【写真】活動再開から1年 ソロデビューでさらに輝きを増す鞘師里保 撮り下ろしカット
■今の私だから見せられる歌やパフォーマンスを
――全5曲収録の1stEP『DAYBREAK』では、各曲の作詞も担当。ソロアーティストデビュー作には、どんな思いを込めましたか?
鞘師:音楽活動を再開できたことへの思いを、「夜明け」という意味のタイトルで表しました。また、モーニング娘。にいたので、そこからまた再び“朝を迎える”というリスペクトの気持ちも込めています。グループ卒業後に芸能活動を休止し、海外留学も経験しましたが、長い時間を経ての音楽活動再開なので「今の私だから見せられる歌やパフォーマンスを届けなければ意味がない」と思っています。そうでなければ、過去の映像と変わらなくなってしまいますので。今回はいろいろな作詞家の方や作曲家の方の力もお借りしながら、今の私が届けられるものを意識しながら、作り上げました。
――デビュー作リリースと共に自主レーベル「Savo-r」を設立。名前の「r」が里保の頭文字であるのも、鞘師さんの決意を感じさせます。
鞘師:モーニング娘。のメンバーだった当時は「グループを自分が引っ張らなきゃ」「グループの歴史を大切に」という責任感やプレッシャーを感じていました。今はソロで活動をしてその意味が変わってきたというか。自分次第でこの先「続けられる」「続けられない」が決まってくるし、一つ一つの作業も、周りで支えてくれる方々の気持ちを裏切れないと思いながら取り組んでいます。
――インスタライブで音楽活動再開を発表しましたが、ファンの方からの反響についてはどう受け止めていますか?
鞘師:発表する時はとてもビクビクしていたんです。自分が「こう届いてほしい」と思った反応とズレていたらどうしようと。でも、ありがたいことに前向きな反応が多かったのでうれしかったです。再開を温かく受け入れてくださったので、そのまま突っ走るしかないと思って。昔も今も私は私ですけど、休業している間にも人として変わった部分もあるし、正直、需要があるのかなとも不安に思っていた部分もありました。需要のためだけに音楽へ打ち込むわけではないですが、前向きな反応をくださったみなさんに応えていきたいです。
――今回リリースされた楽曲の声の感じとか歌い方が変わったという印象を受けました。ご自身で意識したりとか、変えてみたというところはありますか?
鞘師:いろんなジャンルを歌われているアーティストの曲をよく聴いていまして、「こういう歌い方できたらいいな」というのを勝手に自分で訓練していたんです。
――昨年末にお話を伺ったときはちょうど本格的に作詞をはじめたばかりで、「本音を伝えきれていない」とか「なんかネコ被ってるなぁ」と感じて何度も書き直したりと苦労を語っていました。あれから半年…。作詞のコツはつかめましたか?
鞘師:まだまだ手探りです。はっきり「こうしたらいい」と言えるほどではないけど、気にし過ぎずに書こうとは思えるようになりました。心の内を「さらけ出しちゃえ!」みたいな(笑)。アルバム制作中は、言葉のプロの方からもアドバイスをいただきました。マネージャーさんに相談したら「じゃあ、この人に聞いてみたら?」と提案されて。小説など担当されている編集者の方に「この言葉選びはちょっと強烈過ぎますかね…」と伺ったり、ひとりよがりにならないようにいろいろな方の意見やアドバイスを聞きました。
――ソロアーティストデビューについて、事前にマスコミ向けに寄せられていた直筆のコメントでは、準備期間中に「大きな課題にぶつかった」と振り返っていましたが何が一番の課題だったんですか?
鞘師:大きかったのは、人前で高いキーの音を出せないことでした。以前テレビの生放送で失敗したことがトラウマになっていたんです。一人っきりでは歌えるのに、人前に立つと、のどをしめてしまい声が出づらくなってしまって。レコーディングでは、それを察してくれたスタッフの方が、私の声が出るまで待ってくださったんです。信じてくださったので、緊張もほぐれて気持ちよく高音を出せたんですよ。嫌な思い出を突破できた瞬間でしたし、自分なりに一つの山を越えた感じがしました。
――そんなトラウマがあったとはまったく感じませんでしたが、初ソロライブで気持ちよく高音を歌う鞘師さんが楽しみです。
鞘師:出せるかな…(笑)。でも、レコーディングでトラウマを乗り越えたことで、ライブに向けた練習でも高音をバンバン出せるようになりました。ライブでも緊張せず、気持ちよく歌いたいですね。
■目標は「自分の力で日本武道館に立つ」 海外での活動も視野に
――初EPリリースや初ソロライブも経て、ソロアーティストとしてその次にどんな目標を掲げていますか?
鞘師:ファンのみなさんへ会いに行ける場所を、たくさん作っていきたいと思います。
――留学経験もありますし、インスタグラムでも英語で更新していたり、海外への意識があるように感じますが、アーティストとして海外で挑戦したいという夢はありますか?
鞘師:願いとしてはあります。英語で発信をして、コメントや反応をいただけるのがうれしくて。そうしたやりとりは、実際に住んでいる場所や距離よりもすごく近く感じられますよね。コロナ禍で海外はもちろん日本国内でも行動が制限されているなかで、インターネットのおかげで世界中の方とコミュニケーションを取れる状況に感動しながらも、やっぱり直接会えるっていうのが、一番うれしいことだなと思えるので、いつか直接自分の音楽や言葉を届けたいです。以前グループで海外ライブをした時には、本当に英語がダメで、スピーチで用意していたあいさつの言葉も忘れてしまって悔しい思いをしたのでリベンジしたいです。
ソロアーティストでの再デビューも「1人の力ではない」と語る鞘師。芸能活動再開からまもなく1年、頼もしさを増す彼女の活躍から目が離せそうにない。(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:ヨシダヤスシ)