ロハス(左)は、佐々木(右)に愛着の合った背番号を譲り、小さくない話題を生んだ。(C)Getty Images

 異例の対応の舞台裏では、ベテランがクビを覚悟していた。

 今オフに小さくない話題を呼んだのは、ドジャースのミゲル・ロハスによる“ルーキー”への配慮。メジャー13年目のベテラン戦士は、新たにチームに加わった佐々木朗希に対して11番を譲渡。自身は新人時代に付けていた72番に変更した。

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 ロハス本人に言わせれば、「些細な出来事」だった。だが、メジャーでプレー歴のないルーキーに、キャリアのあるベテランが背番号を譲るのは異例。近年は緩和傾向にあるが、上下関係が明確にあるとされる米球界では、まさに驚きの出来事であった。

 もっとも、背番号譲渡を持ち掛けたのは球団だった。米ポッドキャスト番組『The Chris Rose Rotation』に出演したロハスは、ドジャースのアンドリュー・フリードマン編成本部長から「何かを話そう」とだけ記されたメッセージを授受。これに「おもわず漏らしそうになった。咄嗟に、解雇されるか、トレードされるのかと思った」という。

 直後に返信をしたものの、球団の補強を取り仕切る幹部からは2時間以上も返答はなし。相当な覚悟を決めたロハスには「最悪のシナリオが頭に浮かんだ」。

 それでも最終的にフリードマン編成本部長から持ち掛けられたのは、佐々木への背番号譲渡。「彼に譲ってあげてほしいんだ。彼が欲しがっている番号らしくて」と説明を受けた35歳は、ホッとすると同時に「なんの問題ないよ」と快く返答した。

「チームがどんどん良くなっていくのならそれが良いよ。ササキとの契約をする上で、僕がそうすることで、彼の決断が少しでも楽になるならそれでいい。できれば、僕が彼が引退する前に11番を付けた最後の選手になれたらいいね」

 電撃的な解雇を覚悟もした中で、佐々木の要求に快く応じたロハス。「令和の怪物」のドジャース移籍は、一人のベテランの決断によって生まれたものだとも言えるのかもしれない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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