清野菜名と松坂桃李がダブル主演する実写映画『耳をすませば』がきょう14日より公開される。共演には山田裕貴、内田理央、松本まりか、田中圭ら、豪華キャストが名を連ねている。
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アニメ版『耳をすませば』は主人公と同級生たちの青春時代をみずみずしく描いたスタジオジブリの名作である。中学3年生の月島雫は、読書が大好きで図書館に通う日々を送っていた。ある日、図書館で借りる本の貸し出しカードにいつも「天沢聖司」という名前があることに気づく。次第に聖司の存在が気になりはじめる雫。同じ頃に、雫は猫に導かれて入った「地球屋」という店でバイオリン職人を目指す少年と出会うのであった…。名曲「カントリーロード」にのせて雫と聖司の物語は進んでいく。そこに描かれるのは恋だけでなく、思春期特有の「まだ何者でもない自分」への不安や未来への希望。まさに青春がぎゅっと詰め込まれた作品になっている。
一方の実写版で特筆すべきは、2人の青春劇のその後の物語が描かれたこと。
■魅力1:主人公の中学生時代を演じた子役の活躍
1つ目は子役の活躍だ。本作は大人になってからの雫を清野が、そして聖司を松坂が演じるために、どうしてもこの2人の物語に気持ちがいってしまう。だが実際には中学生時代のエピソードもしっかりと描かれており、安原琉那と中川翼がその淡い恋模様を演じている。人気アニメーション作品と同じ中学生時代を担う2人のプレッシャーは相当のものであったに違いない。だが堂々と、かつアニメと変わらない透明感をもって互いの関係性を表現する。雫や聖司のイメージを踏襲しながら、芝居で表現しきった2人の勢いに圧倒された。
■魅力2:“大人聖司”松坂桃李の存在感
2つ目に挙げたいのは、大人パートで松坂がその存在感を遺憾無く発揮した点である。昨今は『娼年』(2018年)、『孤狼の血』シリーズ、『流浪の月』(2022年)など演じるに難しい役を演じてきたように思う松坂だが、本作での爽やかな青年役を見るにつけ改めてその芝居の振り幅のすごさに驚かされる。松坂は、聖司の劇中年齢より8歳ほど上であるにも関わらず、初々しくひたむきな姿で聖司の魅力を表現する。多くの人が恋をしたアニメ版の聖司を具現化するというハードルの高さに加え、大人になった聖司というさらに高いハードルを課されながらも、堂々と超えてくる。
■魅力3:まさにホンモノ! 実写化されたバロン
そして3つ目のポイントは、バロンの存在だ。『耳をすませば』だけでなくジブリ作品『猫の恩返し』(2002年)でも活躍したバロンを気にする視聴者は多いはず。そんなバロンも実写化された人形として、地球屋で恋人を待っている。きらりと光る瞳や、造形のリアリティはアニメの中のバロンそのもの。バロンがこの再現度で現存するというロマンは計り知れない。
■魅力4:アニメ版からの“変化”がスパイスに
最後に言及したいのが、実写化においての「変化」の部分である。アニメ版でバイオリン職人を目指していた聖司は、実写版ではチェロ奏者を目指す。また、アニメ版で印象的な劇中歌「カントリーロード」が、実写版では「翼をください」に。大きな要素から小さな要素まで変化が加えられている。特に楽曲の変更は全く違った印象を与えるものであり、戸惑いを感じる部分もあるかもしれない。だが実写版が描く内容を加味すると、10年後の雫たちと非常にリンクした楽曲になっているようにも感じられた。
10年後の物語が加えられたことによって、新たな悩みや現実の壁に直面する雫と聖司。だが、それすらキャスト陣の力と、「地球屋」の作り込まれた美しい美術により、どこかファンタジックな気持ちで観ることができる。雫と聖司のその後を、ぜひのぞいてみてほしい。(文:Nana Numoto)