NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で、ミス条映コンテストの優勝を手にする“エントリーナンバー9番”として、わずかな出演ながら鮮烈な印象を残した女優の羽瀬川なぎ。可憐(かれん)な笑顔も魅力的な彼女だが、学生時代にバレーボール部で培った“諦めない精神”があるという。

『カムカムエヴリバディ』の反響や、この道を目指したきっかけ、憧れの女優までをたっぷりと語ってくれた。

【写真】「かわいい」と話題になった羽瀬川なぎ 撮り下ろし写真

■『カムカムエヴリバディ』“エントリーナンバー9番”「かわいい」と話題に

――NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』では、3代目ヒロインのひなた(川栄李奈)が参加したミス条映コンテストで “エントリーナンバー9番”の高山理恵役を演じていました。SNSでも「かわいい」と話題になっていましたが、実際にどのような反響がありましたか?

羽瀬川:「両親やおばあちゃんも観ていたよ」と報告してくれた友達もいて、とてもうれしかったです。ヒロインの横にいる女の子であり、優勝者でもあるという存在が、どのように見てもらえるのか、実は不安もいっぱいありました。でもインターネットをリアルタイムで見ながら放送を楽しんでいたら、“エントリーナンバー9番”について「頑張れ」とつぶやいてくださっている人もいて。「視聴者の方が気にしてくれている!」「ありがとう!」と思いながら、SNSを見ていました(笑)。

――朝ドラの撮影現場で印象に残ったことがあれば教えてください。

羽瀬川:私と同じ20代の川栄さんが真ん中に立っていらっしゃる姿からたくさんのことを勉強させていただきました。英語も関西弁もきちんとマスターして役柄を演じていて、本当にすごいなと思いました。私にもいろいろと話しかけてくださったり、ものすごく優しい方でした。

――いつかはご自身も朝ドラのヒロインを演じてみたいですか?

羽瀬川:「その通りです!」と言いたいところですが、それはもうおこがましいことで…。前回よりもさらに物語に関われる役柄で朝ドラに出演できたらうれしいなと思っています。
まずは自分がレギュラーとしてドラマに出演できるようになることが、今の目標です。

■女優のきっかけは高校卒業後に自ら応募「遅めのスタート」

――もともと女優業には興味があったのでしょうか。

羽瀬川:両親が舞台好きで、幼い頃からよく舞台を観に連れて行ってもらっていました。そうするうちに「私は舞台が好きなんだな」と“舞台沼”に落ちて行き(笑)、「“観る方”ではなく、“演じる方”ってどんな感じなんだろう?」と考えるようになりました。中学、高校は芸能活動禁止の学校に通っていたので、高校を卒業したタイミングで「挑戦してみよう」と決心して。

20歳前くらいと、ちょっと遅めのスタートではありましたが、徐々に自分の中に溜めていた“お芝居愛”に向き合ってみようと思いました。今年も『だからビリーは東京で』という舞台を観に行って、会場全体が感動していることが分かったり、舞台終わりにすすり泣いている人を見たりすると「やっぱり舞台っていいなあ」と実感しました。

――はじめの一歩は、どのように踏み出しましたか?

羽瀬川:まずは自分で履歴書を送ることから始めました!

――憧れの女優さんがいらっしゃれば教えてください。

羽瀬川:天海祐希さんと吉高由里子さんです。天海さんの主演ドラマ『緊急取調室』(テレビ朝日系)に出演させていただいたことがあるんですが、天海さんが凛々(りり)しく現場に立っている姿を見ているだけで、「よし、頑張ろう!」とパワーをもらえる。もともと私は天海さんが大好きで、その思いが伝わってしまったのか「一緒に写真を撮ろう」と2ショットを撮ってくださったんです! ものすごく幸せな経験と宝物ができて、今思い出すだけでもニヤけてしまいます。またいつか天海さんとご一緒できるよう、頑張りたいです。


――これからの羽瀬川さんの活躍もとても楽しみですが、「これは自分の武器だな」と思うところはありますか?

羽瀬川:「また一緒に仕事をしたいな」と思っていただけるような仕事ができる人でありたいなと思っています。アピールポイントになるかは分かりませんが、「やるならやる」という言葉を胸に刻んでいて、途中でやめるようなことはしない、粘り強さがあると思っています。「絶対に諦めないぞ!」という気持ちだけは、強く持っています。

――その根性はどのように鍛えたのでしょうか。

羽瀬川:中学、高校とバレーボール部に所属していて、そこで培ったものが大きいと思います。“やってみよう精神”を身に付けることができましたし、仲間の大切さも知ることができました。そこで出会った仲間は私にとっての精神安定剤のような存在で、「何があっても彼女たちがいれば大丈夫」と思うことができるし、今の活動についてもみんながものすごく応援してくれているんです。失敗したときには「みんながきっと慰めてくれる」と思えるような仲間です(笑)。逆に言えば、何かやらかしたときにはちゃんと怒ってくれると思います。本当に仲間って、最高です。

――とてもステキな仲間ですね。バレーボール以外で特技や趣味はありますか?

羽瀬川:成人式で着物に袖を通した時に「自分で着物を着られたらいいな」と思って、そこから着付けを学び始めました。
それ以外にも茶道や乗馬など、新しいことに挑戦しています。

■舞台『ON AIR ~この音をキミに~』は「初めての経験が詰まっている」

――舞台『ON AIR ~この音をキミに~』では、男気あふれる主人公・桜木真の妹・鈴を演じられます。

羽瀬川:主人公の真は、男気があってパワフルな男性です。その力によって登場人物それぞれの心に変化をもたらしていくんですが、そういった物語から、日常の大切さとともに、誰もがいろいろな事情や思いを抱えていて生きているんだということが浮かび上がってきます。私は“目が見えない”という役柄で、歌を歌うシーンもあったりと、結構緊張しています。

――事前にどのようなレッスンをされているのでしょうか。

羽瀬川:ボイストレーニングに通ったり、視覚障害のある役柄ということで、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」という、真っ暗闇の空間の中で白杖を持って進むイベントを体験したりしています。私にとって、初めての経験が詰まっている舞台でドキドキしていますが、舞台はみんなで作り上げていくものなので、いいチームワークができるといいなと楽しみにしています。

――町のラジオ局が物語の軸となる舞台ですが、普段ラジオは聴きますか?

羽瀬川:いろいろな番組を聴いていて、交通情報や天気予報、ニュースなど、生活情報のほとんどをラジオで得ています。

――羽瀬川さんは現在24歳ですが、その年齢でラジオ中心の生活をしている人は珍しいかもしれません。

羽瀬川:小さな頃から朝起きると流れているのはラジオでしたし、部活をやっている頃は、朝6時にラジオで流れてくる音楽が家を出る合図だったりと、もはや日常の一部でした。母がラジオ好きだった影響だと思いますが、カセットにラジオを録音して聴いていたりもしました。
周りにはカセットテープのA面、B面を知らない方も多いと思います。だからこそ、今回ラジオに関係した舞台に出演することができて、ものすごくうれしいです。母もものすごく喜んでくれました。

――こうしてお会いしてみると、羽瀬川さんはとても快活で、楽しいお話がどんどん出てきます。大人しく見られたり、イメージとギャップがあると言われたりすることはありますか?

羽瀬川:そう言っていただくこともあります。いつか私の素顔を目にしていただく機会があったら、実際の羽瀬川なぎを見て確かめてもらえたらうれしいです!

(取材・文:成田おり枝 写真:松林満美)

 舞台『ON AIR ~この音をキミに~』は新国立劇場 小劇場にて7月28日~8月7日、京都劇場にて8月13日、14日に上演。

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