マクドネルをあっという間に打ちのめした井上。その強さや才能は当時から際立っていた。

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 日本だけでなく世界的に見ても、特筆すべきビッグマッチのゴングが近づいてきた。5月6日、ボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(大橋)と、元世界2階級制覇王者であるルイス・ネリ(メキシコ)が東京ドームで激突する。

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 34年ぶりにボクシングの世界戦が東京ドームという檜舞台で実現する。この決戦の凄みは、ボクシングの生き字引であり、米興行大手『Top Rank』のCEOでもあるボブ・アラム氏が「世界が注目している」と高揚感を口にするほどだ。

 文字通り世界的な関心を集めるネリとのビッグマッチに臨む井上。無論、ボクシングの世界に絶対はなく、番狂わせの可能性もゼロではないわけだが、現時点で最盛期にある“怪物”の勝利は揺るぎないものになっている。

 とりわけ、その才能を間近で目の当たりにした関係者は口を揃えて、「井上の勝利」を確信する。2018年11月に井上と対峙した当時のWBA世界バンタム級王者だったジェイミー・マクドネル(英国)のトレーナーを務めているデイブ・コールドウェル氏は、米ボクシング専門サイト『Boxing Scene』で、「イノウエは私たちが戦ったときよりも進歩している」と訴える。

「ジェイミーとの試合以降で、彼が戦ってきたファイターたちを見てみると、誰もが傑出していて、とんでもないファイターばかりだ。そうした戦いを経て、イノウエはパウンド・フォー・パウンダーに成長したんだ。彼は日本からやってきた怪物だったんだ」

 コールドウェル氏が、そう語るのも無理はない。当時、10年間無敗の“絶対王者”に君臨し、身長差で10cm、リーチ差で12cm上回っていたマクドネルに井上は初回から猛ラッシュを展開。

そのままリングに沈めたのだ。

 手塩に掛けてきた“最強”の愛弟子が、わずか1ラウンドで打ちのめされる。衝撃的な現実を突きつけられた一戦を「間違いなく怪物を見た」とも回顧するコールドウェル氏は、「もう今のイノウエに弱点は存在しない。パワー、ボクシングIQ、そして技術に加え、彼はタフで、本当にとんでもないやつだ」と強調。そして、ネリ戦での勝利を結論づけるように、こう論じている。

「信じられないようなメンタリティ、能力、IQ、タフネス、パンチの力、そしてショットの的確に打ち出す判断力……全てが備わっているんだ。

そして無闇に体重を上げて、新しい階級で自分の道を見つけるような無駄な試合はしない。とにかく自分自身にとってベストな相手と真っ向勝負を挑む。それが彼の自信と能力の高さを物語っている。今の階級にステップアップしてすぐにスティーブン・フルトンと戦う姿を見て、私は『すげぇな、こいつ』と心底、思わされた。イノウエは非現実的な存在だよ」

 かつてのライバルに「弱点がない」とまで言わしめる井上。そうした声は、彼の異能さを十分に物語っていると言えよう。

やはり「怪物」は異次元だ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]