井上との攻防戦に敗れたネリ。それでも初回に見せた一撃は列島を興奮させた。

(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext

 エポックメーキングな番狂わせを瞬間的に想起させたルイス・ネリ(メキシコ)。無敵の怪物に立ち向かった29歳が、その胸中を改めて打ち明けた。

 5月6日、東京ドームでボクシングの世界スーパーバンタム級(4団体タイトルマッチ)は、統一王者の井上尚弥(大橋)がWBC1位の指名挑戦者ルイス・ネリ(メキシコ)に6回1分22秒TKO勝ちを収めた。

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 1990年に無敵のヘビー級王者マイク・タイソンが、無印だったジェームズ・ダグラスにKO負けを喫した一大決戦以来、34年ぶりに東京ドームで実現したボクシングの興行。その歴史的な舞台で勝者にはなれなかったが、ネリの一撃は世界に衝撃を与えたのは間違いない。

 初回、近接戦で井上の左アッパーをかわしたネリは、その刹那にがら空きとなった相手の顎に左フックを炸裂。

“モンスター”からプロ初ダウンをもぎ取ったのである。

 そこから盛り返され、計3度のダウン。6回に渾身の右ストレートをもろに受け、TKOで敗れたネリは、試合後に大事を取って病院へ直行。試合後の通例となっている会見にも出席せずに会場を後にしていた。

 日本で初黒星を喫した。そんな29歳のメキシカンは、7日未明に母国メディア『Azteca TV』のインタビューに回答。

「俺はイノウエの術中にハマってしまったんだ」と、全世界の注目を集めた激闘を振り返っている。

「この負けは俺のミスでもある。オープンになった第1ラウンドで追い打ちをかけられなかったから、イノウエのペースになってしまった。ただ、彼が勝ったことは紛れもない事実だし、よく倒したと思う。それに対する不満や言い訳を言うつもりはない」

 さらに「フルトンのように、ただ勝利をプレゼントするために遊びに来たわけじゃなかった。最高のパウンド・フォー・パウンダーでもあるチャンピオンを一度でも倒せたんだ。

負けたけど、今は落ち着いて、幸せな気分だ」と前向きに語ったネリは、こうも続けている。

「悪い気はしてないし、落ち着いている。とにかく気分は良い。もちろん、チャンピオンになって帰りたかった。でもそれは叶わなかったわけだから、これからもその道を探し続けるつもりだ。とにかく俺は本当に日本で恐怖の存在になれたと思っている。

俺は日本で2度も勝った唯一のメキシコ人であり、これまでに誰も倒したことのない相手からダウンを奪ったんだ。それを俺は刻んだからね」

 井上との再戦について「もちろんチャンスが与えられるならいつでもやる」と豪語するネリは、「ディフェンスを改善して、いつでも日本に戻ってくる。俺は素晴らしいことをやったんだ」と続けた。

 今後については、東京ドーム決戦後に自身のXで「アディオス、122。126」とフェザー級への転級を示唆しているネリ。もしも、井上との再戦があるとすれば、新たな階級で行なう可能性が高いと言えそうだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]