周囲まで照らす明るい笑顔が魅力的な、めるること生見愛瑠。もともとファッションモデル、タレントとして高い支持を得ている彼女が、現在放送中のドラマ『日曜の夜ぐらいは...』(テレビ朝日)では、影のある演技でも惹きつけている。



【写真】生見愛瑠、『日曜の夜ぐらいは...』で好演 明るさとともに際立つ影の演技

◆キャリア10年以上の清野菜名岸井ゆきのの隣に堂々と並び立つ

 『日曜の夜ぐらいは...』は、『彼女たちの時代』『最後から二番目の恋』『泣くな、はらちゃん』など、決して派手でなくとも、ひとりひとりの心の奥にしっかりと届く良作を生み出し続ける脚本家・岡田惠和の手によるオリジナル作品。生きづらさを抱えながらそれぞれに毎日を消化してきた3人の女性たちが、あるラジオ番組をきっかけとして出会い、心を通わせていく物語だ。

 車いすの母(和久井映見)と団地で暮らす主人公・サチを演じる清野菜名と、家族とは絶縁状態にあるタクシー運転手の翔子を演じる岸井ゆきのに並び、ばあちゃん(宮本信子)と2人暮らしの若葉役でメインキャストのひとりとして、生見が名を連ねる。

 ともにキャリア10年以上、いくつもの演技賞を受賞している清野と岸井の隣に立つ大抜擢だが、生見は、プライムタイム初出演となったドラマ『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(2021)のときからすでに、その才能を感じさせていた。まっすぐな森生(杉野遥亮)に思いを寄せるハチ子役で登場した生見は、主演の杉咲花らを相手に、“めるる”の“め”の字も持ち込むことなく、複雑な感情を表に出しながら物語に溶け込み、キャラクターとしての成長を見せた。

 これまでに映画『モエカレはオレンジ色』『湯道』、ドラマでは、クライマックス法廷での涙の演技が光った『石子と羽男-そんなコトで訴えます?-』第4話、初めての母親役を熱演した記憶に新しい『風間公親-教場0-』第4話と演技を重ね、いずれの役柄でもしっかりと印象を残してきた。


◆バス停シーンで見せた闇 生見自身の光が強ければ強いほど、影も深く濃く

 『日曜の夜ぐらいは...』は14日に第3話が放送。宝くじ1等3000万円に当選したサチは、約束の通り翔子と若葉との山分けを決め、3人は再会。心から笑い合える時間をふたたび過ごす。「3人一緒なら、自分も幸せになれる気がした」と言える時間を。そして揃って宝くじを受け取るためにLINEグループを作り解散する。

 おそらくは、それまでLINEで気軽なやりとりをする相手などいなかった3人。
翔子の「もう寂しいんですけど」の投げかけに、「だよね」「わかります」と即レスするサチと若葉。その顔には自然と笑みが浮かぶ。バス停にいた若葉の表情も明るい。しかし次の瞬間、地元の住民が、ネチネチと、これ見よがしに陰口をたたき始めた。「ニヤニヤして」「あの女の娘だもん。絶対男だよ」と。


 鋭く尖った石のような、そうした言葉を数えきれないくらいぶつけられてきた若葉は、声(音)をシャットダウンする術を身に着けてしまっている。それでも、何を言われているかは、分かっている。声に出して空で言えるほどに。自分をあざ笑う声に、嘲笑を重ねる若葉の姿に、悔しくて涙が出た。同時に、心を許せた仲間とのほんのわずかな幸せな時間から、一気にマンホールに突き落とされたような闇に触れさせた生見の演技に驚いた。そして、そうした闇や、ふと感じさせる影は、生見自身の持つ光が強ければ強いほど、さらに深くも濃くもなり得ると感じさせた。


◆俳優デビューから2年で得た名優・宮本信子との共演機会

 さらに第3話のラストには、“あの女(矢田亜希子)”が登場した。帰って来ていた母を目にした若葉は、肌身離さず持ち歩いていた通帳を見せてしまう。「お金いるの、出して。でないと私、死んじゃうよ」と言われた若葉は顔面蒼白。通帳を取りだす動きには、迷いがなかった。彼女には母が来ることが分かっていて(実際、そうした予感をばあちゃんに話していた)、自分が渡してしまうことも分かっていた。
幼いころから、悪魔のような母親に支配されてきた若葉が、「考える」ことなしに通帳を取り出してしまう反応こそがリアル。

 第1話、第2話でも印象的な芝居はいくつもあった。サチと翔子との出会いの場面での畳みかけるようなオタク気質な喋り口調(素晴らしく聞き取りやすかった!)、年齢に似合わぬ哲学的な言葉の数々や、ばあちゃんとのやりとりなどなど。

 そして、はしゃぐ姿にしろ寂しげな表情にしろ、生見の姿から一番に伝わってくるのは、彼女が芝居を楽しんでいるということである。俳優デビューからほんの2年。まだまだ成長過程に違いない。
これからの道には努力だけでなく、少なからず「運」も必要。本作で生見は、清野と岸井と組み、すぐ横には子役から活躍する岡山天音もいる。さらに、ばあちゃんと孫として、宮本信子とがっつりと組むという、多くの俳優が喉から手が出るほど望むだろう機会を得た。

 何より、彼女自身が持っている光は努力して持ち得るものではない。光も闇も感じさせてくれる生見だからこそ、もっともっとその演技を見たいと思わせてくれる。(文:望月ふみ)

 ドラマ『日曜の夜ぐらいは...』は、ABCテレビ・テレビ朝日系にて毎週日曜22時放送。