まさに、「ひっそりと」と言うべきか、TBSが10月期より『テッペン!水ドラ!!』(水曜午後11時53分~深夜0時23分)を新設した。
TBSでは視聴率低迷のため、3月いっぱいで月曜午後8時、9月いっぱいで木曜午後9時のドラマ枠を廃止。
同ドラマの舞台となるのは、東京・下町の小さな駄菓子屋「さくらや」。主人公の桜井太郎(オダギリ)は早くに両親を亡くし、祖母・明子(八千草薫)が営む「さくらや」を手伝っているが、経営は苦しい状態。
店の裏口では、太郎の同級生で脚本家志望の三枝(勝地涼)、後輩で仕事に挫折した経験をもつ金田(前野朋哉)、近所ではやらない銭湯を経営する島崎(嶋田久作)らの常連客が入り浸り、太郎と共にたわいもないおしゃべりをして、少年時代のような時間を過ごしていた。
そんな中、太郎の幼なじみである木村礼子(尾野真千子)が、離婚して息子を連れて地元に戻り、初恋の相手・太郎と再会。太郎や仲間たちは、「さくらや」を訪れる人々と共に、己自身の過去に、夢に、痛みに向き合い、「本当に大切なもの」に気付いていく……というストーリー。
深夜の30分ドラマとしては、なかなかの豪華キャストで、第2話には太郎の同級生で、年収1億円を超えるIT社長となった武田役の藤原竜也がゲスト出演する。演出・脚本を手掛けるのは、映画『川の底からこんにちは』で「ブルーリボン賞」監督賞、『舟を編む』で「日本アカデミー賞」最優秀監督賞を受賞した石井裕也監督で、こちらも豪華だ。
オダギリといえば、12年4月期に主演した『家族のうた』(フジテレビ系)の第4話で3.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)を記録。全話平均は3.9%で、いずれも、今世紀に民放プライム帯で放送された連ドラ(テレビ東京を除く)の中で、最低視聴率を更新した。同ドラマは第8話で打ち切りとなり、オダギリはその後、“低視聴率男”のレッテルを貼られることになってしまったのだ。
このワースト記録は後に、単話、全話平均とも、『夫のカノジョ』(13年10月期/TBS系/川口春奈主演)が更新。さらに、単話では『HEAT』(15年7月期/フジテレビ系/AKIRA主演)が2.8%を出して更新。これにより、オダギリは“史上最低視聴率男”の肩書から解放されることになったが、『家族のうた』のイタイ記憶は今でも生々しい。
ただ、演技力に定評があるオダギリは、NHK大河ドラマ『八重の桜』では、主役の綾瀬はるかの2番目の夫役を好演。『S-最後の警-』(TBS系)、『アリスの棘』(TBS系)、『極悪がんぼ』(フジテレビ系)などで、脇役として活躍。14年4月期には、テレビ東京系の深夜ドラマ『リバースエッジ 大川端探偵社』で主演したが、今作の『おかしの家』はテレ東を除くと、深夜とはいえ、3年半ぶりの連ドラ主演となった。
初回視聴率は2.8%と、“惨敗”の数字となったが、深夜枠だけに、叩かれることはまずない。同枠は深夜帯ならではのエッジの効いた企画への挑戦や、TBSの次世代クリエイターの発掘と育成を目的に創設されており、必ずしも、視聴率にはこだわらないスタンス。『家族のうた』では低視聴率に悩まされたオダギリだけに、深夜帯でマイペースに主演したほうが、“お気楽”でいいのかもしれない。
(文=黒田五郎)