自分を陥れた者への復讐に命を燃やすマネージャー、ドSで毒舌だが心の底では周囲への優しさがあふれる放射線技師、大物俳優と結婚したクセが強めな元アイドル…。近年さまざまな作品で幅広い役柄を演じ、確かな存在感を発揮し続ける女優の山口紗弥加が次に挑むのは、マッチングアプリに出会うことで大きな転換期を迎える38歳の女性だ。
【写真】恋、仕事、人生の転換期を迎える38歳・等身大の女性を演じる山口紗弥加
◆この作品での目標は「さらけ出すこと」
『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』は、松本千秋による「コミックエッセイ大賞」入賞作をドラマ化。現代を生き抜く女性たちへの応援歌となるようなラブコメドラマを紡ぐ。山口が演じる松本チアキは、38歳のバツイチ独身イラストレーター。ひょんなことからマッチングアプリを始め、好奇心からいろいろなタイプの男性に出会う中で、新たな自分を発見していく。
「オファーを頂くまで、マッチングアプリというものを知らなかった」という山口。「体験してみたいなと思って登録しようとしたのですが、周囲に止められました」と笑うが、「マッチングアプリと聞いた時に“妖しく危険な香りがするもの”というイメージが一瞬頭をよぎりましたが、実際は、恋をする目的だけではなく、ビジネスや新しい何かが生まれていく、人とのご縁をつなぐものなんだという認識が今はあります」。
撮影はすでに終了したそうで「疲れました(笑)」と一言。「この作品に挑む前に決めたのは“さらけ出す”ということ。持っているものすべてを使い切る。体力を消耗していく感じがもろに出ていると思います」と話す。「この作品って、人の一生の数十年分を3ヵ月という短い期間にギュッと濃縮しているような作品。
◆恋愛相手は「ほったらかしにしてくれる人がいい」
チアキが出会う一癖も二癖もあるイケメンたちとのラブシーンも注目を集めるが、「さほど濃厚な描写ではないのですが、こんなに体力が必要なのか!と。本当に汗だくになって、こうしたらきれいに見えるんじゃないか、ここはこうしたら勢いがつくんじゃないかと相手の方と試行錯誤しました。ラブシーンって意外と滑稽だよね、美しいだけじゃないよねというところを目指したので、ほかの作品ではないような、ちょっと笑えるラブシーンになっていると思います」と自信を見せる。
ちなみに山口が恋愛相手に求めるものを尋ねると、「ほったらかしにしてくれる人がいいです。毎日連絡しなきゃいけないとかはちょっと難しくて、2週間でも1ヵ月でも連絡しなくて大丈夫な人…勝手な私を、首を長くして待っていてくれるような人がいいですね(笑)。あとは、ストレートに好きだという気持ちを表現してくれる男性だとうれしいです。チアキはきっと、ただ無邪気に愛し、愛されたかったんだろうなと。求められていると実感したくて、その瞬間だけでも愛されていると思いたくて、ひとときの幸せを探して…男性たちとの肌の触れ合いを求めていったんじゃないのかなと、解釈しています」。@@separator◆夢見続けた“中学の先輩”椎名林檎との“共演”
また、本作の主題歌が東京事変による「命の帳(とばり)」に決定したことも話題に。実は東京事変の椎名林檎は、山口の中学時代の1学年上の先輩にあたる。「夢のようです。
椎名からは「山口紗弥加氏は生まれながらのコメディエンヌ」というコメントが届けられたが、「“どのへんが?”という不思議な気持ちなんですが、そういえば、椎名先輩は私をいつもニコニコ見ていたような気も…(笑)。私のどこを見て先輩が笑っていたのかは分かりませんが、きっと抜けてるんでしょうね。すっとぼけなんです」と、念願の“共演”に喜びが止まらない様子だ。
◆演じるチアキは「38歳当時の私を見ているよう」
今年2月、山口は40歳を迎えた。今回演じる“38歳”という年齢を振り返ってみると、どんな印象があるのだろうか?
「個人的な感想としては、すごく微妙な年齢だったんです。もうアラフォーなんだけど、まだぎりぎり30代で、40代を迎える心構えもできていなければ、30代に何とかしがみつこうとしている自分もいて…。女性としての幸せだったり、仕事や家族についてを総評するというか、現在地というものを今一度見つめ直してみる年齢だと思うのですが、チアキ自身もまさにそう。チアキの言葉や思いがグサグサと私の心臓を突き刺していました(笑)。恐る恐る、怖がりながらもなんとか前進しようとしている38歳当時の私を見ているようで…。(撮影で)疲れ果てたというのはそういうところで、あまりにも役に没入しすぎてしまったんだと思います」。
本作は“超現代型ラブコメドラマ”を謳(うた)っているが、そこで描かれるのは恋愛模様だけではなく、チアキという人生の転換期を迎えた女性を取り巻く、友情、仕事、成長などが複合的に描かれていく。
山口自身は38歳の時に、芸歴25年にして初の連ドラ主演作『ブラックスキャンダル』(読売テレビ・日本テレビ系)を射止めた。しかし実は、その前に出演した作品が大きなターニングポイントになったという。
「38歳になってすぐは、ここから何をどう表現すべきか、私に何かを求めてくれる人がいるのかどうかも分からない中で、もがき苦しんでいた時期でした。そんな時に『モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)という作品で毒妻の役に出会って。それまでの私は、演じる際に、自分で“ここから、ここまで”という可動域を決めて役柄にブレーキをかけていた部分があったのですが、この役に関してはストッパーを一切外してみよう、行けるところまで行ってみようと目標を立てました。こんなに役について悩むかな、ここまで考える必要あるかな?っていうくらい、現場を離れても役についてずっと考えてしまうような生活で(笑)。でも、気付くと、劇中の毒殺シーンをわくわくしながら想像している私もいて…役と自分との境目がよく分からなくなっていた時間でもあります」と振り返る。
「すると、思いがけず大きな反響をいただいて、想像もしていなかったまさかのギフトが届いて…停滞していたいろいろが突然、面白いように回り始めたんです。物事が動き出す瞬間の、増幅するエネルギーみたいなものを体感した年でした」。
◆「自分が動かないと誰も動いてくれない。
「そこで学んだのは、やっぱり自分が動かないと誰も動いてくれない。待っていちゃダメなんだということ。なんとか声をふり絞って、誰かに気づいてもらえるよう発信し続けることが大事で、自分自身に制限をかけるべきではないということ。それまではどこか保守的で受け身だった私が攻撃型になったのは、明らかにそこから。それからは、スイッチが入ったように全力で突っ走ってきました。失うものは何もない。今度こそ、本当の意味での自由を手に入れたような気がします。体ひとつで現場に乗り込む覚悟があります(笑)」と明かす。
「今回演じるチアキも、現状を、自分自身を変えたくて、何かを求めていたんですよね。それが何かは分からなくて、たまたま出会ったのがマッチングアプリだったんだと思うんです。それが引き金となって、天国と地獄を味わい、結果、“あ、こんなものなのかな”っていう境地にたどりつく。でも、何もせずにいろいろを諦めてその場に留まっている人には絶対に分かりえないような、ものすごく強い『生きる力』みたいなものを、経験から、確実につかみ取ったはずなんですよね。
ドラマパラビ『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』は、テレビ東京ほかにて11月18日より毎週水曜24時58分放送。