敵なしの強さを誇る井上に挑戦状を叩きつけたグッドマン。しかし、彼のチャレンジには懐疑論も寄せられている。

(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext、(C)Getty Images

 井上尚弥(大橋)のエポックメーキングなパフォーマンスに対する反響が続いている。

 5月6日、ボクシング世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上は、東京ドームで行われた同級4団体タイトルマッチで、WBC同級1位の挑戦者ルイス・ネリ(メキシコ)を6回1分22秒TKOで撃破。2年ぶりとなる防衛も成功した。

【動画】悪童ネリに逆襲の右ストレート!井上尚弥がドームを熱狂させた貫禄のTKOの瞬間

 まさに衝撃的な一戦だった。井上は初回に近接戦の局面で、死角から飛んできた左フックを被弾。プロ初ダウンを喫する。

だが、騒然とするドームの4万3000人とは裏腹に、「冷静に立て直すことが出来た」だったと王者は冷静だった。

 2回、5とカウンターで放った鮮烈な左フックでダウンを奪うと、6回にはネリをロープ際に追い詰め、左ジャブ、右アッパーの素早いコンビネーションから右ストレートを一閃。挑発的な言動を繰り返してきた29歳のメキシカンの顔面を打ち抜き、キャンバスに沈めた。

 試合後、井上は大橋秀行会長に歩み寄り、リングサイドに構えていたIBF&WBOスーパーバンタム級1位のサム・グッドマン(豪州)をリング内に招き入れる。そして、「次戦は9月ごろ、隣にいるグッドマンと防衛戦の交渉をしていきたいと思います」と堂々と宣言した。

 以前から「俺のキャリアだけじゃなくて、人生を一変させるカード」と井上との対戦願望を公言してきたグッドマンは、王者の宣言にすぐさま呼応。

「自分もベルトが欲しくて、ここまで戦ってきた。やってやる」とリング上で言い返した。

 そんなグッドマンの壮大な挑戦には、母国内で懐疑的な声も上がっている。豪州のレジェンドボクサーで、元世界4階級制覇王者のジェフ・フェネック氏は、地元放送局『Nine Network』の番組「Wide World of Sports」で「サムは素晴らしい有望株だが、もし、彼がイノウエに勝てると思っているなら聞いてくれ。負けたらそこから立ち直らなければならないが、同じようにはいかないぞ」と手厳しい意見を投げかけている。

 さらに「何をしているかが分からない。

自殺行為だ」と辛辣な持論を展開するフェネック氏は、こうも続けてみせる。

「私はイノウエがタイトルを獲得した時に、彼と対戦したメキシコ人をトレーニングしていたから彼の実力がどれほど優れているのかをよく知っている。確かに自信を持つのは素晴らしいことだが、トレーナー、そしてマネージャーとして私が言うとすれば、『これは今、我々が辿るべき道ではない。待とう』ということだ。

 この先に世界チャンピオンになるつもりなら、今はやめるべきだ。ノックアウトされるよ。

まぁでも、やるなら幸運を祈るよ。もしかしたら彼らにとっての幸運はファイトマネーだけなのかもしれないけどね」

 早くも否定的な意見を頂戴したグッドマン。もっとも、周囲の反発は「『お前には倒せない』と批判する批評家たちに『くそったれ』と言って、見せつけてやりたい」と言う本人も承知の上だろう。

 開催地や時期などの詳細は依然として交渉中ではある。ただ、両陣営が直接向かい合い、交渉を公にしたことを考えても、合意は間近と見ていい。無敗伝説を作り続ける井上という“怪物”に、25歳の若武者がどう挑むかは興味深いところだ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]