映画、ドラマ、舞台にCMと八面六臂(ろっぴ)の活躍を見せる山田裕貴。彼の特長の一つは、高い演技力に裏打ちされた、出演作品の多さ。
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「あの役っぽい」と既視感を抱かせない演技力
現在は音楽劇『海王星』に出演中で、27日には志村けんさんを演じたスペシャルドラマ『志村けんとドリフの大爆笑物語』(フジテレビ系)が放送される。『東京リベンジャーズ』が2021年の実写映画No.1ヒットをたたき出したこともあり、持ち前の実力に人気と知名度がより上乗せされたといっていい。
そして、近年の出演作を横断して見るだけでも、その役柄の幅広さにうならされる。『東京リベンジャーズ』では、人気キャラクター、龍宮寺堅(ドラケン)を原作の“完コピ”レベルで熱演。側頭部を刈り上げ、後ろ髪を弁髪スタイルにしているビジュアルを再現するべく実際に断髪を行い、約一年も維持し続けたというから、気合のほどがうかがえる。ドラケンは不良軍団「東京卍會」の副総長としてチームを支える大黒柱であり、武闘派でありながら総長の佐野万次郎(マイキー:吉沢亮)を制する冷静さも併せ持つ、頼れる男。山田はドロップキックなどの激しいアクションに挑戦しつつ、少しトーンを落とした落ち着いた声色や、仲間を護る分厚い背中を見せつけている。
翻って『ここは今から倫理です。』は、表情を読み取らせない物静かな倫理の教師、『ハコヅメ ~たたかう!交番女子~』は明るく人懐っこい刑事を演じた。同じ漫画原作というくくりであっても、それぞれの作品に合わせたアプローチ(例えばリアル路線か、オーバーめかなど)を追求していること、もっというと作品のテイストに合わせて演技のジャンルをスイッチできることが、山田の武器の一つといえるかもしれない。教師役は『先生を消す方程式。』、刑事役は『特捜9』ほかでも演じているが、「あの役っぽい」と既視感を抱かせないのは流石だ。
出演作が絶対的に多いにもかかわらず、イメージが定着しない。しかも、ドラケンや『先生を消す方程式。』のクレイジー教師・頼田朝日、『闇金ドッグス』シリーズの安藤忠臣、『HiGH&LOW』シリーズの村山良樹といった“濃い”キャラクターを次々と演じているにもかかわらず、だ。山田本人も、ツイッターなどで変顔や爆笑エピソードを投稿したりと積極的に自分を出しているが、こと演技、役柄に対しては別。「イメージの定着」は観る側に生じるもののため、俳優本人にはコントロール不可な部分も強いのだが、山田においてはそれを見事に実現してみせたように感じる。その先に、「志村けんさんを演じる」という大役が待っていたのだと考えると、実に感慨深い。
2022年もジャンルの異なるさまざまな作品に挑戦
『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』では聴覚障がいのあるスキージャンパーに挑戦し、『燃えよ剣』では将軍・徳川慶喜を風格たっぷりに演じた山田。
加えて、『あゝ、荒野』では狂気のボクサー役を演じ、菅田将暉と鬼気迫る死闘を繰り広げれば、『万引き家族』ではDVを振るう父親の闇を見せ切った山田。いわゆるメジャーな娯楽大作だけでなく、社会的メッセージを内包した作家主義的な作品で重要な役どころを任されるところも、彼の大きな強み。今後さらに年齢を重ね、このゾーンの開拓もより進んでいくのではないか。
イメージの定着は演者にとっては諸刃の剣ともいえ、認知度の向上につながる一方、観客や視聴者にまっさらな状態で演技を受け取ってもらえなくなる可能性をはらんでいる。逆に言えば、それを「気にしなくていい」高みにまで到達できれば、最強だ。そして山田には「行けるとこまでいく」という気概と可能性が満ち溢れている。
2022年には、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK総合/2022年春より毎週月曜~土曜8時ほか)、『ヤクザと家族 The Family』や『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)の藤井道人監督作『余命10年』(2022年3月4日公開予定)、安田顕と共演した『ハザードランプ』(2022年4月15日公開予定)などなど、それぞれにジャンルの異なる作品が控えている山田裕貴。来年もまた、我々に大いなる期待を抱かせてくれるに違いない。(文:SYO)
ドラマ『志村けんとドリフの大爆笑物語』は、フジテレビ系にて、27日21時放送。