【写真】山口紗弥加、『ブラックスキャンダル』インタビューフォト
“主演”という立場について「私と同じ仕事をしている人なら、きっと誰もが目指している場所で、特別な時間」と表現した山口。オファーを受けたときは「すごくうれしかった」と振り返ったが、正直実感が湧かず素直に喜べなかったという。しかし周囲から「おめでとう」という言葉を数多くかけられ、期待の大きさを感じるとともに「しっかり務めを果たさなければ」と意を決した。
番手の違いによって役に入る心持ちが変わることはないと話していた山口だが、脚本の決定稿前から、プロデューサーと綿密な打ち合わせをしたり、役柄について話したりすることは、初めての経験だったようで「これが主演というものか」と実感し、想像していたよりも「大変だ」と思ったという。
オンエアが開始されるときには、芸能生活も25年目に差し掛かるという山口。これまで出演してきたドラマは60本以上にも及ぶが、長く続けてきた秘訣について「演技が上手くなりたい」という一心だったという。
「本当に下手でどうしようもなかったんです。例えば、蜷川幸雄さんや野田秀樹さんの舞台に出演させていただいたことがありますが、散々ダメ出しされ、稽古場では“ひとり千本ノック”状態で、偉大な先輩方をひたすらお待たせするという…もう、地獄ですよ(笑)。認めてもらえない悔しさから、上手くなりたい! なるのだ! と、自身を奮い立たせました。正直に言えば、上手い下手ではなく、見る人の心を揺さぶるような芝居がしたい。この思いで続けてきた25年でした」。
出演時間の長短に関わらず、作品に強い余韻を残す芝居を見せる山口だけに「芝居が下手」という自己評価には驚きだが、いまでも「もっともっと」というポジティブな向上心はまったく変わっていないという。
そんな山口でも、20~23歳ぐらいのころは「しんどくてやめようと思った」というぐらい追い込まれていたと告白。その理由について、「全部自業自得なんですけれど」と前置きすると「女優を目指してこの世界に入ったのに、バラエティなど違う分野にまで足を踏み入れてしまって、自ら迷子になっていました。その時期、体調も崩してしまい、なにひとつ思うようにいかなかった」と当時を振り返る。
それでも女優業を続けてきたのは、どんなにダメ出しをされても「もっと上手くなりたい」と思える気持ち、すなわち“好き”ということに他ならない。「日々、新しく。少しずつでも前進したい。女優として、かけがえのない存在になりたい」と誠実に向き合う気持ちは消えなかったという。 “謝罪会見”から発想を得た芸能界にまつわる壮絶な復讐劇を描いた『ブラックスキャンダル』。主人公は、ねつ造された偽りのスキャンダルによってすべての地位を失った元トップ女優。その後、整形して矢神亜梨沙という別人になりすまし、自分が女優として所属していた事務所のマネージャーとして潜入、自らを陥れたゲス達に復讐することを誓うという壮絶なストーリーだが、山口は亜梨沙を演じる。
「脚色され、ファンタジーな部分もありますが、私自身が、長年身を置いている芸能界のお話。
本作では、芸能界の暗部が描かれているが「私たちの仕事は、作品を観ていただいた方たちに、すこしでもハッピーだったり明るい気持ちになってもらうことが一番で、何よりだと思っています。私自身25年間、コツコツ型でやってきて、ここで初めて連ドラ主演というご褒美をいただいたように、懸命に夢を追いかけ続けていれば、いつかきっと報われる世界でもあります」と芸能界の“夢”の部分にも注目してほしいと力説していた。
「『ブラックスキャンダル』の先のことは分かりません。ただ、台本を読んで、胸のあたりを引っ掻かれたような、ひりひり痛い思いがしました。私はこの役に出会うために頑張ってきたんだと信じたい」と語った山口。この役に全力を注ぐと目を輝かせていた彼女の演技を一日でも早く観たいと思っている人は、多いのではないだろうか。(取材・文・写真:磯部正和)
木曜ドラマF『ブラックスキャンダル』は、読売テレビ・日本テレビ系にて10月4日より毎週木曜23時59分放送。