●舞台『ハリポタ』ロン役合格に喜び「自信になった」
リズムに合わせて“ひょっこり”顔を出す芸で2018年にブレイクし、近年は俳優として舞台やドラマにも挑戦しているお笑い芸人・ひょっこりはん。現在、東京・TBS赤坂ACTシアターで上演されている舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でロン・ウィーズリー役の新キャストに抜てきされ、7月から出演する。
活躍の幅を広げているひょっこりはんにインタビューし、2018年のブレイクからこれまでの道のり、そして父親になってからの変化や今後の抱負など話を聞いた。

近年は、劇場や営業という芸人の活動をメインに、俳優の仕事も増えてきているひょっこりはん。作品を重ねる中で俳優業のやりがいを感じているという。

「ひょっこりはんとして芸人をしているので、別のことが芸人としてはなかなかできませんが、役をもらえば全く別のことができるので、いつもとは違う一面が出せるのはすごくやりがいがあります。人が書いた台本で演じるというのも新鮮で、また違った面白さがあります」

自分とは違う人物を演じることで表現の幅が広がっていくことも期待している。

「ひょっこりはんではない人物になりきる中で、自分の中になかった動きや表情が出ていると思うので、そういうのが普段の芸にもきっと活きてくるのではないかなと感じています」

俳優業への意欲が高まっている中で、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』のオーディションの話を聞いて挑戦を決意。
見事ロン役をつかんだ。

「うれしかったですがドッキリだと思いました(笑)。正式に発表されるまでの期間も長かったですし、発表された時は安心しました。オーディションは審査員が全員外国人で、僕のことを知らない状態で受かったというのは自信になりました」

ロンを演じ切った時に、自分がどう成長しているか楽しみだと語る。

「まだ全然役者のこともよくわからず手探りでやっている状態なので、海外の演出家の指導も受けて役者としてレベルが上がっていたらいいなと。どうなっているのか自分でも楽しみです」

お笑いを軸に、今後も積極的に俳優業に挑戦していきたいと考えている。


「演技を見てくれた人がひょっこりはんの芸を見たら、普段はこんなことやっているんだという面白さがあると思いますし、逆に芸人で知ってくれている人は、お芝居でこんなことをするんだと思ってもらえる。2つの顔があるのが面白いと思うので、お笑いを軸に両方やっていきたいです」

俳優としての抱負を尋ねると、「みんなで面白いものを作り上げるコメディに楽しさを感じているので、もっとコメディの作品に呼んでもらえたらうれしいです。あとは、ひょっこりはんっぽくないキャラクターも演じられたら面白いなと。ヤクザとか静かなハッカーとか(笑)」と答えた。

ブレイク時と低迷期の苦悩を吐露「しんどかった」


2018年の元日に放送された日本テレビ系『おもしろ荘』をきっかけにブレイクを果たしたひょっこりはん。大忙しだった2018年を振り返ってもらうと、「しんどかったですね(笑)」と打ち明けた。

「準備ができないまま世に出た感じがありました。
ネタは一生懸命頑張っていましたが、テレビ露出が始まったら全く別の世界に飛び込んだ感じで、ネタだけでなくいろんな仕事が入ってきて。すべて100%、120%で取り組むメンタルと体力が整ってなかったので、余裕がなかったなと思います。助けてくれる人もいないと勝手に思っていて、バラエティに出ても自分でどうにかしなきゃいけないというマインドがあって息苦しかったです」

ひょっこりはんというキャラクターがしっかりしているからこそ、バラエティでの振る舞いに悩むこともあったと明かす。

「スタジオでも端からひょっこりしたり、キャラが強い分、キャラを前面に押し出さないといけなかったので、平場でのコミュニケーションで笑いが生まれるというのがあまりなくて。だから孤独をずっと感じていました」

2019年、2020年と仕事の忙しさが落ち着いた低迷期も精神的につらかったという。

「何をやってもうまくいかないなと。
SNSのコメントで『お前もう終わってんねん』と言われたり、しんどい時期がありました」

○観客の反応が支えに これからも“ひょっこり芸”を貫く

もがきながら、次第に「目の前の人や仕事を大事にしよう」と気持ちを切り替えたことで乗り越えていったという。

「今オファーしてくれている人や目の前で見てくれている人たちに対して誠実に向き合って100%、120%出し切るという風に切り替えたことで、気持ち的に吹っ切ることができ、精神的にだいぶ強くなったなと思います」

しんどい時期が続くも、芸人を辞めようという思いを抱いたことはないそうで、劇場や営業で笑ってくれる観客の反応が支えになっていると語る。

「SNSでいろいろ言われても、舞台に立ってお客さんを見るとだいたいの人がにこにこ笑ってくれている。そういう姿を見るとやりがいを感じますし、自分の気持ちも落ち着いて、目の前の人を大事にしようという風に切り替えられたなと思います」

“ひょっこり芸”から離れるという考えもなく、これからも貫いていくつもりだ。

「もともとひょっこりはんになったのも、自分がこの世界で輝ける形を探した結果で、この顔を生かそうと思って生まれたものなので、これを変えるという考えはなく、さらに成長させて、ひょっこりはんでできることを探していくというのがいいと思っています」

ジョイマンとにかく明るい安村ら、一発屋と言われていた芸人たちが続々と再ブレイクしている姿を見ても、自分のネタを貫いていく大切さを感じているという。

「ジョイマンさんのダジャレもキャッチーで面白いので再ブレイクするのは当然だなと思います。
同じことをしていても人の意識は時期によって変わると思うので、しっかりした芸を持っていたらまた面白がってもらえるタイミングが来るんだろうなと。そして、ジョイマンさんも落ちることなく貫いてきて、そういった誠実さも全部魅力に。自分も貫いていくつもりなので、正解はわかりませんが、正解にするしかないという気持ちです」

2児のパパとしても奮闘中「ひょっこりすると泣き止む」


プライベートでは、2019年10月に一般女性の“ひょっこりちゃん”との結婚を発表し、2020年8月に第1子となる男児、2022年9月に第2子となる女児の誕生を報告。2児のパパとして子育てにも奮闘中だが、子供をあやす際に“ひょっこり芸”も使っているという。

「やると泣き止みますよ! 子供ってできることが限られていて、ひょっこりは子供でも真似しやすいし楽しいから、キャッキャ言いながらいろんなところからひょっこりしています。自分の芸で笑ってくれるのはうれしいですね。子育てしている方から『ひょっこりはんって言うと子供が泣き止むので助かってます』というコメントをもらうこともあります」

父親になり、子供たちに向けてネタを披露したいという思いは増したという。


「幼稚園児にはこういう働きかけをしたらいいんだとか、子供ってこういうものなんだということがわかってきて、それは芸人としてもプラスになるんじゃないかなと。ただネタを披露するのではなく、もっと子供たちに歩み寄って接していけたらなと思っています」

また、芸人としてしんどい時期も家族の存在に助けられたと感謝している。

「仕事のことを考えていても、子供がうんちをしたら半強制的に中断しないといけないですし、子供と遊ぶときは目の前の子供としっかり向き合って遊び、それが終わったら仕事をするというメリハリができて、メンタル的にも助けられている気がします」

父親になって生活のリズムも整ったという。

「仕事がない日は朝8時とか9時に子供を保育園に送りに行っていて、それまでに絶対起きないといけないので、生活リズムを整うんです。グダグダ悩んで朝3時とか4時まで起きて寝不足になることも以前はありましたが、子供がいることで夜ちゃんと寝るというリズムが作られました」

そして、父親になってから、「子供に恥ずかしくない生き方をしなきゃいけない」と、より気が引き締まったと語る。

「子供にとって転機になるようなタイミングが来ると思いますが、そういう時にしっかり背中を見せて、子供にプラスになるような働けかけができるように。そのためにしっかりしなきゃいけないなという気持ちがあります」

パパがひょっこりはんだということは子供たちもわかっているそうで、「自分の本も家にあって、それを見て『パパ! パパ!』と認識していますし、テレビに出ていると反応します」とのこと。「子供も楽しめる芸風だから、これがパパのお仕事だよと言いやすかったのかもしれません」と話した。

子供向け企画を計画中 海外オーディションにも意欲


4月28日に37歳の誕生日を迎えたひょっこりはん。今後、芸人としては“ひょっこり芸”を生かした新たな挑戦を考えており、子供たちと触れ合う企画を計画中だという。

「営業とかに行くと、5、6歳の小さい子供も『ひょっこりはん』と言ってくれるんです。2018年の時には生まれてなかった子も楽しんでくれているので、子供も好きですし、そういう子たちに向けてやりたいなと。今、保育園を巡る企画ができないかマネージャーさんも動いてくれていて、そういったことができたらいいなと思っています」

また、海外への挑戦も見据えている。

「言葉がいらず海外の人にも通じる芸だと思っているので、海外に向けてもやっていきたいなと。外国人に向けてネタをするというライブにもよく出させてもらっていて、英語を使ったネタをやっているので、そこで揉んで、海外でライブをしたり、『ゴット・タレント』などのオーディションにも挑戦したいなと考えています」

海外の人にも笑ってもらえるように今ネタを調整している段階で、そこがクリアできたらオーディションに挑戦する予定だという。

「“ひょっこりはん”って日本語として絶妙だと思っていて、ひょっこりはんだから顔を出すというのが説明しなくても伝わりますが、海外だと“ひょっこり”と言ってもわからない。海外に向けて今ネタを調整していて、そこがクリアできたら挑戦したいなと。最近わかりやすくひょっこりを連発したり、音を変えてみたら反応が変わってきていて、ライブを見た外国人の方から『素晴らしかった』というコメントも届いてうれしかったです」

苦しい時期を乗り越え、しっかりと前を向いているひょっこりはん。「しんどい時期もありましたが、ここ1、2年で吹っ切れて、精神的に整ってきた感じがあります。人としても芸人としても成長できている気はするので、これからも目の前のお仕事や目の前のお客さんを大切に。そこと向き合うことで自分を取り戻すことができたので、これからも直接笑いを届けられる場を軸に頑張っていけたらと思います」と笑顔で語ってくれた。

■ひょっこりはん
1987年4月28日生まれ、滋賀県出身。早稲田大学卒業後、2012年に18期生としてNSC東京校に入校。お笑いコンビ・ダイキリとして活動していたが2016年に解散し、同年よりピン芸人として活動を開始。2018年元日に放送された『おもしろ荘』(日本テレビ)をきっかけにブレイク。「Yahoo!検索大賞2018」のお笑い部門賞を受賞し、「『現代用語の基礎知識』選 2018ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされた。近年は俳優としてドラマや舞台にも出演しており、7月から舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でロン・ウィーズリー役を務める。