田中圭主演おっさん同士の恋愛ドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系/土曜23時15分放送)が話題だ。4月28日放送分の第2話では、主人公・春田(田中圭)に思いを寄せる剛腕の乙女部長・黒澤(吉田鋼太郎)と同居人で後輩の牧(林遣都)がバトルを繰り広げ、早くも三角関係が盛り上がってきた。
そんな春田をめぐる男同士の熾烈なバトルのすぐ傍らで、春田の失敗を叱責したり、相談を持ち掛けられたりしている上司・武川を演じているのが、眞島秀和である。

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 この顔を見た瞬間に、「あ、わたるん!」と思った人は多数いるだろう。

 前クール放送のドラマ『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)では、主演の深田恭子、松山ケンイチ夫妻が住む「コーポラティブハウス」の住人で、北村匠海演じる青木朔と交際している広瀬渉を演じていた。自分がゲイであることをオープンにしている恋人・朔と違い、ゲイであることを知られたくない、触れられたくないと考えてきた渉。

 それぞれに考え方も、抱えているものも異なるが、この二人が一緒にいるときのあまりに自然な空気感には、本当のカップルを見ているような錯覚が湧いた人も多いのではないだろうか。特に、渉が朔を見るときの優しく幸せそうな目は、深い愛情に包まれていて、ちょっと演技には見えないほどだった。

 それだけに、『となかぞ』を見ていた視聴者は、おそらくその感情をいまだに引きずってしまい、『おっさんずラブ』でも「四角関係? それとも別の相手と?」と、勝手に恋のバトルへの参戦を期待してしまったのではないか。第2話までの段階では、その気配はないが…。

 ところで、様々なドラマや映画などで活躍する「名バイプレイヤー」と呼ばれる人たちの中でも、眞島は、なぜか刑事や記者、編集者、医者、仕事のできる上司など、インテリ系や専門職の男性役を演じることが多い。長身のスラリとした体型と姿勢の良さ、涼し気な切れ長の目が醸し出す雰囲気のせいだろうか。

 眞島の演技の出発点は、学生時代。自主制作で「撮る」側の立場からスタートし、2001年公開の映画『青~chong~』で初主演を果たす。
『フラガール』の李相日監督が日本映画学校の卒業制作として撮った作品で、在日朝鮮人役を演じた。キャリアは長いが、俳優を本格的に仕事としてやっていこうと決意したのは、30歳の時。NHKスペシャルドラマ『海峡』において、敗戦当時の日本で、日本人女性と恋に落ちる元憲兵の朝鮮人を演じ、これが高い評価を受けた。 さらにお茶の間でその顔を広く知られるようになった転機は、朝ドラ『ゲゲゲの女房』(2010年)。主人公・村井茂(向井理)の才能を発掘してくれた情熱的な漫画編集者・豊川悟を爽やかに演じ、話題を呼んだ。男ばかりのむさくるしい編集部で、ランニングが透けて見える白いワイシャツ姿に汗をにじませ、汗をにじませながら仕事する「デキる男」ぶりは、まるで「掃き溜めに鶴?」のようだった。極貧生活にある主人公の才能を発掘してくれ、育ててくれる頼もしい存在という役どころも加わって、「Yシャツ姿の白馬の王子様」のようでもあった。

 かと思えば、「変人」「変態」など、危険な役もよく似合う。深夜ドラマ『変身インタビュアーの憂鬱』(2013年)では、町ぐるみで殺人を隠し続ける閉鎖された町の殺人犯を、変態度満点に怪演。長瀬智也『クロコーチ』(2013年)では裏組織の創設者を演じ、月9『失恋ショコラティエ』(2014年放送)では石原さとみ演じる小悪魔的美女・紗絵子のDV夫として話題を呼んだ。

 昼ドラ『シンデレラデート』(2014年)などは、風変わりな恋愛ドラマだったが、ヒロインの不倫相手役でエキセントリックな展開を説得力十分に見せてくれた。ちなみに、『アリスの棘』(2014年)でヒロイン(上野樹里)の父で突然倒れ、手術の末に急死してしまう医師、『緊急取調室』でヒロイン(天海祐希)の亡き夫で正義感溢れる刑事など、薄幸な役も多数こなす。


 役柄という衣装を着替えるように、一見スマートでクールに見える切れ長の目が、ときに優しく、時に怪しく、ときに情熱的にと、様々な色をまとう。その意味深な目ヂカラは、何かが起こりそうなワクワク感を与えてくれるのだ。(文:田幸和歌子)
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