●シンパイ役を演じるも自身の頭の中はヨロコビが多い
ドラマや映画、舞台など、さまざまな作品で活躍している多部未華子。ディズニー&ピクサー最新作『インサイド・ヘッド2』(8月1日公開)では重要な新キャラクター・シンパイの声を演じた。
さまざまな感情をキャラクターにして人の頭の中に広がる“感情たち”の世界を描く本作に参加した多部にインタビューし、自身の感情について、また今の役者業への思いや今後の抱負を聞いた。

本作の主人公は、思春期を迎え、高校入学という人生の大きな転機を迎えた少女・ライリー。そんな彼女を子供の頃から頭の中で見守ってきたヨロコビ、カナシミ、ムカムカ、ビビリ、イカリの5つの感情たちの前に、新たにシンパイ、イイナー、ダリィ、ハズカシという4つの“大人の感情”が現れ、感情のが巻き起こる。

“大人の感情”たちのリーダー的存在で、最悪の将来を想像してあたふたと必要以上に準備してしまうシンパイ役を務め、ディズニー&ピクサー作品の声優に初挑戦した多部。もともととディズニー&ピクサー作品が大好きで、前作『インサイド・ヘッド』も映画館で見たという多部は、本作参加を「とてもうれしかった」と喜んでいる。

アフレコではクセのある声を意識して演じたという。

「オリジナルの英語版のシンパイの声がハスキーボイスで、日本語版もクセのある特徴のある声がいいとのことだったので、自分ができる範囲のクセのある声ってどんな感じかなと思いながら試行錯誤して作っていきました」

性格を形作るのに大切な頭の中の感情たち。多部は自身の性格について「飽きやすくて、せっかちで、好奇心が強い」と捉えている。

また、本作に登場する感情たちの中で、多部の頭はヨロコビが多くを占めていると言い、「最近は特に楽しくハッピーに生きています」と喜びを感じる瞬間が増えているという。

「目まぐるしい日々であっという間に1日が終わりますが、楽しかったなと思うことのほうが多いです。お仕事しているときも楽しいですし、子供と1日過ごしている時も大変だけど楽しいですし、どっちも楽しめている感じが、自分の飽きやすい性格にはすごく合っているのだと思います」

主人公のライリーは、成長する中でいろいろな感情が芽生えていくが、多部は年齢を重ねて気持ちの変化をどのように感じているのだろうか。

「基本的な性格はあまり変わっていないと思いますが、年齢を重ねるにつれて開き直れるようにもなりましたし、図々しくもなりましたし、諦めも早くなりました。
何があったからというわけではないですが、いろんな経験をしてきて、ライリーのように感情が増えたのだと思います」
○子育てとの両立で仕事のありがたさをより実感「本当に貴重な時間」

2002年に女優デビューしてから22年活動を続けている多部。今の仕事に対する思いを尋ねると、「今は育児と仕事をバランスよくやろうと心に決めていて、うまくバランスをとれるように頑張っている最中です」と答えた。

「昔はずっと働いていましたが、今はそういうわけにもいかないので、仕事をしている時間が本当に貴重な時間だと思うようになって、よりありがたさを知ったというか、より楽しもうと思うようにもなりました。昔より疲れたなと思うこともありますが、それすらも貴重に感じて。物理的に時間が限られてきて、考え方が変わった気がします」

母親になったことは俳優業にもプラスになっていると感じているそうで、「人生経験が役者の表現につながる部分があると思うので、家族ができたことだけでなく、プライベートで起こったいろんな出来事や感情すべてが生かせる仕事だなと思います」と語った。

これまでの大きな転機を尋ねると、「節目の時に何かしようと思う性格なんです」と言い、「20歳の時に一人暮らしを始めて、30歳の時に結婚したいと思い、40歳で何を思うんだろうと今思いました(笑)。何か思いそうですよね。一軒家を建てるとかかな? 全くわからないですけど、何かあると思います」と笑顔を見せる。

30代になって芽生えた自立願望 社会の仕組みを勉強中


また、自立して生きていきたいという思いが30代になって芽生えたと語る。

「私は本当に甘えて生きてきて、困ったことがあっても『お願い!』と言えば誰かがやってくれるという環境にいて、それも1つの生きる術だと思いますが、自分で地に足をつけることも大事だと30代で知りました。35歳にして何も知らない自分に焦りを感じたのだと思います。30代は人生においての学びの10年間だと思っているので、10年スパンでいろんなことを学んでいけたら」

具体的にどんなことを学びたいのか尋ねると、「社会の仕組み」全般だと回答。


「生きるために必要な国のルールみたいなことを何も知らずに生きてきてしまって。今も人に任せていることもありますが、理解した上で人に任せるのと、理解せずに人に任せるのは違うなと、身に染みて感じています。いろいろなことを学んでいくと自分の愚かさにどんどん気づいていき、知らない自分がいけなかったんだということが日々起こっています」

そして、「今は本当に学びの日々です」と続け、今年学んだことを尋ねると、「いっぱいあります。パソコンも苦手で、Excelの使い方やファイルの見方や、サーバーがどうとか、いろんなことを学んでいる最中です」と語った。

今の目標は「地に足をつける」こと。「これまで全部人任せだったので、責任感を持ってやっていけたら。でもベースは楽しんで、自分がやりたいと思ったことをやりたいと言えるような人生にしていきたい」と抱負を述べる。

役者としても「やりたいと思ったことを声に出してやりたいと言えるようにしたい」と、自身の好奇心を大切に。また、観客や視聴者の声もやりがいにつながっているようで、「『楽しかったです』と言ってくださると単純にうれしい気持ちになるので、観てくださる方から感想がもらえる作品に携わっていきたいです」と語った。

『インサイド・ヘッド2』も「ぜひやりたい」と思った仕事であり、日本に先駆け全米はじめ世界各国で公開されると、これまで1位だった『アナと雪の女王2』を超えてアニメーション映画史上世界No.1の世界興行収入を記録し、大きな反響を呼ぶ作品となっている。

多部は「携われて幸せです」としみじみ。「この作品が伝えたいことは、全人類に届けられるメッセージだと思います。
どの感情の自分も自分で、自分らしくいても悪いことではないと思わせてくれる。心配しすぎていても、悲しんでいても、全部の感情が必要で、全部自分の成長につながると思わせてくれる作品だと思います」と作品の魅力を熱く語り、「そんな作品に参加できて本当によかったです」と語っていた。

■多部未華子
1989年1月25日、東京都生まれ。2002年に女優デビュー。2005年公開の映画『HINOKIO』『青空のゆくえ』でブルーリボン賞新人賞を受賞。2009年にはNHK連続テレビ小説『つばさ』のヒロインを務め、2010年には『農業少女』で読売演劇大賞女優賞・杉村春子賞、エランドール賞新人賞などを受賞。近年の主な出演作に、ドラマ『私の家政夫ナギサさん』(20)、『マイファミリー』(22)、『いちばんすきな花』(23)、映画『空に住む』(20)、『流浪の月』(22)、NODA・MAP 第26回公演『兎、波を走る』(23)などがある。
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