M-1グランプリ王者であり、コントも一流で、丁々発止のトークもいける――。お笑いコンビサンドウィッチマン伊達みきお富澤たけし)を短いセンテンスで表現するならばこうなるだろう。
生存競争の厳しいお笑い界で安定した活躍を見せる彼らが、多忙な日々の中で6年前からライフワークにしているのが、単独ライブツアーだ。2012年は東京、大阪、広島、札幌、仙台、福島、名古屋と全国7箇所、13公演を敢行。そんな白熱の爆笑ツアーの火蓋が切って落とされた東京公演の模様を完全収録したDVD「サンドウィッチマン2012年単独ライブ~サンドウィッチマンライブツアー2012~」が発売される。

単独ライブツアーへの熱い思いを語るサンドウィッチマン

 「2012年ツアーは規模も大きくなり、初めての場所もありました。特に福島は被災地から避難されている方々に来ていただいて、凄くやり甲斐がありましたね」と振り返る伊達。富澤も「初めての場所でも、お客さんに沢山来ていただけた」と手応えを感じている。収録されている漫才、およびコントはオール新ネタ。伊達は「テレビの場合はスポンサーに考慮したり、言葉のチョイスを考えたり、老若男女に受け入れられるように作らねばならず、自分達がやりたいネタをやるに制限がかかる部分がある。単独ライブの場合は「自分達のやりたいネタやスタイルをそのまま見せる事が出来る」とライブツアーの意義を語る。

 だからこそ、今回のDVDにはサンドウィッチマンの本質が濃縮されているといえる。だが「好きなことをやる」ことが観客にウケるとは限らない。しかし伊達は「好きなことをやるのは確かにバクチです。
今回の単独の最初のネタの一番最初のツッコミが『坂本一生か!』なんかは大バクチ。そこで『?』になるお客さんは最後までついて来られないでしょう。でもこれが僕ら。だからテレビの僕らを知って、今回のDVDを手にとって衝撃を受ける方もいるはず」と敢えて勝負をかける。ブレイクすると時間的な余裕が失われ、ネタから離れる芸人も多い。そんな中で大衆におもねることなく、自分を見失わず、ブレることがない。サンドウィッチマンの硬派な魅力はここにあるのかもしれない。

 また今回のDVDには新たな試みがある。それはネタの字幕対応機能だ。発案したのは伊達。知人に耳の不自由な子がいて、そういう子達には娯楽が少ないことを知ったのがきっかけだ。伊達は「テンポの速いネタも多いので、どう見えるかわからないけれど一度見ていただきたいですね。
これが彼らにとっての娯楽の一つになれば嬉しい」と期待を込める。富澤は「その子が果たして『坂本一生』を理解できるのかという最大の問題がある」とコアネタに不安を抱えているが「ほぼ一語一句字幕化しているのでそういう方達だけでなく、僕らのネタを真似したい学生の参考にも一役買うはず」と広い活用方法を提案する。 M-1グランプリを獲得した2007年から毎年欠かさず行っている単独ライブツアーだが2人は、その2年前の2005年に出演した日本テレビ系「エンタの神様」が運命の分かれ道だったと口を揃える。富澤は「2005年は2人とも30歳になった年で、テレビでネタが出来なかったらお笑いを辞めようと思っていた時期でしたから…」と振り返る。伊達も「2005年以前が自分たちにとって辛い時代。とある営業では300人キャパの会場に観客が3人しかおらず、面接状態でネタ見せをしたこともある」と苦い思い出を述懐する。

 雑誌の付録用DVDのために、体を張った風俗店リポートもこなした。「上京したときは、裸の仕事だけはやらないと心に決めていたので、これをしなければいけないのかとの葛藤もありました。あの時代には二度と戻りたくないですね」と富澤。それでもくじけなかったのは「俺のやりたいことはこれじゃない」という確固たる信念があったから。だが「そんな仕事さえもらえない芸人は星の数ほどいる」と伊達が言うように、恵まれていたコンビだったのかもしれない。

 苦節を乗り越え、見事ブレイク。
そして結成15年目を迎える。結婚し、それぞれ一児の父親にもなった。子供が芸人の道を志したら?との問いに伊達は「うちは女の子なので、芸人になりたいと言ったら全力で阻止します。女芸人は苦労しますからね」と苦笑い。富澤は「父親が漫才で日本一を獲っているから、芸人になるとしたら相当なプレッシャー。世界を獲れる自信があるのならば、頑張れよと背中を押しますけどね」と世襲に含み。昨年は充実した1年だったという2人に、将来のビジョンを聞くと「寝ているだけでお金が入ってくるのが理想なので、そんなシステムをいつか見つけていきたい」という富澤を取り成しながら、伊達は「ネタ番組に常に呼ばれる芸人でありつづけたい。毎年単独ライブツアーも出来れば嬉しいですね」と舞台への熱い思いを語った。

 DVD「サンドウィッチマン2012年単独ライブ~サンドウィッチマンライブツアー2012~」は2月6日発売(発売・販売:エイベックス・マーケティング)
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