どんな役にも人間味を与え、見る者を強烈に惹きつける女優・伊藤沙莉。芸能生活20周年、20代のラストイヤーという節目を迎えた今年は、映画やドラマ、舞台にと引っ張りだこ。
【写真】親しみやすい笑顔が魅力 伊藤沙莉、かわいさあふれる撮り下ろしショット
◼︎織田裕二のチャレンジ精神から刺激を受ける日々
伊藤と織田が凸凹バディを演じる本作。強制執行によって財産、金品などを差し押さえたりする仕事である“執行官”の世界に飛び込んだ主人公の吉野ひかり(伊藤)が、犬担当の執行補助者としてさまざまな事件と関わり、その人たちの人生のリスタートを手助けしていく姿を描く。
ゴールデン帯ドラマ初主演という大役が舞い込み、「そんな場所にいられる自分は、あまり想像がついていませんでした。本当にありがたいです」と声を弾ませた伊藤。“執行官”という耳慣れない職業を描く本作だが、彼女自身「執行官という職業を知らなかった」という。
「本作を通して執行官という職業を知りました。ものすごく重要な役割を担うお仕事で、こういった方たちがいることで社会が成り立っているんだなと思うことがたくさんありました。“司法最後の砦”とも言われている職業ですが、知っていくうちにどんどん『執行官ってかっこいいな、魅力的だな』と感じるようになりました」と新しい発見も多かった様子で、「リーガルドラマでありつつ、人生のリスタートを描く人間ドラマとして楽しめる作品。毎話登場する犬たちも、すごく癒やしになると思います」と笑顔を見せる。
ひかりのバディとなる執行官の小原樹を、織田裕二が演じる。「私の母と叔母が織田さんの大ファンで、織田さんが出演されているドラマはほとんど観ていました」という伊藤は、「絶対的なスターというイメージがありましたし、だからこその怖さもありました。怒られたらどうしようと思ったり、すごく緊張しました!」と織田との共演の感想を吐露。
ところが脚本の読み合わせで対面した織田は、なんともフランクな人だったのだとか。伊藤は「初めてお会いした時に、織田さんが『なんだか犬みたいだね』と話しかけてくださって」と笑いながら、「そこで一気に、話しかけて大丈夫な方だってホッとして。初日から話しかけられたのは、自分としても珍しいことなんです。織田さんがそういう空気を作ってくださったおかげ」と感謝しきりだ。
撮影では、織田から刺激を受けることばかりだと話す。「織田さんは『こうやってみたらどうだろう』とたくさん提案をされる方。チャレンジ精神を持って、いろいろなトライをされるんです。そこについていくことで、自分が思い描いていたプランとはまったく違うところに連れて行ってもらえたりもする。本当に頼もしいです」と熱を込め、「織田さん演じる小原さんは、ひかりにとってかっこいい背中を見せてくれる存在。
「織田さんは、どんなことを聞いても嫌な顔をせずにいろいろなことを教えてくれるんです。『本当に(『踊る大捜査線』では)レインボーブリッジで撮影したんですか?』とか貴重な話をたくさん聞いちゃいました。現場に行くのが、毎回楽しみでした」と現場の雰囲気にも背中を押され、充実の時間を過ごしている。
◼︎飛躍の鍵は“傾聴力”
Sexy Zoneの中島健人が、執行官室で働く頼れる事務員・栗橋祐介役に扮している。伊藤が中島と共演するのは、『スクラップ・ティーチャー~教師再生~』(2008)、『大切なことはすべて君が教えてくれた』(2011)に続いて3回目のことだ。
伊藤は「あんなにずっと王子様でいられる人っているんだなと驚きました。私が後ろを歩いていても、部屋に入る前には『どうぞ』と扉を開けてくれる。一周回って『ふざけているの!?』と思うくらいジェントルマン(笑)」「健人くんとは、私が13歳くらいの頃からご一緒していて。『幼なじみみたいだね』と話すこともあります」と告白。「健人くんは、以前よりさらに懐の大きな人になったなと感じています。私がお芝居で悩んでいると、その空気を察知して『大丈夫?』と楽屋まで聞きに来てくださったりする。
“幼なじみ”と表現した中島をはじめ、たくさんの出会いを重ねながら、今年芸能生活20周年を迎えた伊藤。2024年前期のNHK 連続テレビ小説『虎に翼』ではヒロインとなる日本初の女性弁護士を演じることも決定しており、まさにノリに乗っている。飛躍を遂げる上で、欠かせなかったと思うのはどのようなことだろうか?
「とにかく人の話を聞くことは大事にしてきました」と切り出した伊藤は、「人の意見を取り入れないと、凝り固まって『自分が正義』みたいな考え方になってしまう。それは結果、とてもつまらないことになると思うんです。誰かの発言で『どういうことだろう?』と感じるようなことがあっても、そのいい部分を見つけて自分の中に落とし込めば、新しい境地が見えてくることもあるはず。仕事だけではなく、一人の人間として生きる上でも『人の話を聞く』というのはとても大事なことだと思っています」と相手の気持ちに耳を傾けながら、歩みを進めてきた。
シリアスからコメディまでどんな役柄でも人間味を与えてしまう、伊藤の役者力の秘密もその“傾聴力”にあるのかもしれない。「人間って、本当に誰一人として同じ人はいないですよね。私は『これってどう思う?』と意見を交わすのも好きですが、そうすると『こういう考え方の人もいるんだ』と思ったりして、とても面白い。『この役は、あの人っぽいな』『あの発言をした人に似ているかもしれない』と考えることもできる。人間って面白いなと思います」。
◼︎劣等感や悔しさを感じた時期は、とても大切なもの 30代は「もう少し余裕が欲しい」
芸能生活20年の歩みの中では、オーディションに落ち続けた過去もある。「当時の前に進むための材料は、劣等感や悔しさだった」そうで、「これは絶対に必要な時期でした」と伊藤。そういった原動力に変化もあったといい、「今は、家族に褒められたり、作品を観てくださった方に『面白かった』と言ってもらえる瞬間が、一番の原動力になります。うちの家族は、言いたいことをバンバンいう家族で。家族に『同じような役をやっていたな』と言われたくないので、『新しいものを見せなければいけない』というミッションもあります。家族を喜ばせて、納得させたい」と語る。
“人生のリスタート”がテーマとなる本作だが、伊藤の持論は「転機は何度も訪れる」ということ。2005年のドラマ『女王の教室』で共演した天海祐希から「気を抜かずにお芝居をしていれば、絶対に誰かが見つけてくれる」と声をかけられたことは、「今でも心がけていること。天海さんとの出会いは、大きな転機」だというが、「今いるのは到底、自分の力で辿り着ける場所じゃない。出会った人がすべて、私を転機に導いてくれた」と感謝をあふれさせる。
伊藤は来年5月の誕生日で、30代に突入する。「『いよいよ大人だな』という感じがしています。
ドラマ『シッコウ!!~犬と私と執行官~』は、テレビ朝日系にて7月4日より毎週火曜21時放送(初回拡大スペシャル)。