エア・ウォーターは5月9日、タイムズ24が運営する大阪市中央区の「タイムズ南本町第一駐車場」に、両面受光が可能な垂直ソーラー発電システム「VERPA」を導入し、同日より実用運転を開始したと発表した。商業ビルが立ち並ぶ都心部において、両面受光型の垂直太陽光発電設備の導入は国内初。
○システムの概要
VERPAは、ドイツのNext2Sun社と共同開発された垂直型太陽光発電システム。幅30cmのスペースがあれば設置可能で、パネルは地表から2m以上の高さに設置されるため、下部空間を駐車場や通路、緑地などとして有効活用できる。
また、パネルの表裏で発電性能にほとんど差のない高性能な両面受光型太陽光パネルを採用しており、受光面を南に向ける必要がない。屋根設置型の従来製品と比べても、年間発電量に大きな差はないという。
VERPAがタイムズ南本町第一駐車場に導入された背景として、昨今の環境意識の高まりを受け、自治体で再生可能エネルギーの活用が進み、庁舎に付帯する駐車場などにも再エネ導入が求められるようになってきたことが挙げられる。
タイムズ24では、こうした社会的要請に応える体制を整備し、駐車場内で発電した再生可能エネルギーを活用するモデルケースの構築を目指している。VERPAは精算機や監視カメラといった駐車場設備に接続され、日照条件が限られる環境でも効率的に発電できる自家発電設備として運用される。
○これまでの課題
2050年のカーボンニュートラル実現には太陽光発電の拡大が不可欠だが、都心部では適地の不足や反射光対策といった課題があった。
VERPAに搭載された両面受光型パネルは、2枚の強化ガラスの間に発電シートを挟む構造で、発電に寄与しない光をそのまま透過させる。さらに、防眩効果と汚れ付着防止を目的にガラス表面に微細な凹凸(エンボス加工)を施しており、周囲のビル窓よりも反射光が少なく、反射によるトラブルのリスクを大幅に低減している。
加えて、周囲の建物からの反射光や散乱光も活用できるため、直射日光が限られる都心の駐車場のような環境でも安定した発電が可能だ。エア・ウォーターは、こうした都市部での発電データを収集・活用し、電力需要が集中する地域における再生可能エネルギーの地産地消モデルの実現を積極的に支援していく方針だ。