ投資済みもしくは計画中と答えたのは、金融業が93%で医療機関が69%と大きな差がみられた。

CEOとCIOで異なるAIへの期待

また同調査によると、アジア太平洋地域の企業によるAIへの支出が、2024年には前年比で45%増加する計画が明らかになった。一方で、最高経営責任者(CEO)とCIOのAIに対する優先事項や期待が異なることも判明した。

「CEOは顧客体験の強化や成果の向上で生成AIをはじめとする新興テクノロジーを優先したいと考える一方で、CIOはセキュリティやインフラストラクチャー、人材の考慮事項に対応するAIを優先的に考えている」と、レノボ 最高マーケティング責任者(CMO)のフリン・マロイ氏は説明した。

同氏は続けて「CIOは生成AIが大規模なデータセットに依存していることを懸念している。こうしたリソースは大半の企業で不足しており、45%のCIOがAI人材の獲得に苦戦している。
人材育成と維持、誘致のための強力なデータ文化の構築が必須だ」と提言した。

例えば、AIによって経理などの労働集約型モデルが自動化しクラウドで一元管理されるようになると、従業員は自由になった時間にデータ分析などのより貴重な業務を行うことができるようになる。人口減少による労働力不足が懸念される日本にとって生成AIの活用は重要だ。

レノボの今後のAI戦略として多田氏は、「顧客との密度の濃い対話を通じて、ビジネスインサイトを見つけていく。技術の話ではなくて、何に困っているのかを探り出す。2024年を転換期だと捉え、あらゆる業種でAIソリューションをサポートしていく」と、意気込みを見せていた。