「この仕事はきちんとした意識を持っておかないと、いくらでもフワフワできてしまう」と、インタビュー中にポツリと口にした桐山漣。仮面ライダーを経て、華々しく役者として歩みを進めてきたように思うも、「20代の自分、甘っちょろかったです」と、その“フワフワ”という言葉を自身に投じて厳しく振り返る。
苦悩と葛藤の末、着実に俳優道を進んでいる桐山の、現在30歳になった自分の姿、ひと皮むけたその素顔に迫った。

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 桐山が2016年最初に対峙した作品は、今年早々に始まる新ドラマ『傘をもたない蟻たちは』(フジテレビ系)。アイドルグループ・NEWSの加藤シゲアキが執筆した同名小説を映像化した作品で、加藤自身も出演する。その中で、桐山は加藤演じる村田の幼馴染であり、主役の若手小説家・橋本純を演じる。純は、世界の不条理をテーマにした“SF”しか書いたことがなく、連載終了後は2年も単行本を出していない。貯金を切り崩し生活をしてる純に、ある日仕事の依頼が舞い込むが…。


 本作について、“原作者が現場に遊びに来ました”はよくある構図だが“原作者としっかり共演しています”というのは、非常に珍しい景色ではないだろうか。桐山も「なかなか体験できないことですよね。しかもフジテレビで初めて主演をさせていただきますし、僕にとっては一度で二度貴重な体験をさせてもらいました」と襟を正した。 加藤と一緒の撮影日は2日間。桐山は加藤に会う前、「やっぱり原作者ですし、『明日会うのか…』という、ちょっとだけ腰が重たい感じはありました」と前置きするも、今ではお互いを「シゲちゃん」「レンちゃん」と呼び合う仲だと話す。桐山は、「今日は加藤さんと呼びますが(笑)、加藤さんはすごくクールな方なのかなと思っていたら、本当に物腰が柔らかいし、同世代っていうこともあってすごく話が弾んで。
『俺、シゲちゃんと呼ぶわ』『俺、レンちゃんて呼ぶよ』とか言い合いました(笑)。撮影がタイトなので行けてないですけど、飲みに行きたいですね」と、かなり打ち解けた様子。

 今回演じる小説家の役について、桐山は「ひとつのものを自分の中から生み出すという作業は、俳優もひとつの役と向き合うので分かる気がします。特に、作家が自分の内と向き合ってもがいているところは、自分も役者としてもがいている部分があるから共感するんです」と思いを馳せた。さらには、「いつも心がけているのは自分にしかできないお芝居をしよう、自分の芝居をちゃんとやろうということです。20代の仕事はじめの頃とか、目先のことばかりで周りが見えていなかったので」と苦笑い。


 だが、今やその芝居へのひたむきな姿勢が、主演という形に結びついている。桐山は、「今は、きちんと現場の空気を読んだり、周りにいろいろと目を配るように心がけています。いろんな経験をしてきたからこそ、余計なことに目がくらまないようになったのかもしれません。30歳になってみて、自分のことを客観視できるようになりました。ある種、ひとつ余裕が出てきた部分と、失敗が許されない、後がなくなったなと思う部分があります。まだ若手俳優ですけど、新人とされる部分からひとつ抜け出すための時期なのかなと考えています」と、奮い立たせていた。
自己の中で燃やす静かな闘志が、彼をますます滾らせている。(取材・文:赤山恭子)

 土ドラ『傘をもたない蟻たちは』 は、フジテレビ系にて2016年1月9日より毎週土曜23時40分放送。