『最愛』『MIU404』『アンナチュラル』『中学聖日記』(すべてTBS系)など、さまざまなヒットドラマを生み出してきた新井順子プロデューサーと塚原あゆ子監督。そんな黄金コンビの最新作となる金曜ドラマ『石子と羽男―そんなコトで訴えます?―』(TBS系/毎週金曜22時)が今夜スタート。

新井Pと塚原監督に、ダブル主演となる有村架純中村倫也をはじめとしたキャスト陣の起用理由や俳優としての魅力、本作の見どころなどを聞いた。

【写真】有村架純と中村倫也の新たな魅力がたっぷり! 『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』

■コミカルな有村架純と中村倫也が見たかった

 本作は、4回司法試験に落ちた崖っぷち東大卒パラリーガル・石子(有村)と1回で司法試験に合格した高卒の弁護士・羽男(中村)の“石羽コンビ”が、誰にでも起こり得る珍トラブルに挑む異色のリーガル・エンターテインメント。

 だいぶ前から企画していたという同作。新井Pは「当時、重いテーマの作品をやっていたからなのか、キャラクターが面白い弁護士ものをやりたいなと思ったのがきっかけ」と回顧し、「主演の有村さんと中村さんがわちゃわちゃやり合っていくのは面白いなと思って。また、大きな事件を取り扱う弁護士ものの作品が多い中、身近な小さい事件を取り扱ったら、新しい弁護士ものになるかなと思いました」と企画意図を説明。

 日曜劇場『グッドワイフ』(2019年)をはじめ、弁護士ものの作品を多々経験していた塚原監督は、「弁護士は普段から難しい言葉を使うこともあり、法廷セリフは難しいんです。なので、弁護士の言葉に対して逃げずにやらないとダメだという覚悟は必要だと思いました」と打ち明け、「そこには今も苦労しています」と苦笑いする。

 直近の『最愛』はサスペンスだったが、本作は一転し、正反対のようでどこか似た者同士の主人公の2人が、さまざまなトラブルに挑む中で自らのコンプレックスに向き合い成長していく姿をオリジナル脚本でコミカルに描くコメディとなる。

 新井Pと塚原監督は以前、『私 結婚できないんじゃなくて、しないんです』(2016年・TBS系)などコメディを手掛けたこともあるが、塚原監督は「コメディはすごく難しいんで、限られた才能のある人たちだけがやっていい分野だと思っていて。私はコミカル止まり。難しいですね」と本音を明かす。

 主演の有村と中村の起用理由を聞くと、新井Pは「有村さんは『中学聖日記』を一緒にやっていますが、有村さんのコミカルな作品を見たいなと思って。
中村さんもかっこいい役が多いですけど、私は『メグたんって魔法つかえるの?』(2012年・日本テレビ)のようなコミカルな役が好きで、かっこいいだけじゃない中村さんを見たかったんです」とニヤリ。

 2人への演出について尋ねると、塚原監督は「有村さんは今までやってきた路線とは違う、表情豊かなコミカルなせりふまわしに乗っかってきてくれているので、新しい表情豊かなキャラクターになっています。中村さん演じる羽男には、キャラクターの振り幅をつけたくて。コミカルだけではなくて、いろんな抱えているものの中の表情に中村さんだからできる幅の広さをお届けできたらと思っています」と回答し、「2人のコミカルだけども、グッとくる表情もちゃんと抑えていきたいです」と意気込む。

 有村と中村の役への向き合い方を聞くと、塚原監督は「2人とも真摯(しんし)に台本を読み込んできてくださっています」と言い、「今回は、役者陣にやってみながら考えてもらいたくて、いつにもましてできるだけ何も言わないようにしています。コメディは瞬発力の勝負だったりするので、決めちゃうとそうしかならなくなるけど、そうじゃない発見を目指さなきゃいけないのかなと。2人にできるだけ自由に遊んでもらえる土俵にしていきたいです」と今回の演出で意識している部分を告白。

 また、「2人とも本当に真面目。コミカルをやらなきゃいけないと分かっているので、現場に真面目な顔で入らないようにもするんです。それはプロだなと思います」としみじみ。新井Pが「2人はめちゃくちゃセリフが多いし、長いんですけど、『なんだったけ?』って言わないですよね」と口にすると、塚原監督は「本を持って入んない。すごいですよね」と感慨深い様子で同意していた。


赤楚衛二は“天然素材” 話題を呼んださだまさしのキャスティング理由とは?

 第1話で依頼人として登場し、今後のキーパーソンとなる大庭蒼生役は若手実力派俳優の赤楚衛二が演じるが、新井Pは「新入社員のような初々しい役が多いけど、本人は素朴で硬派な印象で、本人の良さを出せる大庭という役はぴったりだなと思ってお願いしました」と起用についてコメント。

 塚原監督は赤楚について「真摯で本当にすてきな人ですね。これだけ“天然素材”って言葉がぴったり合う人はいるのかしらと思うくらいリアクションも心が洗われて、まだそういうリアクションができるのは、素晴らしい才能だと思うし尊敬します。汚れないでいってほしいです」。

 さらに、赤楚の役者としての魅力を問うと、「染まってない感じのリアクションで、ちょっと想像外の感じがくるのがよくて。どうやって生きたらそういうリアクションになるんだろうと。ご本人の素がすれてないんですよ。頭で考えて芝居するタイプじゃなくて、きっと気持ちで動いてるのかなと思います」と答え、「頭で考えたリアクションをされたらつまらない。心で芝居している感じがすごくすてきですね」と赤楚の自然体な様子を賛辞する。

 “石羽コンビ”が働く「潮法律事務所」の所長で弁護士の潮綿郎役は、シンガー・ソングライターであり、小説家としても活躍するさだまさしが演じる。さだが俳優として連続ドラマにレギュラー出演するのは、デビュー50周年という長い芸能生活においても今作が初になるという。

 新井Pはさだのキャスティング理由を、「潮綿郎役は、意外性のある方にしたかったんです。
あの年代のスペシャリスト俳優さんはたくさんいますが、遊び心を出したく、お芝居もやるけど多方面にも才能がある人がよかった」と説明し、「さださんはちょこちょこ芝居をされている印象でしたが、まさか連ドラ初めてとは知らず。初めて本人にお願いした時に、第一声に『なんで、俺?』って言われました(笑)。いろんな人に、さださんを『なんでキャスティングしたの?』とすごく聞かれますけど、私にとってはそんなに違和感はなかったんです」とエピソードを披露する。

 さだの演技については、「さださんは『芝居はできないよ』とおっしゃっていましたが、めちゃくちゃ自然です」と絶賛。塚原監督も「自然で上手ですてきです」とほほ笑み、「全く勝手が違うから、ご本人がお疲れになってないといいなと。自然に現場に入られ、ニコニコされながらやってくださるので、みんな『さださんに会えてうれしい』ぐらいの勢いで現場に行っていますが、すごく緊張されていたら申し訳ない」と恐縮気味に打ち明ける。

 そして、お笑い芸人・おいでやす小田が潮綿郎と仲が良い、「そば処 塩崎」で働く塩崎啓介役でTBSドラマ初出演を果たす。塚原監督は「小田さんは小田さん。とにかくいい意味で、小田さんの懐の深さに抱かれていますね。現場で小田さんが一言発言すると、『小田さんが言うからいい』ってなるんです。普通に俳優の方がガチガチに固めてお芝居されるよりも胸にきますね」と言い、「さださんとの掛け合いも多いですが、お2人ともアドリブに長けていて、自然にされていてすてきです」と目を細めながら話す。

 1話では、カフェのコンセントで充電していたら訴えられてしまった大庭の依頼が描かれるなど、本作で取り上げるのは身近なトラブルばかり。
新井Pは「10話分、どういうものを扱うかは初めになんとなく決めていて。最近、ニュースで聞くな、みたいなことに次々突っ込んでいます」と説明し、最後には「ラブも時々ありますよ!」と笑顔でアピール。新井Pと塚原監督は、有村&中村主演で身近なトラブルをどう描くのか、期待が高まる。(取材・文:高山美穂)

 金曜ドラマ『石子と羽男―そんなコトで訴えます?―』は、TBS系にて7月8日より毎週金曜22時放送(初回15分拡大)。

※8日放送予定だった『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』第1話は放送日時が変更になりました。

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