『孤独のグルメ』『きのう何食べた?』『忘却のサチコ』と、テレ東系深夜の“飯テロ”ドラマの系譜にこの秋新たな一作が加わった。女優の吉谷彩子と俳優の井之脇海がダブル主演を務める『ハルとアオのお弁当箱』(BSテレ東/毎週月曜24時)は、オタク女子とジェンダーレス男子の同居生活をお弁当をテーマに描く。

連ドラ主演は初めての吉谷、2回目の井之脇とフレッシュな2人に、本作への思いを聞いた。

【写真】実は大学の先輩・後輩の関係 取材中もほっこりした雰囲気の吉谷彩子&井之脇海

◆オファーに感じたそれぞれの不安

 まちたによる同名漫画を実写ドラマ化する本作は、オタク女子とジェンダーレス男子が、“お互いにお弁当を作り合う”というルールの同居生活の中で、お弁当を通した触れ合いにより前向きに生きていく姿を描くハートフルドラマ。

――本作が連ドラ初主演となる吉谷、ジェンダーレス男子に初挑戦する井之脇。それぞれオファー時には不安があったという。

吉谷:すごく緊張しました。自分が中心になって物語が始まっていくという感覚がどういう感覚か分からなかったので、果たして務まるのだろうかと、久々にネガティブな自分が出てきました。でも、原作を読ませていただいて、ハルちゃんという女の子がすごくかわいらしく、あったかいお話だったのでぜひやらせていただきたいと思いました。

 ハルちゃんはずぼらで、面倒くさがりで、私に似ているなとも感じました(笑)。おとなしいイメージの役が多いのですが、実は今までやってきた中で一番自分に近いキャラクターなんです。

 あと、私の母との物語にも似ていたので、母が喜ぶだろうなって。第2話に出てくる「鮭と枝豆の混ぜご飯」は、母がよく作ってくれた料理だったので、運命も感じました!

井之脇:初めはチャレンジな役だなと思いました。それはジェンダーの悩みを抱えているからというわけじゃなく、僕自身があまり向き合ってこなかった悩みを抱えている役だったので、そこをどれだけ想像できるか、すごく難しいなと感じました。
原作ではすごくすてきなアオさんを、どうイメージを崩さずに演じられるか不安でした。

 でも、衣装さん、メイクさんや多くのスタッフさんと打ち合わせを重ねていく中で、アオさんの人物像をみんなで作り上げることができ、今では演じていても1人で演じている感じがしないくらい楽しく撮影できています。@@separator◆同じ大学の先輩・後輩の関係だからこそ縮まった距離

――これまでさまざまな作品で、存在感を発揮してきた2人だが、主演ということで何か特別な思いはあるのだろうか?

吉谷:あまり変わらないですね。どんなにステップアップしていい役をいただいたとしても、人への尊敬や謙虚さは忘れたくないと思っているんです。今回も初めての主演だからといって気張ることをせず、いつもの自分でいられたらいいなと思っています。

井之脇:僕もほかの現場と向き合い方は大きく変わらないですね。必然的に役と向き合う時間が長くなったり、セリフ量が多いということはありますが、1シーン1シーン大切に向き合って気負わずにやっていきたいです。

――今回2人は初共演だが、同じ大学を卒業した先輩・後輩という共通点が。

井之脇:在籍時期はかぶっていないのですが、同じ先生にお世話になったりしているので、撮影中も思い出話をしたり、距離を縮めることができて良かったです。今回2人で主演を務めることも先生たちが喜んでくれているかもしれませんね。

吉谷:2人芝居みたいな部分もあるので、どれだけテンポよく掛け合いできるか、空き時間にセリフ合わせをしてもらったりしています。

井之脇:吉谷さんはいざお会いしてみると、無邪気な方と言えばいいんですかね(笑)。
天真爛漫な方でした。僕は初対面では距離を作りやすいほうなんですが、その距離や溝を全部埋められて、初日からたくさんお話ししてくださって助かってます(笑)。

吉谷:人見知りだって思わなくてごめんね(笑)。私は、なんてきれいなんだろうって思いました! 肌も白くて、手もきれいで。中身も本当に優しくてあったかくて素敵な人です。

◆その人の気持ちが表れるお弁当は「交換日記」

――作品の中で描かれるハルとアオの関係性には大切な思いを感じているそうだ。

井之脇:ハルちゃんとアオさんのように、プライベートで本音で語り合える関係は、すごくうらやましい。僕が求めているような関係を疑似体験できて幸せですね。

吉谷:2人で話したのですが、「大丈夫だよ」というセリフが私たち大好きなんです。ハルちゃんとアオさんはよく「大丈夫だよ」って言い合うんです。「大丈夫だよ」ってこんなに大切で、こんなにあったかいんだと改めて思いましたし、大事な言葉だなって感じました。

井之脇:今、コロナを経て、皆さん小さな幸せを求めているように思うんです。
この作品は小さな世界のお話で、劇的なことは何も起こらないですが、ハルちゃんとアオさんの関係にはそんな小さな幸せがぎゅっと詰まっているので、ぜひ多くの方に見ていただきたいですね。

吉谷:そうだね。ハルちゃんとアオさんにとって、お弁当箱は食べ物の交換日記みたいなところもあるんです。作るほうも食べるほうも、その人の気持ちがお弁当には表れる。「お弁当って2回うれしいんですね」というセリフも好きなんですが、お弁当って作ってる時と、お弁当箱が空で返って来た時の2回うれしい。そんなお弁当のコミュニケーションのような、見てくださる皆さんがあたたかい気持ちになれる、幸せが詰まった作品にしていきたいと思っています。(取材・文:編集部 写真:高野広美)

 『ハルとアオのお弁当箱』は、BSテレ東にて毎週月曜24時放送。

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