「ナナハン・エフ」の愛称で呼ばれ、大型バイク冬の時代にあって爆発的ヒットを記録したホンダの「CB750F」。漫画『バリバリ伝説』の影響からレーシーなイメージが強いが、実際のところはどうなのか。
現在の中古車事情は? バイク王で実車を確認してきた。

ナナハン人気を再燃させた「CB750F」

CB750Fは日本で大型バイクの人気が低迷していた1979年に登場したバイクだ。

ホンダは1969年、世界初の直列4気筒エンジン搭載車「ドリームCB750フォア」を発売する。このバイクは瞬く間に国内外から高い評価を得ると、ライバルメーカーであるカワサキが1973年に投入した「Z750RS」(Z2)らとともに、国内のナナハンブームを牽引していった。

ところが1975年の免許改正により、大型バイクに乗るために限定解除が必要になると、ブームは徐々に下火に。ナナハンの名車も相次いで生産終了となった。


大型バイクにとって「冬の時代」ともいえる1979年、ホンダが市場に投入したのが「CB750F」(FZ)だ。CBの系譜を受け継ぐこのバイクの登場は、当時のライダーたちが改めてナナハンに目を向ける契機となり、ナナハンブーム再燃の立役者となった。

CB750Fの大きな特徴はスタイリングだ。

当時の国産バイクでは、ガソリンタンク、サイドカバー、リアテールがそれぞれ独立した形状になっていることが普通だった。ヨーロピアンスタイルをそのまま持ち込んだCB750Fは、当時としてはかなり斬新に見えたはずだ。日本で受けるかどうかについてはホンダにとっても未知数だったと思うのだが、結果的には大ヒットとなった。


海外のレースでも活躍したワークスマシン「RCB」のフィードバックを受けたCB750Fは走行性能抜群。セパレートハンドル、フロントダブル/リアシングルのトリプルディスク、減衰力調整機構付FVQダンパーを採用するなど、サーキット色の濃いスポーツモデルだった。

その後のCB750Fは、海外モデル「FD」の生産が1983年まで続いたが、1982年に登場した空冷エンジン搭載のVFシリーズと入れ替わる形でラインアップから姿を終了した。日本モデルは1982年の「FC」で終了している。
「CB750F」の流通状況は?

一時代を築いたCB750Fの現在の流通状況はどうなっているのか。バイク王茅ヶ崎絶版車館の岡本拓也さんによると、現在でも年間80台ほどの買取実績があるという。


「販売台数が多かったこともあり、買取台数はけっこう多いですね。車体コンディションとしては、しっかりと使われている印象が強いです。ノーマルで大事に乗るというよりは、カスタムしている方がほとんどだと思います。FCRキャブレターに変更したり、足回りを換装したりして、現代風にして乗られていることが多いですね」(以下、カッコ内は岡本さん)

通常、旧車ではノーマルパーツの有無が買取価格に影響することが多いが、CB750Fに関してはどうなのだろうか。

「CB750Fに関しては、あえてノーマルに戻すことが少ないので、あまり差はありません。ノーマルよりもカスタム車両の方が評価される傾向も見られます。
やっぱり、走りを求めて選ばれることが多いバイクですから、車両状態の優先度が高くなります」

バイク王での店頭販売価格は200万円~250万円ほど。こうした傾向は今後も続くというのが岡本さんの読みだ。

「CB750Fの場合、販売車両で綺麗な状態が多いのはFCですが、好きだからFBに乗っているとか、FBやFCは高いからFZに乗っているという方もいらっしゃいます。なので、あくまで個人の予想になりますが、何か1つのモデルを求めて価格競争が起こるバイクではないと思います」

しっかりと使われている半面、メーターの走行距離で6万キロを超える車両も珍しくないというCB750F。コンディションを保つコツとは?

「カスタムパーツが豊富なため、キャブレターなどの純正部品が壊れてしまっても社外パーツに交換すれば長く乗車することが可能です。半面、カスタム車両が多いので、例えば足回りも、車種専用ホイールに交換してあるとかであればいいのですが、完全流用で他車種の純正足回りになっていたりすると、万一の時にお手上げですよね。
それを避けるためには、他車種からパーツを流用しているバイクは選ばないことが最善の策です。そういう意味で、特に最初のバイク選びが肝心になってくると思います」

■Information
取材協力:バイク王茅ヶ崎絶版車館
【場所】神奈川県茅ヶ崎市下町屋1-10-26
【営業時間】10:00~19:00
【定休日】水曜日
【備考】記載の情報は取材時のもの。車両の在庫状況や現車確認を希望の場合は0120-222-393まで要問い合わせ

安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら