三谷幸喜が脚本を務める大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の新キャストとして7月の放送から出演する女優の山本千尋。演じるのは、登場するたびにSNS等で大きな話題になる梶原善演じる善児に育てられた孤児・トウ。

山本といえば『鎌倉殿の13人』以外にも、前作が興収57.3億円の大ヒットを記録した映画『キングダム』の続編、『キングダム2 遥かなる大地へ』(7月15日公開)にも重要な役柄で登場するなど話題作への出演が続いているが、現状をどのように受け止め、未来に思いを馳せているのだろうか――。

【写真】『鎌倉殿の13人』『キングダム2』と話題作に出演! 注目女優・山本千尋、撮り下ろしカット

■三谷幸喜との出会いで、女優業へのギアが上がる!

 「三谷さんとの出会いによって、お芝居を強く続けていきたいと思うようになったんです」と語った山本。三谷との出会いは、Amazonプライム・ビデオで2020年に配信された『誰かが、見ている』。3歳から中国武術を習い、世界ジュニア武術選手権大会で金メダルを獲得した実力を基にしたアクション女優として活躍するなか、三谷は同作で、アクションがまったくないコメディエンヌとしての役柄を山本に託した。

 「三谷さんは『本当はアクションができる子なのに、なにもアクションがない役でごめんね』とおっしゃってくださったのですが、私としてはあの作品があったからこそ、より女優業を続けていきたいという思いが強くなったんです。三谷さんと出会うまでは『このお仕事楽しいな』というふんわりとした感覚だったのですが、あの作品を経験して、誰かとお芝居をすることがこんなにも楽しいんだと実感できて、もっと演技を頑張りたいと思えたんです」。

 アクション以外に、新たな表現の扉を開いてくれた三谷が、再度山本に魅力的な役を任せた。しかもその舞台は大河ドラマという夢にまでみた世界だ。

 「日本を代表する脚本家である三谷さんが描く大河ドラマ。それだけでも夢のようなお話でした。しかも放送後、とても大きな話題になっている梶原さん演じる善児の延長線上にいる役。情報解禁されてから、大きな反響をいただきましたし、トウという役に興味を持っていただいているのも伝わってきました。
ものすごく気合が入っていますし、視聴者の想像を超えるようなお芝居をしたいです」。

 初めて経験する大河ドラマの現場。小栗旬をはじめとする日本を代表する俳優陣、一流のスタッフに囲まれ、夢見心地だという山本。

 「お芝居をしているときは夢中なのですが、ふと我に返ると『こんなすごい場所に立てているんだ』と泣きそうになってしまうんです。小栗さんたちはすでに1年撮影を重ねているのですが、そんななかにポンと入っていっても、スタッフさんをはじめ共演者の方々が、とても温かいんです。私なんて気を使っていただく立場ではないのに、刀に照明を当ててくださったり、ちょっとうまくできなかったなと思っていると『トウちゃんのシーンもう1回やろうか』と声を掛けてくださったり。本当に助けていただいています。だからこそ『トウちゃんのお芝居良かったね』と言ってもらえるように、トウとしても山本千尋としても、頑張っていかなければと気を引き締めています」。

■壮大なアクション作品で、包容力を表現する芝居に「運命を感じました」

 大河ドラマの出演と同時期に、もう一つ話題作に出演する山本。映画『キングダム2 遥かなる大地へ』だ。原泰久の大人気コミックを実写映画化し、57億円を超える興収を叩き出した『キングダム』の続編。原作でも人気の『蛇甘(だかん)平原の戦い』のエピソードを描いた本作で、山崎賢人演じる信と共に戦う羌カイ(清野菜名)の姉・羌象(きょうしょう)を演じる。
壮大なアクションシーンが大きな見どころの本作で、山本は佇まいで羌カイを包み込む包容力を表現する芝居に挑んだ。

 「羌象は、最強と言われた羌カイよりも強い存在。積み上げてきた鍛錬に裏付けされた強さを、アクションに頼らずどう表現するのか――そこが一番の課題でした。私にとってこのチャレンジは、とてもありがたいことです。自分のなかでアクションがメインではない作品で、どれだけ表現できるのかが課題だったので。羌カイの姉として、この役柄を与えていただけたのは、すごく運命を感じていました」。

 参加日数が少ないなか、羌カイ役の清野と姉妹の関係性を築くため、できる限りのことはしたという。

 「清野さんのアクション稽古があるとき、陰ながら見させていただいたんです。清野さんが羌カイとして練習している姿にも影響を受けましたし、実際は清野さんの方が年上なのですが、無邪気な姿やかわいらしさを見て、不思議と妹のように感じることもできました。私が羌象という役をどう捉えていけばいいのか悩んでいるときに、清野さんのアクションを見て、スッと腑に落ちる部分がありました。あとはお互い人見知りだと思うのですが、プライベートなことも包み隠さずお話してくださったので、姉妹という関係性も築けたような気がします」。

■憧れの俳優は真田広之 大河の現場でその思いはさらに強く!

 『鎌倉殿の13人』『キングダム2 遥かなる大地へ』と山本にとって、今年の夏は、いつも以上に熱い季節になりそうだが、客観的に自身を捉える目線は忘れない。


 「私は基本的に自分に自信がないんです。三谷さんからも『あなたは感覚のタイプではなく、練習すれば良くなる人。だから一生懸命やれば、成長過程が見える。そういう道をたどるとうまくいくと思う』と声を掛けていただきました。私自身も本当にその通りだなと思っています。努力しなければチャンスを逃してしまう。でも、昨年より今年と確実に楽しさは増しています」。

 今年8月に26歳になる山本。20代も後半に差し掛かるが、女優業にどんなビジョンを持っているのだろうか――。

 「私は1週間のスケジュールをきっちり決めることが好きなのですが、『この年までにこうしたい』という将来的な目標というのは決めていないんです。もちろんやりたいことは山ほど出てくるのですが、結局は思い通りにいかないので(笑)。だからこそ、大河ドラマもそうですが、目の前にあることを一生懸命取り組んでいきたいです」。


 それでも目標となる俳優はいる。女優の仕事を始めたときから憧れは真田広之。大河ドラマの現場に入り、その偉大さはさらに増したという。

 「アクション俳優としても、演技派俳優としても、そして海外でも活躍されている偉大な方。大河ドラマの現場でも、スタッフさんから真田さんのお名前が良く出るんです。撮影の中でも、『真田さんのあのシーンをイメージしてほしい』と言われることがあり、本当にすごい方だなと改めて思いました」。

 「『鎌倉殿の13人』で山本千尋が演じたトウは良かったねと言ってもらえたらうれしいです」と思いを馳せた山本。まずは現場を思う存分楽しみ「多くのことを吸収したい」と目を輝かせていた。(取材・文:磯部正和 写真:松林満美)

※山崎賢人の「崎」は(たつさき)が正式表記
※羌カイの「カイ」は(やまいだれに鬼)が正式表記

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