病に苦しむ人を苦痛から解放する“安楽死”。
2019年に難病ALSを患う林優里さんが薬物を投与され亡くなった「京都ALS嘱託殺人事件」。林さんはスイスでの安楽死を望んでいたが、病が進行して渡航が果たせなかった。死に関わった2人の医師は嘱託殺人などの罪に問われ、現在も裁判が続いている。
東京に暮らす良子さん(60代)もまた、パーキンソン病で苦しみ続け安楽死を望んでいた。「十分に人生を楽しんだ。早く痛みから解放されたい」と迷いなくスイスへの準備を進めていた良子さんと、ある日を境に連絡が取れなくなる。届いたのは1通の手紙、消印はスイスだった。
「自殺幇助」による安楽死が認められているスイスで、夫や息子、孫に見守られシャンパンと好きな音楽と共に末期がんの80代スイス人女性が安楽死を遂げた。自身の尊厳を守るためというその最期の時間はどのようなものだったのか。
“命の決断”をしたマユミさん(44)は、関西で夫と2人の娘、4人暮らし。
難病に苦しむ矢島さん(仮名・40代)は“なぜ安楽死を希望するのか”をスイスへの書類に黙々とつづり、投函してポストに「よろしく」と語りかける。オランダ人のパートナーとは安楽死の話を機に疎遠になっていた。しかし“安楽死をする権利”が手に入ると、「死ねると思えるだけで安心して生きられる」と、明らかに晴れやかな表情に。矢島さんは、病気と闘い前向きに生きる決意を新たにしていた。
安楽死が認められていない日本で、この問題にどう向き合っていけばいいのか。“死”に救いを求める人々、そして家族の葛藤を、余貴美子のナレーションでつづる。