2020年、2021年と新春スペシャルドラマとして放送された「教場」シリーズが、2023年4月クールで、連続ドラマ『風間公親―教場0―』(4月10日スタート、毎週月曜21時、初回30分拡大)としてフジテレビ月9で放送される。主人公・風間公親を演じる木村拓哉は「月9という枠で、この題材をやるのは不可能だと思っていた」と率直な胸の内を明かすが、過去2度のドラマで培ってきた各部署のスペシャリストたちの手によって、月9という枠のイメージを超えるような熱い作品に仕上がっているという――。

現場には「面白い責任が転がっている」と話す木村が、作品への思いを語った。

【写真】風間公親を演じる木村拓哉

■長年タッグを組んだ中江功監督と新たな月9に挑む!

 スペシャルドラマ『教場』で木村が演じた風間公親は、警察学校という密室のなか、適性のない人間を容赦なくふるい落とす、冷酷無比な男。そのやり方は、ある意味で戦慄が走るほどの“怖さ”に溢れていた。そんな風間を作り上げた、刑事時代のエピソードが描かれる連続ドラマ。強烈な風間というキャラクターが、フジテレビの月9という枠のイメージに合うのか――木村にも見えない部分があったという。

 「今回のドラマは『教場』というタイトルを後ろに持ってきて、風間公親を前に持ってくる作業。彼のパーソナルをどこまで不思議に、そして不気味に表現するかという部分で、水を飲むとか、鼻をかむとか、何かを飲み込むとか咀嚼するとか、そういう人らしい部分を監督から一切求められない。そういう意味を含めて、フジテレビの月9に、この作品をどうやって陳列するんだという思いはありました」。

 最初は連続ドラマでやることは「不可能だと思っていた」という木村。しかし、これまで何度もタッグを組んでいる演出の中江功の熱意によってチャレンジしてみようという思いになった。

 「作品の中身を引用させていただくなら、ある意味、中江教場で自分は育ってきたと思っているので。挑戦的な部分はあるにしても、中江監督や慣れ親しんだスタッフが現場にいてくれるので、気持ちいい緊張感で作品に取り組めています」。


■風間公親の前日譚は、視聴者と同じ空間に存在

 これまでは、警察学校という特殊な空間での物語だったが、本作では日常のなかの風間が描かれる。

 「スペシャルドラマと大きく違うのは、視聴者の皆さんが生活している空間で風間という人間が描かれること。最初に監督とは、どう違和感なく、面白くできるかを話し合いました。スペシャルドラマを2本作ったうえで、それよりも以前を描くので、そこはいろいろな逆算をしなければいけないという難しさもありました。でも、これまで2本作品を作ったスタッフさんがいるので、皆さんが『彼だったらこうしますよね』と先回りして考えてくださる。ベクトルが同じ方向を向いている人たちと、互いを理解し合えている現場というのは、非常に面白いです」。

 各部署がしっかりとコンセンサスをとって臨んだ本作。異質の主人公を月9で描くというチャレンジに立ち向かっていくなかで、いまの世の中の風潮への寄り添い方も頭を悩ませる部分なのかもしれない。

 「まあ、いまは現場でリスペクト・トレーニングという言葉が存在しているわけで。そのなかで、風間の指導方法って、現代に合っているかどうかというのは、非常に疑問が持たれるところではあります。でも、そこはフィクションという強い盾を振りかざして、しっかりと作っていきたいと思っています」。

■視聴方法の変化に「そっか!」

 木村にとって、月9は『ロングバケーション』や『ラブジェネレーション』、「HERO」シリーズ、『プライド』、『エンジン』など、数多くの作品で主演を務めた枠。
しかし、“枠”という概念は、若者の生活形態の変化で、意味合いが変わってきているという側面もある。

 「元も子もない言い方になってしまうかもしれませんが、大人が本気になってテレビドラマを時間とお金をかけて作っても、観る人の選択肢が広がったことによって、一元的な意味を持たなくなってきていることは事実だと思います。スタッフのなかにも『テレビが家にない』という人もいますからね(笑)」。

 木村はスタッフとの会話で印象に残ったやり取りを明かす。

 「『この間、中江さんと木村さんがご一緒したドラマ観ました!』という若いスタッフがいたんです。『どうだった?』って聞いたら『すごく熱いお話でした』と言ってくれたのですが、でもそれはテレビではなくスマホの画面で観ていたらしくて、『あっ、そっか』って(笑)。いま視聴方法ってさまざまで、リアルタイムで観てくださる方がいれば、見逃し配信で観る方、毎週録画していて、一気にまとめて観る人もいる。どれが正しいということもないのですが、作品に取り組む熱意とは別に、しっかりとラインを引いて考えなければいけないという部分はあると思います」。

 時代の変化と共に、受け取る側の環境は変わったとしても、現場には「非常に面白い責任感が毎日転がっている」と、木村のモノ作りへの探求心は変わらない。現場の熱は「高めですね」という木村の表情には、どんな形態で視聴しようとも、想像を超えるような作品に仕上がっているという自信がうかがえた。(取材・文:磯部正和)

 ドラマ『風間公親―教場0―』は、フジテレビ系にて4月10日より毎週月曜21時放送(初回30分拡大)。

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