第74期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は、伊藤匠王座への挑戦権を争う挑戦者決定トーナメントがスタート。5月12日(火)には1回戦の藤井聡太竜王・名人―斎藤明日斗六段戦が東京・将棋会館で行われました。
対局の結果、力戦調の横歩取りから抜け出した藤井竜王・名人が83手で勝利。快勝といえる内容で2回戦進出を決めています。
○リターンマッチ目指して

挑戦には4連勝が必要な本トーナメント。藤井竜王・名人はフルセットのすえ失冠となった昨年のリベンジを目指します。振り駒が行われた本局は後手となった斎藤六段が横歩取りへと誘導、飛車先の歩交換を保留したまま角交換に踏み切ったのが用意と思われる作戦でした。対する先手の藤井竜王・名人も強気の飛車交換で応じて、盤上は早くも乱戦の様相に。

ともに大駒を持ち合って手探りの中盤戦が続きます。形勢は互角ながら、飛車を犠牲に角を手に入れた藤井竜王・名人の立ち回りに注目が集まっています。自陣への打ち込みをケアしながら手持ちの角を活用するのは大変に思われましたが、自陣に馬を引き付けておいて相手の攻め駒を取りにいったのが丁寧な受け。五段目に跳ね出した後手の桂を取り切って、駒得を主張しつつ自陣の憂いを消す盤石の構えです。

○絶妙の見切りで快勝

その後も大駒の飛び交う派手な展開が続いて終盤戦へ。後手が竜を切り飛ばして一間竜で迫ったのはシャープな攻めで知られる斎藤六段らしい手順でしたが、藤井竜王・名人の読みはその一歩先を行っていました。
ジッと歩を突いて玉の逃げ道を広げたのが味よい一手で、駒損の後手からそれ以上迫る手がないのを見切っています。形勢はハッキリ先手優勢へと傾きました。

終局時刻は21時ちょうど、藤井竜王・名人が満を持して反撃を開始したところで斎藤六段が投了。終局図で先手には豊富な持ち駒と攻防の自陣馬が控えており、逆転は難しい情勢でした。一局を振り返ると、相手の注文に乗って存分に攻めさせつつも、馬を主軸とした手厚い受けでペースをつかんだ藤井竜王・名人の懐深い指し回しが光る快勝譜となりました。

敗れた斎藤六段は局後SNSを更新し「今後、藤井竜王名人と熱い勝負ができるように頑張ります」とリベンジを誓いました。

水留啓(将棋情報局)
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