ホラー界の巨匠・清水崇監督の最新作『忌怪島/きかいじま』で、異世界のタブー“赤い女”=“イマジョ”と対峙する女性を演じた山本美月。「家では夫とも一緒にホラー映画を観ます」と大のホラー好きの彼女は、これまでにも「リング」シリーズの貞子、「呪怨」シリーズの伽椰子という世界に誇るホラーアイコンと共演してきた。

そんな山本が、今回目撃した“イマジョ”の衝撃や魅力を証言。新たなライフステージに足を踏み入れた、今の心境までを語った。

【写真】透明感あふれる美しさ 山本美月、撮り下ろしフォト

◼︎なにわ男子・西畑大吾と初共演 意外な一面も目撃!

 『犬鳴村』『樹海村』『牛首村』の「恐怖の村」シリーズでは、実在する心霊スポットを描いてきた東映と清水監督が新たに手掛ける本作。古来の怨念が眠る島を舞台に、天才脳科学者の片岡友彦(西畑大吾)と、VR研究チーム「シンセカイ」のメンバーに次々と不可解な出来事や死が降りかかり、彼らがその謎を解き明かそうとする姿をつづる。山本は、主人公・友彦と出会い、父親の死や、襲いかかる恐怖に立ち向かっていく女性、園田環役を演じた。

 脚本を読んで、「恐怖の存在というホラー的な怖さもありながら、人間関係のドロっとした部分もしっかりと描かれた内容。
“逃げられない”という閉ざされた島ならではの恐ろしさや、島の独特な文化が描かれている点もとても魅力的で、ぜひ参加してみたいと思いました」とほほえんだ山本。撮影は昨年5月~6月にかけて奄美大島で行われたが、「私、奄美大島に行ったことがなくて! 奄美大島に行けるということも、参加したい大きな理由になりました」とワクワクしながら撮影に臨んだという。

 実際に同地を訪れた感想について、山本は「“神様が降りた場所”と言われることがありますが、そう言われる理由がわかるような気がしました。私は霊感があるタイプではないんですが、そんな私でも、そこにいるだけでとても気持ちがいい場所だなと思いました」と神秘性を感じたそうで、「共演者の方々もみんな仲が良くて、和やかな雰囲気の中で楽しく撮影ができました。奄美でのロケのあとに関東でも撮影があったんですが、みんな奄美が恋しくなっていました」と笑顔で述懐。

 友彦役を演じた、なにわ男子の西畑と共演した感想に話が及ぶと、「西畑くんは、本作で脳科学者の役を演じているので、難しいセリフがたくさんあって大変だったと思います。
それでも待ち時間には、『シンセカイ』の皆さんと一緒に盛り上がったりと、いつも明るく過ごされていました。私もよくそこに交ぜてもらっていたんです(笑)。西畑くんは朝イチだと、寝癖がすごいんですよ。朝が弱いのかも」と教えてくれた。

◼︎“イマジョ”の正体とは…貞子と伽椰子との違いを分析

 もともとホラー好きの山本。「昔から妖精や魔法など非科学的なものが好きで、(ミステリー・マガジンの)『ムー』も読んでいました。
お化けもいるのかもしれない、妖精だっているのかもしれないと、“非科学的なものが存在するかもしれない”という可能性を感じられるとワクワクする」という。

 本作には、“赤い女”=“イマジョ”という怨霊が登場する。ホラーアイコンが激突することで話題となった2016年の映画『貞子vs伽椰子』に主演した山本は、彼女たちの恐ろしさも身をもって体験してきた。そんな山本が感じた、“イマジョ”の魅力とは?

 「山本美月的には、貞子と伽椰子は、もう顔なじみの人。“知っている人”という感覚なんです」と楽しそうに目尻を下げ、「貞子と伽椰子についてはこんな経験をしてきたとか、こんな苦労があったなど、それぞれのいろいろなことを知っている。でも“イマジョ”って、“なんだかわからないもの”というところがものすごく怖かった」と未知な存在であることに震えたという。
「目を背けたくなるようなバックボーンがあったり、水に濡れた髪の毛など見た目もとても恐ろしい。現場では、スタッフさんたちが直前までどのようなものが襲ってくるのかわからないように俳優部に配慮をしてくださっていたこともあり、ホラー描写のシーンでは私も本気で怖がっていました。リアルな恐怖の表情が映し出されていると思います」と新たな恐怖に出会ってほしいとアピール。

 さらに山本は、ホラーの撮影現場も大好きだと話す。「ホラーの現場は、美術部やホラー部の皆さんもみんな夢中になって、楽しんで作っている感じが伝わってきてとても好きなんです。“イマジョ”の動き方や倒れ方についても、みんなでアイデアを出しながら(祷)キララちゃんが一生懸命に演じていました。
清水監督の現場は、とても穏やかなんですよ。ホラーの現場って楽しいなと改めて実感しました」。

◼︎30代に突入して感じた変化 結婚して「安心できる場所ができた」

 2011年にドラマデビューを果たし、活躍の場を広げながら現在31歳となった山本。春頃には出産して母となるなど、ライフステージも変化した。結婚して「家に帰ると、絶対的な味方がいてくれる。安心できる場所ができた」そうで、「夫は怪談話やホラー映画も大好き。
一緒にホラー映画を観たりもします」とにっこり。

 30代に突入して最も変化したと感じているのは、「人間関係を少し整理したこと」だと明かす。「『行きたくないな』と気持ちが乗らないような場所には、行かなくなりましたね。自分にとって何が必要なのか、何が合っているのかを確かめるためにも、10代、20代は色々な人に会って、色々な場所に行くことが必要だったと思います。『30代を迎えると楽になる』という話を聞いたこともありますが、私も自分の本当に大事にしたいものが見えてきた今、『こういうことなのかな?』と感じています」としみじみ。

 それは「お仕事も同じで、10代、20代は自分の向き、不向きもわからず、とにかくガムシャラでした。自分の気持ちをうまく伝えられず、難しいなと思うこともあった」ともがいた時期を振り返りながら、「今実感しているのは、『どんなお仕事をするか』ということもそうだけれど、『誰とお仕事をするか』ということがとても大事なんだということ。結局すべては人とのつながりが大切で、言われたままにやるのではなく、自分の意見も出しながら、打ち合わせや信頼を重ねていくことが大事なのかなと思っています」とまっすぐな瞳を見せる。

 続けて「MC業には苦手意識があったんですが、『趣味の園芸』(NHK Eテレ)という番組をやらせていただいたときにものすごく楽しかったんです。新しいことにチャレンジすると、発見もありますね。10代、20代のようになにも知らないままポンと飛び込むのは少し怖くなってしまいましたが、用心しながら、これからも新しいことにも挑戦していきたいです」と宣言していた。(取材・文:成田おり枝 写真:松林満美)

 映画『忌怪島/きかいじま』は、6月16日より全国公開。