アニメ映画『かがみの孤城』が第52回ロッテルダム国際映画祭のLimelight部門に邦画アニメで史上初の正式出品となり、現地時間2月2日に上映された。現地入りした原恵一監督は上映後、観客からの質問に答えた。
【写真】ロッテルダム国際映画祭でファンとのQ&Aに答えた原監督
本作は、2018年本屋大賞を史上最多得票数で受賞した辻村深月による同名のベストセラー小説を劇場アニメ化したファンタジーミステリー。
第46回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を受賞するなど、既に国内でも高い評価を得ている本作を手掛けた原恵一監督は、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の襲』(2001年)、『河童のクゥと夏休み』(2007年)の両作品で文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞。『カラフル』(2010年)では、世界最大規模のアニメーション映画祭・第35回アヌシー国際アニメーション映画祭長編作品特別賞観客賞を受賞。『百日紅~Miss HOKUSAI~』(2015年)では、同映画祭審査員賞を受賞し、2018年には、高畑勲監督、大友克洋監督につづき、アニメーション監督では3人目として紫綬褒章を受章するなど、国内外ともに高い評価を得ている。
ロッテルダム国際映画祭で原監督は、上映会前に観客へ「お越しいただきありがとうございます。この映画が皆さんの心に優しい感動をもたらすことを願っています。さて、準備はいいですか!? 鏡の向こうに待っているファンタスティックな旅へ共にくり出しましょう!」と英語であいさつ。
上映後、観客からは大きな拍手と歓声が贈られ、観客とのQ&Aが行われた。「この映画を通して伝えたいメッセージは?」との質問に対し、原監督は、「日本でもオランダでも学校に行けない子はたくさんいると思うけど、そういう子は親も友達も誰も助けてくれないと思ってすごく孤独の中にいるかもしれないけど、それはずっと続くことではなく、きっと誰かが味方をしてくれるから信じて欲しいということが、この映画の伝えたいメッセージです。I believe you are not alone.(あなたはひとりじゃない)」と語った。
アニメ映画『かがみの孤城』は公開中。
※恵一監督のQ&A全文は以下の通り。
<恵一監督Q&A全文>
Q:この作品は原監督のオリジナル作品か、それとも別の原作を基に描かれましたか?
A:この作品は、日本で有名な辻村深月さんという方が書かれた、累計発行部数170万部を超える小説が原作ですので、僕のオリジナルではありません。
小説や本作で取り上げている、“何らかの事情を抱えて学校に行けない子供たち”は、オランダでもいると思うんですけど、日本では現在23万人程いると言われており問題になっています。原作の読者や本作の鑑賞者に共感を得られたのは、この問題をテーマに扱ったからだと思います。
Q:映画では細かい部分で、原作からアレンジしているシーンもありましたが、どのような点を意識して映画を作っていきましたか?
A:原作は分厚い本で、それを2時間以内にまとめなければいけなかったので、映画にするには沢山の苦労がありました。原作では、孤城に集まる7人それぞれのバックストーリーが丁寧に描かれているのですが、映画で同じように描いてしまうと2時間に収まりきらないため、“安西こころ”という女の子を中心とした物語として、しかし原作のストーリーを損なわないよう構成しました。
Q:「こころ」という名前は、日本語で「心 "heart"」という意味ですよね。
A:とても重要なポイントですね。そうなんです。ヒロインの名前は「こころ」で、日本語「心 "heart"」という意味なんです。
Q:マサムネの声優は有名な某名探偵の声優と同じで、劇中で某名探偵の決め台詞が使われていて驚きました。
A:オランダでまさかこのような質問が来るとは思ってなかったのですが(笑)某名探偵は日本ではとても有名なアニメーションですが、その「真実はいつも一つ!」という決め台詞をパロディで言ってもらおうと思い、遊びました。
ちなみに僕が長年監督を務めた「クレヨンしんちゃん」のしんちゃんの声を演じていた矢島晶子さんがある役で出演してますが、わかりましたか?(観客:わかりました!)ありがとう、素晴らしいです。
Q:この映画を通して伝えたいメッセージは?
A:日本でもオランダでも学校に行けない子はたくさんいると思うけど、そういう子は親も友達も誰も助けてくれないと思ってすごく孤独の中にいるかもしれないけど、それはずっと続くことではなく、きっと誰かが味方をしてくれるから信じて欲しいということが、この映画の伝えたいメッセージです。
I believe you are not alone.(あなたはひとりじゃない)