●佐内正史氏と表現する“新しいグラビア”
リアリティ番組『テラスハウス』(フジテレビ系)で一躍脚光を浴びた筧美和子。当時19歳だった彼女も、今年3月に30歳になった。
そんな節目の年に、7年半ぶりとなる写真集『ゴーみぃー』(4月26日発売 3,300円 集英社)を発売する。グラビアアイドルとしての活動を経て、女優になった彼女が同作で表現したかった“新しいグラビア”に迫る。

○7年半ぶりの写真集を作ろうと思ったワケ

『テラスハウス』出演を機に、各誌グラビアを席巻した筧。篠山紀信さん撮影の1st写真集『ヴィーナス誕生』(幻冬舎)で見せた大胆な姿も話題を呼んだ。近年は活動の軸を女優業にシフトし、メインキャストとして作品をリードするだけでなく、限られた出演シーンでも鮮烈な印象を残している。一方、女優業の本格化とともに、グラビアからは遠のいていたが、背を向けたわけではなかった。


「頭の片隅ではずっと、グラビアと自分なりに向き合って、何か形にできないかなと考えていて。どんな写真集にしよう? 誰に撮ってもらおう? と、いろいろと模索していました」

そんななか出会ったのが、映画『ジョゼと虎と魚たち』の劇中使用写真や、中村一義をはじめとするアーティストの撮影などで知られる写真家、佐内正史氏だった。

「もともと佐内正史さんの写真が好きで。遠い存在の方だと思っていたんですけど、佐内さんにグラビアを撮ってもらうことが、今、自分が求めていることかもしれないと思って、ダメ元でお願いしてみたんです。そしたら、快く受けてくださって、一緒にやらせていただけることになりました」

○『ゴーみぃー』に込められたメッセージ

写真表現の第一線で活動を続けるレジェンドとの撮影は新鮮なことばかり。ロケ地を決め、短期間のスケジュールで集中的に撮影する、いわゆる写真集の撮影とは違った時間も共有した。


「佐内さんは、風のような、猫のような人。あんなに自然体な人を見たことがないくらい。撮りたかったら撮るし、撮りたくなかったら撮らない。その流れの中にいたら、私も自然とそういう状態になれた。撮影しようと言って会っても、2時間くらいお茶をして、喋って、今日はいいかって(笑)。でも、それが心地いいというか、すごくありがたかった。
散歩して、ご飯を食べて、自然と関係を築けていけた、今までとは全く違う撮影の仕方でした」

写真集のタイトルは『ゴーみぃー』。撮影のロケ地候補として挙がっていた施設名「GoMe」の響きが、「みーこ」「みーちゃん」と呼ばれる筧と重なり、佐内氏がメモに残していたそうだ。新しいグラビアを作りたい。そんな思いを託された佐内氏から筧へのメッセージ。行け、みーこ。

写真集の撮影がきっかけで、佐内氏が監督を務めた、ハナレグミ「MY夢中」のミュージックビデオにも出演した。
写真集のために撮影していた筧の写真を佐内氏が永積タカシに見せ、「映像のイメージに合うと思うから」と提案したところ、映像で表現されている「自然な感じ」にハマった。写真集には、このミュージックビデオの撮影中に撮影されたカットも収録されている。筧も、この曲を何度も繰り返し聴くうちに、写真集とリンクする部分を感じ取ったという。

「この曲の歌詞やメロディーを、人にはなかなか分からないような、自分の大事にしてるものを守っていくことを応援してくれる応援歌のように私は捉えていて。写真集の背中を押してくれる感じともマッチしている。自分にとって、力をくれる存在の作品に2つ同時に出会えたなという気がしています」

篠山紀信さんの言葉「心のパンツを脱いでね」が意味すること

○女優業がグラビアに与えた影響

5年ぶりのグラビアで、新境地に達することもできた。


「水着の撮影は主に沖縄で行いました。久しぶりでしたが、それまでに時間をかけて、じっくり、ゆっくりと撮影してきてもらっていたので、恥ずかしさは特になく、自然な流れで撮ることができた。ただ、カメラの前だと決めちゃうというか、繕ってしまう。そういうとき、佐内さんはシャッターを押さない」

「私自身、そういう繕った姿ではなくて、にじみ出るような瞬間を撮ってもらえたらという共通認識があったので、そうだよね、今は押さないよねって。ニュアンスですけど、余計なものがそぎ落ちた状態。長年のクセとかを忘れて、新たな気持ちで撮ってもらうことができました」

女優として、演じることを突き詰めてきた5年間があって、演じないありのままの自分をグラビアで表現する。
女優業に注力したことが、グラビアにも影響した? そう聞くと、「そうだなあ……」と考え込んだあと、「うまく言えないんですけど」と遠慮がちに前置きしながら、自身の感覚を言葉にしてくれた。

「グラビアだけをやってた頃と違って、お芝居でいろんな役を演じると、その分、たくさん人のことを知れるような気がする。自分の視野もどんどん広がっていくし、5年前と比べて、私自身が人を見る感覚も変わってるので、おのずと自分を見せるときの感覚も広がっているのかなと」

○篠山紀信さんの“金言”

過去にグラビアを経験し、唯一無二の存在になっている女優も少なくない。女優業がグラビアに影響を与えたように、その逆もあるのだろうか。

「昔、篠山紀信さんに写真を撮ってもらったとき、『心のパンツを脱いでね』とおっしゃっていて。当時はまだ19歳くらいでしたが、感覚的にその言葉の意味はなんとなく理解できた。場所は違えど、根性的なことではなく、自分の殻を破るというか。それをグラビアで経験させてもらったなって。写真なら写真に対して、映画なら映画に対して、心がつながっているところがある。なので、お芝居にグラビアの経験はかなり生きているなと思います」

2018年公開の映画『犬猿』では、要領は悪いが、容姿と人当たりの良さで人気者の妹という役を演じた。ニッチェ江上敬子演じる、見た目は悪いけど、頭がよく勤勉な姉と激しい感情をぶつけ合うシーンは圧巻だった。そう伝えると、筧は少し照れくさそうに微笑みながら、当時を振り返った。

「当時、技術的なことがまだ何も分かっていないときに、あの役をやらせていただくことになったので、本当に心のパンツを脱ぐしかなくて。体当たりで挑んでいくしかなかった。でも、あの作品が、これからもお芝居をやっていきたい、本格的に学びたいと思うきっかけになったので、そう言っていただけて、うれしいです」

グラビアで培ってきたもの、女優業で培ってきたもの、そして、写真が好きという気持ちがギュッと詰まっているという写真集の見どころはズバリ?

「写真集を作る上で、力みたくないと思っていたので、本当にいつも通り。むくんでる日もあるし、熱を出したあとで、すごくげっそりしてる日もある(笑)。普段は作品前に、自分のいい状態に持っていくように調整したり、体調に気をつけたりしているのですが、この写真集には、そうじゃない姿が随所に出てくる。これ、女優? ってなると思います(笑)」

(C)佐内正史/集英社

■プロフィール
筧美和子
1994年3月6日生まれ、東京都出身。2013年、リアリティ番組『テラスハウス』(フジテレビ系)に出演し、注目を集める。2014年から2019年まで、ファッション誌『JJ』(光文社)の専属モデルを務める。2014年、ドラマ『最高の離婚Special 2014』(フジテレビ系)で女優として本格デビューを果たし、その後もドラマ・映画と話題作への出演が続いている。