ネリ戦後にリングに立ち。井上の「対戦宣言」に応じたグッドマン。

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 井上尚弥(大橋)の快進撃を食い止められるのか――。5月6日、一人のオーストリア人に列島の視線は注がれた。IBF&WBOスーパーバンタム級1位のサム・グッドマンである。

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 東京ドームで34年ぶりに実現したボクシングの一大決戦で井上は、あらためて「最強」であることを証明した。対峙したルイス・ネリ(メキシコ)に対して初回にプロ初のダウンを喫したが、その後は主導権を掌握。終わってみれば、3度のダウンを奪う完勝劇で声価を高めた。

 そんな試合後にリング上に招き入れられたのが、グッドマンだった。井上から「次戦は9月ごろ、隣にいるグッドマンと防衛戦の交渉をしていきたいと思います」と宣言された25歳は、「自分もベルトが欲しくて、ここまで戦ってきた。やろう」と呼応した。

 日進月歩で歩みを進めてきた。プロキャリア18戦無敗(8KO)の戦績を残すグッドマンは、TJ・ドヘニー(アイルランド)やライース・アリーム(米国)といった実力派から次々に勝利。スピーディーな左ジャブを中心に戦術を構成するバランス型のファイターではあるが、一発で相手を沈めるタイプではない。

ゆえにネリほどの怖さはなく、井上が倒されるイメージも想像しにくさがある。

 ただ、以前から井上戦についてグッドマンは、「戦いたいのは当然じゃないか。俺に『お前には倒せない』と批判する批評家たちに『くそったれ』と言って、見せつけてやりたい」と豪語してきた。その意気込みは今回も不変だ。

 東京ドーム決戦後に母国のスポーツ専門局『FOX Sports』の取材に応じた若武者は、「試合は十分に見た。イノウエに勝つために何をすべきかも分かった」と断言。

そして「ベストを尽くさなければいけないが、それさえできれば、この男に勝てると信じている。このネリ戦では俺がイノウエを追い込める収穫があったし、彼(井上)も人間だ。誰にだって勝てる可能性はある」と続けた。

 今回の東京ドームでの興行で10億円を超えるファイトマネーを手にしたとされる井上。その莫大な影響力には、グッドマンの陣営も期待を寄せる。プロモートを行う『No Limit Boxing』のジョージ・ローズ氏は「今は日付の調整をしている段階だ」と明かし、「彼(グッドマン)のキャリアの中で最大の給料を得る日になる」と声高に話している。

「歴史的に見て、軽量級の選手たちは高額な報酬を得ることができなかった。だが、イノウエとの試合は7桁規模になる。実現できれば、オーストラリアのスポーツ界にとっても最大級のクーデターとなるだろう。イノウエは一世一代のファイターなんだ」

 関係者の証言からしてディディールを詰める段階にある一戦。グッドマン陣営はオーストラリア開催の可能性もほのめかしているが、果たしてどうなるか。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]