2006年に公開された映画『転校生‐さよなら あなた‐』をはじめ、NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』、映画『鋼の錬金術師』シリーズなど映画・ドラマを中心に活躍を続ける蓮佛美沙子。「2人で鍋を食べに行ったこともある」というトリンドル玲奈とダブル主演する、ドラマ24『今夜すきやきだよ』(テレビ東京系/毎週金曜24時12分)が1月6日から放送される。

放送スタートを前に、ドラマに懸ける気持ちや役作りについて、さらにはデビューから現在を振り返って感じている今の思いを聞いた。

【写真】いつまでも変わらない透明感が魅力の蓮佛美沙子

◆生きていく上で直面する感情をリアルに描く“今やるべき作品”

 本作は、第26回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した、谷口菜津子による同名コミックを原作に、恋愛体質のあいことアロマンティックのともこが共同生活を通して紡ぐガールズムービー。日常生活に当たり前のようにあるジェンダーロールや婚姻制度、セクシャリティにまつわる生きづらさへ立ち向かうあいことともこの姿を、おいしいご飯を通して描く。蓮佛は、仕事はデキるが家事は苦手な太田あいこ役を演じる。

――今作の企画を最初に聞いた時の感想を聞かせてください。

蓮佛:今作のプロデューサーと監督は『うきわ‐友達以上、不倫未満‐』(テレビ東京系)でもご一緒したお二人だったので、まずはこんなにも早くまたお仕事できることがうれしかったです。その後、原作を読んで、私たちが生きていく上で直面する感情をリアルに描いていると感じ、今やるべき作品だと思いました。脚本では原作よりももっとコミカルに描かれているシーンも多く、撮影が楽しみでした。

――あいこを演じるにあたって意識したことは?

蓮佛:私は原作がある作品の場合、原作に一つの答えがあると考えているので、今回も原作にあるあいこの真っすぐさやテンション感は大切にしています。それから、作品に入る前にプロデューサーの本間さんからキャラクターの詳細を頂いて、そこに「あいこは太陽やひまわりのような存在であってほしい」と書かれていたので、それを頭に置きながら、原作からの印象をそこに加えていく感じで役を作っていきました。あいこは、強く自分を打ち出しているけれども、心には自分の物差しと世間的な物差しの両方を持っていて、その間で行ったり来たりする人間臭さもあるキャラクター。自分の中では、「油絵」のひまわりのような女性をイメージして演じています。


――ともこ役のトリンドル玲奈さんの印象は?

蓮佛:今も昔もずっとニコニコしているイメージです。今回、2人でお芝居するシーンが多いのですが、現場でもずっとニコニコしていて、鼻歌を歌ったりしているので、自分で自分の機嫌を取るのが上手な人なんだなと思いました。

――前回、共演した時には、2人で鍋を食べに行ったことがあったとか?

蓮佛:そうなんですよ! 行きました! 今回はまだ行けていないですが、また行きたいですね。

◆30代になり「自分が変わったというより、世間からの見方が変わった」

――2006年に映画『犬神家の一族』でデビューしてから、16年が経ちました。これまでの芸能生活を振り返り、今、どんなことを感じていますか?

蓮佛:本当に人に恵まれているなと思います。私、このお仕事を辞めたいと思ったことが1度もないんですよ。辞めたいと思わずにここまで来られたことにすごく感謝していますし、自分にはこれしかないと思っています。こうして続けられたのは周りの方たちのおかげです。

――ターニングポイントとなった作品や出会いは?

蓮佛:やはりデビュー1年目の『転校生‐さよなら あなた‐』は大きなターニングポイントでした。初めて心の底から「お芝居が楽しい、この仕事をずっと続けていきたい」と強く感じた作品です。大林宣彦監督から、「お芝居には正解も間違いもない」ということを毎日伝え続けていただけた現場だったので、私にとってはとても大きな基盤になりました。それから、最近では『ドン・ジュアン』というミュージカルで、Kis‐My‐Ft2の藤ヶ谷(太輔)くんとお仕事できたことも大きなターニングポイントだったと思います。


――藤ヶ谷さんからはどんな刺激を受けたのですか?

蓮佛:私とは仕事への向き合い方が全く違ったんです。私は追い込まれると寝食も忘れてのめり込んでしまうタイプなのですが、藤ヶ谷くんはきちんと切り替えができるタイプ。自分を大事にした上で頑張るというスタイルは、私にとっては目から鱗で、すごく健全な頑張り方だと思いました。

それから、実は、藤ヶ谷くんが公演中に体調を崩していたことがあって。こちらが気軽に声をかけられないような緊張感だったのですが、幕が開いたら、不安を全部跳ねのけて、普段と変わらないパフォーマンスをしていて…。きっとお客様にも気づいた方はいらっしゃらなかったんじゃないかなぁ。正面からぶつかって、ピンチを乗り越えているその姿は本当に感動しましたし、大きな刺激になりました。

今でも、不安になったり緊張した時にはあの時の藤ヶ谷くんの姿が頭をよぎるし、あの姿を目の当たりにしてから、私あがり症が治ったんですよ。これはご本人にも言っていませんが、私は藤ヶ谷くんには頭が上がりませんし、本当に尊敬しています。

――転機ということでは、2021年に30歳を迎えられたことも一つの節目だったのではないかと思います。30代になり、何か変化はありましたか?

蓮佛:特にはないです。ただ、30歳になった時にちょうど恋愛ドラマに出演していたということもあって、「結婚は?」という質問をたくさんされました。
30歳になった途端に聞かれることが増えたので、自分が変わったというよりも、世間からの見方が変わったように感じます。だからこそ、私自身は好きに生きたいとより強く思うようにはなりました。

――では、これから先、蓮佛さんが目指す理想像は?

蓮佛:長くこの仕事を続けていきたいということが第一です。あとは、とにかく健康に。それに尽きると、この1年、特に感じました。心身ともに健康で楽しむ気持ちを忘れずに、その時できる100%の力で全てに向き合い、楽しんで生きていけたらいいなと思います。すごくシンプルですが。

――2023年にやりたいことはありますか?

蓮佛: 2023年にというよりは、30代のうちにできたらいいなと思っていることですが…海外の作品に出たいです。私、20代の頃に2週間くらい語学留学をしたことがあったんですが、その時に自分では何の成果も感じることができなくて。私は根がケチなので(笑)、その時のお金を無駄にしたと思いたくないがために、日本に帰ってから英語を勉強するようになりました。最初は仕事に関わらず、コミュニケーションを取る機会が増えたらいいなという思いだったのですが、だんだんと自分の知らない世界、未知の世界を見てみたいという思いが強くなってきて…。せっかくここまで勉強してきたので、いつか出られたらいいなと思っています。


――知らない世界に踏み出すというのは勇気がいることですが、それをしていこうというのは素敵ですね。

蓮佛:プライベートでは、全くそうは思わないんですよ。安心、安全が大好きなので(笑)。ただ、お仕事に関しては、人生一度きりなのだからと。それから、性格的にも何かを学ぶことが好きなので、嫌なことやうまくいかなかったことがあったときに、勉強をすることで心が静まるんです。安心感があるというか…。そういう意味では、勉強を重ねて、それを役立てるというのは性に合っているのかもしれません。

(取材・文:嶋田真己 写真:高野広美)

 ドラマ24『今夜すきやきだよ』は、テレビ東京系にて1月6日より毎週金曜24時12分放送。

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