井上真央が主演を務めるドラマ『100万回 言えばよかった』(TBS系/毎週金曜22時)。佐藤健と松山ケンイチと共に贈るファンタジーラブストーリーとして銘打ってスタートした本作だが、回を追うごとにミステリー度が増し、実力派3人だからこその奥行きを感じさせる作品になっている。

そうしたなか、松山演じる魚住譲にホッと癒やされ、クスリと笑顔を引き出されている人も多いのではないだろうか。第4話では、ついに直木の遺体が発見されてしまった。ますます切なさと謎が大きくなっていくだろう展開を前に、魚住の癒やされキャラを振り返ってみたい。

【写真】松山ケンイチに“癒やされる”かわいいシーンを振り返り

■デビュー20年超えの実力派 今も普段は青森弁

 その前に、改めて松山ケンイチ自身についてさらっと。来月38歳を迎える松山は、2001年にモデル活動からスタート。2002年にドラマ『ごくせん』で俳優デビューを飾った。
その後、2006年に、今なおファンの多い『デスノート』『デスノート the Last name』のL役で一気に人気俳優となった。2012年には大河ドラマ『平清盛』に主演。視聴率うんぬんを言われもしたが、作品と松山自体へは高い評価が多い。その後も安定して活躍を続け、映画『デトロイト・メタル・シティ』『ウルトラミラクルラブストーリー』『聖の青春』など代表作多数で、受賞歴もズラリと並ぶ。

 一方、バラエティ番組などの出演時からも伝わる通り、松山自身は、今でも出身地である青森の方言を話す。これは取材時でもずっと変わらない。
自然体というより、フラットな印象が強く、その分、役柄に入ったときのスイッチへの振り切れ方が強いのかもしれない。『100万回 言えばよかった』では、ある日突然幽霊になってしまった直木の姿を唯一見ることのできる刑事の魚住に、うまさを匂わすことなしに、チャーミングさをプラスしている。

■本音を漏らす直木へのリアクションがかわいい

 第2話。詰めた話をするために悠依(井上)と、幽霊の直木(佐藤)と共に、直木の家に入った魚住は、3人でソファに座る。このとき、悠依が魚住にだけでなく、直木のコーヒーカップも用意しているのがすてきだ。そして魚住がいわゆる通訳をしながら、直木の行動を振り返る会話が進んでいく。
ここで悠依には自分の姿も声も分からないと自覚している直木が、魚住に本音を漏らす。ちょいちょいと。

 たとえば、「結婚したいと言うつもりだった」とか(悠依も期待していた)、「すごく好きだって言えばよかった」など、直木の、言えなかった本音が漏れる。このときの魚住のリアクションが抜群にかわいらしくて、思わず吹き出してしまう。後輩から告白されて「イメージと違う」と振られてしまった魚住だが、恋愛に疎いらしい性格が、こうした反応からも伝わってくる。同じ第2話でも、後半に直木の部屋で再び3人がそろう場面では、悠依が直木の死を現実のものとして感じた後であり、前述の時とは空気が違うのだが、自分の存在をどうにか消しながら、それでも悠依に涙を拭いてもらおうとローテーブルの下に隠れながらBOXティッシュを渡す魚住の背中に、緊張がほぐれた。


■大号泣必至の名場面も、袖で見る魚住の存在で愛らしい場面に

 第1話のラストで、ハンバーグを作るためにと直木が魚住の体へ乗り移ったが、第3話では、直木の家で、直木の幽霊と共に、悠依と魚住が料理を作った。そこで魚住が乗り移られたフリ! イケメン風に顔を作って「悠依ちゃん、ボクだよ」と言ってみせる。もちろん松山自身は役柄によってイケメンにもなれるし、実際、第1話では直木に乗り移られて料理する姿もきっちり演じていた。が、ここではそれこそきっちりイケメン“風”を見せた(※第5話では再び本当に乗り移られた芝居を演じ分けた)。

 そして同じ第3話のラストには、井上と佐藤による大号泣必至の名場面が待っていた。弟を生かすためだけの存在とでも言いたげな母の、しかもそこに悪びれもないような言葉の数々が、こちらまでえぐってくる。
愛する直木へのひどい扱いに、悠依も深く傷ついただろうが、その家庭で生きてきた直木自身が、母の言葉をすぐそばで聞いていたことを、悠依は知っている。怒りを爆発させて当然の悠依だったが、彼女は直木を愛で包むことを選んだ。

 この名場面に、笑いを差し込むという超難題を、松山はやってのけてしまうのである。第4話冒頭、実家の寺の姉・叶恵(平岩紙)とのやりとりから、この切なく、しかし大きな愛に包まれる温かな場面を、実は魚住も目撃していたことが分かる。泣きながら。名場面に変わりはないが、袖に魚住が加わったことで、愛らしい場面にも変貌した。
姉との電話はたびたび登場。シリアスさに傾きがちな物語にあって、非常にいい息抜きになっているとともに、4話ラストでの「体で感じたことのが強い」など、姉の突いてくる真理も侮れない。

 さて、物語は中盤、後半へと入っていく。謎の加速とともに、答えも少しずつ見え始めるだろう。そこにあって松山の演じる癒やし魚住は大きな魅力のひとつだが、シム・ウンギョン演じる医師・宋の存在がどう動いてくるのか気になる。魚住にも、いろんな面が見えてきそうだ。(文:望月ふみ)