現在放送中のテレビ東京ほかの深夜ドラマ『ノーコン・キッド~ぼくらのゲーム史~』で、連ドラ単独初主演を果たした田中圭に、“初座長”を務める意気込みやゲームに対する思い出などを聞いた。

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 父親の雅史(佐藤二朗)が経営するゲームセンターわたなべで嫌々店番をするノンポリ高校生の渡辺礼治(田中圭)は、店の常連客であるゲーム“おたく”の木戸明信(浜野謙太)やミステリアスな美少女の高野文美(波瑠)と仲良くなったことにより、ゲームの世界に興味を持つようになる。
まだその存在が社会から公認されたとは言いがたい黎明期のゲームセンターを舞台に、ゲームと出会い、人生の様々な壁にぶつかり、悩み喜びながら成長していく3人の姿を描いたユニークな物語は、放送後様々な世代から反響を呼んでいる。

 2000年にゲームのCMでデビューした田中は1984年生まれ。身の回りにはテレビゲームが当たり前のように存在する世代だ。「小学生の頃は越境通学をしていたので、地元に友達がいませんでした。だから、地元で一番仲が良かったのはゲーセンのおやじ、『ノーコン・キッド』で言えば「ゲームセンターわたなべ」店主の佐藤二朗さんのような人でしたね。だから、『ノーコン・キッド』の世界には、共感できる部分がありました。昔のゲームセンターは憩いの場でしたが、大きくなるにつれて1人で行くことが恥ずかしくなってからはあまり行かなくなりました。でも、そうなると家でスーパーファミコンや、プレイステーション、セガサターンを。このドラマの撮影現場にいろいろなゲーム機のソフトがありましたが、これメッチャやっていた!とか、懐かしい!というゲームがすごくいっぱいありました」と、自らのゲーム歴を振り返る。

 「懐かしいところでは、『バーチャファイター2』『スーパーマリオ』『ファイナルファイト』とか。高校生になってからは『ファイナルファンタジー』シリーズとか『ドラクエ』。『龍が如く』が出た時にはすごくハマりましたね」と、好きなタイトルが次々と。
「ここ数年はゲームをやっていなかったのですが、『ノーコン・キッド』への出演が決まったのでPS Vitaと『ドラゴンズクラウン』というアクションRPG、『ワンピース 海賊無双』を買いました。僕は『ONE PIECE』が大好きなのですが、『海賊無双』は(『ONE PIECE』の原作者の)尾田栄一郎さんが全部監修しているオリジナルストーリーで、ハマってしまいましたね。それから、WiFiを繋いで、初めてオンラインゲームをやったんですよ。初めてだったのですごくドキドキしました」と、ゲーム話は尽きない。 多くの作品で活躍してきた田中だが、意外なことに連ドラの単独主演は本作が初めて。初座長としての意気込みを聞くと、「主演でも脇でも、その役を全力でやるということは同じ。いつもどうしたら作品が面白くなるだろうかと考えていたのであまり意気込んでいなかったのですが、実際に撮影に入ると、主演の大切さを皆さんから教えられました」と、心境にも変化が。「今までは主人公との対比でどのように見せようかとか、自分がこうすることで主演の方がどのように輝くのかとか、そういうことばかり考えて芝居をしていましたが、今回はゴールを決めるのが自分だと思い始めてからは、ちょっとしたプレッシャーを感じました。でも、スタッフやキャストからは、決めろよ!とプレッシャーをかけられることはなかったので、皆さんの優しさが伝わりました。こんな人たちの中で主役をやらせてもらい、本当に良い経験が出来ました」。本作が、役者として一回り成長するきっかけとなったことを伺わせる。

 エッジの効いた作風で定評のあるのが、テレ東の深夜ドラマ。
今回も、個性的な役者たちに加え、脚本や演出には鈴村展弘、冨永昌敬、沖田修一、石山英憲、上田誠など映画や舞台で活躍する俊英たちが揃っている。「まず、監督が5人いることと、脚本家も5人いること。脚本が変われば作品のテイストも変わりますが、その上に監督も違う。毎回別のドラマを撮っているのでは?と思うほどガラリと雰囲気が変わります。監督によっては(時間が)巻く人もいれば、めちゃめちゃ押すという人もいるし。撮り方も違うので、見ている人たちが突然の変化に戸惑うのでは?と思うぐらい、新鮮なインパクトを与えられる全12話になりました。全編を通して『ノーコン・キッド』というひとつの作品として作りました」と、独特な撮影スタイルにもポジティブに向かい合った。

 キャスト同士も、撮影の合間に現場のゲーム機で遊んでコミュニケーションを深めたとか。ちなみにそれぞれのお手並みを聞くと、「一番強いのは、ダントツで僕です。一番弱いのはハマケン(浜野謙太)ですね」と、役柄とは真逆の答えが。「第1話の最後のシーンで、礼治が『俺が(木戸のハンドルネーム)KIDだ!』と言って木戸と喧嘩をするのですが、カメラが止まった時には『本当に、そろそろKIDを辞めた方が良いんじゃないの?』と言ったりして、いじっていました(笑)」。ちなみに他の2人は、「(佐藤)二朗さんは基本適当。
早く終わって早く飲みに行く事しか考えていないので、あまりゲームの話はしていないです(笑)。波瑠ちゃんはあまり自分からゲームをやったりしないのですが、僕やハマケンがゲームをやっているのを後ろから見ていて、『うぁ、すごい!』『今の何?これ?』『上手い!』とか、すごく分かりやすくてギャラリーとして100点満点でした」。話を聞いているだけで、現場の楽しそうな雰囲気が伝わってくる。

 「懐かしいゲームや、本当にゲームをやり込んでいた人にしか分からないコアなネタもいっぱい出て来ます。ゲームの画像と登場人物がシンクロして、芝居と一緒にゲームの画像が映る映像が斬新ですね。ゲーム好きの方はもちろん楽しめると思いますが、礼治・木戸・高野の3人が15才から45才までの30年を経て成長していく人間ドラマもしっかり描かれているので、ドラマ好きの方にもお勧めできる作品になりました。深夜だからこそ出来る面白さに加え、深夜ではなくても通用するきちっとした部分も良い感じで出来ているような気がします。第1話から全12話を通じて礼治たちと一緒に時代を追っていくと、本当にこの3人を愛しく感じたり、応援したい気持ちになってくると思います。放送時間は遅いですが、見ていただいた皆さんには、必死で面白いものを作ろうとしている人たちがまだまだいることに気づいてほしいですね」と、あらためてPRする田中。8月から始まった撮影は、9月中には無事終了。猛暑の中に撮影しただけに、文字通り作り手の熱い意気込みが伝わる秀作が出来たようだ。(取材・文・写真:平井景)

 『ノーコン・キッド~ぼくらのゲーム史~』は、テレビ東京ほかにて毎週金曜24時52分より放送中。
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