北京冬季オリンピックで熱戦が繰り広げられる中、常夏の国ジャマイカのボブスレーチームが奮闘する、実話を基にした映画『クール・ランニング』が今夜金曜ロードショーに登場。一度見たら忘れられない胸アツのスポーツコメディだが、公開はなんと今から30年近く前の1993年。

そこで、懸命にボブスレーを走らせた彼らの今をチェックしてみよう。

【写真】『クール・ランニング』キャストたち、昔と今を写真で見る

 1988年のカルガリー冬季オリンピックに初出場を果たした、ジャマイカのボブスレーチームの実話を基に、ディズニーで映画化された本作。不運なアクシデントで陸上競技のオリンピック代表に選ばれなかった主人公が、凸凹メンバーを集めてにわかチームを結成し、未知の世界に挑戦するというハートウォーミングなコメディだ。道具もお金も知識もなく、雪を見たことすらないチームが、持ち前の身体能力と情熱、度胸だけを武器に、並み居る世界のツワモノたちに挑む姿は、なんとなく身の回りの世界が狭くなっている今こそ、観たい一本。

★デリース・バノック役/レオン

 父もオリンピックの陸上選手で、候補入りを確実視されていたのに、隣の走者の転倒に巻き込まれたせいで予選敗退。なんとしてもオリンピックに出場しようと、見たこともないボブスレーに挑戦する主人公デリースを演じたのは、意外にもアメリカ出身の俳優レオン。
当時から『トム・クルーズ/栄光の彼方に』や『カラーズ 天使の消えた街』など、テレビや映画で活躍しており、バンド「Leon and the Peoples」のフロントマンの顔も。涙を流すセクシーな聖像役で、マドンナの楽曲「Like a Prayer」のMVにも出演している。

 本作の翌年には、2パックと共演したスポーツ映画『ビート・オブ・ダンク』に出演。また、歌唱力を生かして音楽系の映画やドラマで評価を獲得した。現在までに数多くの作品に出演しており、日本でも、ケヴィン・ベーコン主演のドラマシリーズ『CITY ON A HILL/罪におぼれた街』で近影を見ることが出来る。

★サンカ・コフィ役/ダグ・E・ダグ

 主人公デリースの親友で、「手押し車レース」チャンピオンのお調子者、サンカを演じたのは、ニューヨーク・ブルックリン生まれのダグ・E・ダグ。
17歳の頃からスタンダップコメディアンとして活躍し、俳優としては、『モ‘・ベター・ブルース』(1990)や『ジャングル・フィーバー』(1991)など、スパイク・リーの作品に出演。

 本作のコミカルな演技が製作のディズニーに認められ、続けて『ダンボドロップ大作戦』(1995)にも出演。また、彼の半生を元にしたシットコム『Where I Live(原題)』(1993)が放送されるなど、1990年代にブレイクした。その後はコンスタントに俳優業を続ける傍ら、コメディアンとしての活動も続け、近年は作家としても活躍中だ。

★ジュニア役/ロール・D・ルイス

 陸上のオリンピック選考レースで派手に転び、周囲の人生を狂わせた張本人で、実はお金持ちのお坊ちゃま、ジュニア。彼を演じたロール・D・ルイスは、映画もビックリの経歴の持ち主。
本作には当初、カリブ風アクセントを指導するスタッフとして参加したが、台本を読む際の演技力が製作陣の目を引き、ジュニアの役をゲットした。トリニダード・トバゴ出身の彼は、当時、母国で映画に出演していたと経歴を詐称して採用されたというエピソードを、映画公開から20年後のインタビューでけろっと明かしている。

 本作以降は出演ドラマの打ち切りが続いたが、そこでもバイタリティを発揮して、コメディアンにキャリアをチェンジ。世界中をツアーで回ったそう。現在も演技の仕事も続けており、昨年はNetflixの『ナルコス:メキシコ編』にゲスト出演を果たしている。

★ユル・ブレナー役/マリク・ヨバ

 ジュニアのせいで涙をのんだ(怒り狂った)一人で、ボブスレーチーム最後のメンバーとなったユル。
強く大きな怒れる男を演じたのは、本作で映画デビューを果たしたマリク・ヨバだ。

 本作で脚光を浴びた彼は、公開翌年にテレビドラマ『New York Undercover(原題)』に抜てきされ、5年にわたって主役を務めた。以降順調にキャリアを築き、『Empire 成功の代償』や『サバイバー:宿命の大統領』など、日本でもおなじみのドラマシリーズにレギュラー出演。キャストの中で一番ブレイクした人かもしれない。

★アービング・ブリッツァー役/ジョン・キャンディ

 ボブスレーのことを何も知らないメンバーが、ぜひコーチにと頼み込んだのが、アメリカ人金メダリストのアービング・ブリッツァー。しかし酒浸りで、過去のチームメイトとも確執が…。


 そんなコーチを演じたのは、『ブルース・ブラザース』(1980)や『パラダイス・アーミー』(1981)、『ホーム・アローン』(1990)などで知られるジョン・キャンディ。1980年代を代表するコメディ俳優の一人だが、彼にとっても本作は間違いなく代表作のひとつ。

 本作の後も、マイケル・ムーア監督の『ジョン・キャンディの大進撃』(1995)などに出演が決まっていたものの、『ビッグ・ランニング』撮影中の1994年に、心臓発作で急逝。この2作品は彼の没後に公開された。

 折しも現在開催中の北京オリンピックに、ジャマイカの男子ボブスレーチームが、4人乗りでは24年ぶりに冬季五輪に出場するとあって、観るには絶好のタイミング。彼らの雄姿は日本の寒さも吹き飛ばしてくれるだろう。
(文・寺井多恵)

 映画『クール・ランニング』は、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)にて今夜2月11日22時放送。