先ごろ、21歳を迎えたばかりの野村周平。ドラマデビューは2010年、映画デビューは2011年と、キャリアこそ長くないが、すでに多くの作品で経験を積んでおり、若手演技派としての呼び声が高まっている。
そんな野村が、新たな顔を見せているのが青春ロックムービー『日々ロック』。裸でエレキギターをかき鳴らし、思いのたけをロックンロールに乗せてぶつける主人公・日々沼拓郎に対し、野村は「演じたのではなく拓郎になっていた」と言い切った。

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 原作は榎屋克優による人気ロック漫画。『SR サイタマノラッパー』シリーズなどの入江悠が監督し、ヒロインに二階堂ふみを迎えた本作で、野村はダサくてモテない、でもロックに対する情熱だけは負けない拓郎役で、ハイテンションに突っ走る。

 これまで音楽にはほぼ接してこなかったという野村。クランクインまでの約4ヵ月は、歌とギターの練習に明け暮れた。
「やっぱり演奏シーンでの拓郎の豹変ぶりを一番に出せたらと思っていましたから。普段の冴えない拓郎と、ロックに没入しまくるライブシーンでの拓郎。イチからのスタートでしたが、エレキギターもやってみたらおもしろくて。原作で拓郎がエレキをアンプに繋いでかき鳴らしたときの、ブオ~ン、ジャ~ン、うぉ~!って感じが、すごく分かりました(笑)」。イン前の役作りは、髪型にも及んだ。

 「それまで髪の毛をいじったことがなかったんです。
カラーをあてたりもしたことがなかったですし。それがイキナリのアフロ(笑)。でもやってみてすごく新鮮でしたし、自信が持てました。こういう髪型もやれるんだ!って(笑)」。 人気アイドルの咲(二階堂)と運命ともいうべき出会いを果たした拓郎は、誰かのために曲を書くことを知る。「拓郎と咲の場合は、状況が状況なので比べることはできませんけど、でも、誰かのために一生懸命になったり、誰かのために何かをしてあげたり、自分の好きなもので相手を助けてあげたいという気持ちは共感できます」と明かした野村。
だが同時に、本作において拓郎へ抱いたのは“共感”とはまた違う思いだったとも。

 「感情移入というよりも、撮影していた期間はずっと拓郎だった気がするんです。ただ拓郎を生きていたというか。普段は僕自身に戻るんですが、今回は3週間で撮りきったこともあって、プライベートな時間が取れなくて。要は野村に戻る時間がなかった(笑)。でもそれが功を奏してずっと集中していられたというか、拓郎になれたんです」。


 拓郎として、本作で弾けきった野村。「自分のシーンでは満足いっていないところもありますけど」と前置きした上で、「さすがにちょっとだけ、その(弾けきった)実感はあります」と照れ笑いを浮かべた。特に2日にわたり撮影したという雨の中での屋上ライブパフォーマンスには、拓郎たちの“本気”が画面からはっきりと伝わってくる。

 「恋愛から殺人鬼まで何でもできる俳優になりたい」という野村。その目標は決して高くはない。だがまずは拓郎の情熱に触れるのが先だ。
(取材・文・写真:望月ふみ)

 『日々ロック』は11月22日より全国ロードショー。