子役時代からのかわいらしさはもちろん、近年は艶やかさやコミカルさ、さらには力強さなど、さまざまな顔を見せ、観客を楽しませている女優の安達祐実。そんな彼女も今年40歳という年齢を迎える。

年々フレッシュな一面を見せ続ける安達にとって、年を重ねることには、どんな意味をもたらしているのだろうか――。

【写真】今年40歳とは思えない! 安達祐実、いつまでも“かわいらしい”撮り下ろしカット

■傷ついたとき、ぬくもりを求めるという部分に理解

 安達が出演するオンライン動画配信サービスHuluで独占配信中のオリジナルドラマ『息をひそめて』。東京と神奈川の境界線を流れていく多摩川の側で日々を過ごす人々の、コロナ禍でのリアルな人間模様を描いた作品のなか、安達はマッチングアプリで、素性も知らない一回りも年下の男性と体を重ねる女性・妃美を演じた。

 妃美は32歳と言いながらも、実は36歳という女性。なにか心に傷を負った出来事があったように思わせる佇まいだが、背景はほぼ描かれていないという難易度の高いキャラクターだ。安達は「(メガホンを取った)中川(龍太郎)監督とは、男女の関係で傷ついたばかりという設定にしようと話していました」と役へのアプローチ方法を語る。

 寂しさを埋めるために、見ず知らずの男と一夜を共にするという行動には「自分が深く傷ついたとき、こういう形で癒やしていくかは分からないですが、ぬくもりを求めるという部分は理解できます」と役に感情移入する部分はあるというと「私は前に進めなくてどうしよう…というときは、いま自分がどういう状態であるかを確かめることが大事だと思っているので、妃美にとっては、こうしたやり方が自分を知る一つの方法だったのかなと思います」と理解を示す。

■「ドキドキしました」村上虹郎とのラブシーンに戸惑い

 妃美と出会うゴミ収拾業に従事している男性・宮下心平を演じたのは、若手実力派俳優の村上虹郎。特別な思い入れがないなか、体の関係になっていく。

 安達は「なんかすごくドキドキしましたね」と照れ笑いを浮かべると「本当にめちゃくちゃ若い男の子と…みたいなことを考えてしまうと、戸惑いみたいな部分もあったのですが、虹郎くんがコミュニケーションを積極的にとってくれたので、なんとか乗り切れたという感じです」と撮影を振り返る。

 もともとまったく知らない間柄から出会い、物語の終わりに、近づいたのか近づかなかったのか分からない程度に距離が縮まるという関係性。「実際の私と虹郎くんも撮影の最終日に、少しは近くなったかなという感じで終わったので、役柄と実際の関係性がリンクしていたのはありがたかったです」。


 心平が妃美に対して、元恋人の服を来て行為をしてほしいとお願いするシーンでの、妃美の微妙な表情が印象的だった。「そういう経験はないので、どんな反応になるのかなと未知の部分はあったのですが、もしすごく好きな人から言われたら、かなり抵抗感があったのかもしれませんが、まったく思いがない人だったので、いいかも…という微妙な躊躇(ちゅうちょ)が出ている表情かもしれません」と解説した。■「理想形に近づいている」と実感できる現在の立ち位置

 本作を含め、近年安達が演じる役は、非常に視聴者の想像力を掻き立てる面白いキャラクターが多いように感じる。本人役として登場し、自身のいまと過去を赤裸々に語った『捨ててよ、安達さん。』(テレビ東京系)をはじめ、『婚外恋愛に似たもの』(dTV)ではドルオタ、『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)では気風の良い姉御女性など、“かわいらしい”というパブリックイメージにプラスした引き出しの多さを見せている。

 安達自身も「そういう広がりを求めていたというか、私は『こういう役がやりたい』というのはないのですが、逆に言うと、どんな役でもやってみたいと思っていました。30代に入ってから、自分の考える理想形に少しずつ近づいているという実感はあります」と手ごたえを感じているよう。

 この役を安達祐実にやってもらったら面白いんじゃないか――そう思ってもらうために、自分自身の“いま”を素直に飾らず出すように心掛けた。子役としてブレークする一方、そのイメージから苦しむ時もあった。「強い言い方かもしれませんが、見向きもされない時期もあったと思うんです。でも私のことを知らないだけで、もし知ってもらえたら『安達祐実っていいかも』と思ってくれる人がいるかもしれない。だから本当の自分を発信することは意識しました」。

 
■迎える40歳…これから先はもっと楽しくなる

 プライベートの素顔を見せたり、何気なく感じた思いをつづった安達のインスタグラムは現在約100万人のフォロワーを有し、素のままの安達の生き方に多くの女性の共感を呼んでいる。

 「女性って年齢を重ねていくと、プレッシャーを感じてしまう人が多いと思うんです。結婚や出産もそうですが、肌の若さとかしわとシミとかに悩んだりするのは、世間が“いつまでもキレイでいる方がいい”と求めているという意識が浸透してしまっているから。だから私はあまりそういうことに抗(あらが)わずに生きていきたいし、それを体現していきたいと思っています。そういう私を見て、 “もっと楽に生きてもいいんだな”と思ってもらえているなら、すごくうれしいですね」。

 充実した30代を過ごし、今年9月には40歳という年齢に達する。安達は「すごく楽しみなんです」と目を輝かせると「若いころは感じなくてもいい重荷を感じて全部背負い込んでしまっていたのですが、30代後半になって、女優としても本当に自由にやらせてもらい、面白く過ごせてきたので、これから先はもっと楽しくなるのでは…と期待しているんです」と笑顔を見せる。

 さらに安達は「子どものころからずっと仕事をしてきましたが、コロナ禍になって、生活とか生きることをもう一度考える機会がありました。これまでは仕事に重点を置いてきたけれど、日常の生活や家庭のこと、子どものこととかをより考えるようになったので、40代はバランスよく、いろいろなことに向き合っていきたいです」と抱負を述べていた。(取材・文:磯部正和 写真:ヨシダヤスシ)

 Huluオリジナル『息をひそめて』は配信中。

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