『アウト×デラックス』(フジテレビ系)、『徳井と後藤と麗しのSHELLYと芳しの指原が今夜くらべてみました』『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)に「女版・栗原類」「ネガティブすぎるモデル」として登場し、一躍注目を浴びている長井短。その独自の理論に裏打ちされた突拍子もない言動、「友だち」「モテ」に対する尋常ならざる思い入れ……“こじらせる”とも“ひねくれる”とも違う、ニュータイプの自意識エクスプロージョンにはブレークの予感しかない! 日刊サイゾーが、どこよりも早く、話題のモデルに迫ります!!

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――地上波の番組にも次々とご出演されて、ブレーク間近ですね。



長井短(以下、長井) テレビに出るとスゲェ売れるのかなと思ってたんですけど、別にそんな売れてないというのが現状ですね(笑)。あぁ、SNSのフォロワーが増えたなとか、エゴサーチするといっぱい出てくるな……という程度のことはありますが。

――エゴサするんですね。長井さんはTwitterも面白いし、SNSの使い方が上手だなぁと。

長井 いや、そんなことないです。中学生くらいからSNSはあって、最初は前略プロフィールで、それがmixiになって、今Twitterになったんですけど、やっぱり昔やってたものとか見返すと、死ぬほど痛いんですよ(笑)。
中学生だった私は「ネットには本当のことを書ける」とか、血迷って考えていたようで、いま見ると本当につらい。だから、10年後の自分が恥ずかしい思いをしないで済むようなことしか書けないなって、今は気をつけています。

――(笑)。長井さんは「ネガティブすぎるモデル」というジャンルで取り上げられていますけど、ご自身はネガティブという自覚はあります?

長井 なんだろう……ネガティブって、「鬱」っぽいイメージじゃないですか。私はどちらかというと「躁」状態に入っちゃうことのほうが多いんです。考えてることは確かにネガティブだし、後ろ向きではあるんですけど。


――今日はどうやって「長井短」という人間が形成されていったのか、そのあたりのお話を聞きたいなと思っています。

長井 私、『STAR WARS』を幼稚園のときに見て、小1で『ハリー・ポッター』を見て、将来どちらかになりたいと思っていたんですよ。でも、クラスメイトの一番仲良かった女の子に「ジェダイはいない」って、交換ノートに書かれてしまって。

――交換ノートで!!

長井 交換ノートの“内緒の話”っていうコーナーに「実は私、ジェダイになるのが夢なの」って書いたら「ジェダイはいないよ。あれはハリウッドスターなんだよ」って。すごい傷ついたんですけど、「わかった。
じゃあ、ハリウッド人になる」って言ったら「ハリウッド人もいない」と。そのとき、かなりの絶望を味わい、以降「私は生まれる宇宙を間違えた」みたいな気持ちでずっと過ごしていましたね。中二病も相まって。

――中学時代は、何にハマっていましたか?

長井 『SCHOOL OF LOCK』(TOKYO FM)というラジオ番組ですね。周りの友だちはたいていテレビを見ているし、ジャニーズが好きだけど、私はラジオ。その自尊心がヘンなふうなっちゃって、当時オレンジレンジがはやっていて、実は私も好きだったんですけど、それよりもラジオでかかる曲のほうがいいとか言ってました。


――オレンジレンジを好きとは言いづらかった。

長井 そう、嫌なヤツですよね(笑)。

――いや、なんの音楽、なんの映画が好きかって、自分をどう見せるかにおいてすごく大事でしたよね、その時代は。

長井 映画も、最初は普通に『STAR WARS』が好きって言ってたんだけど、それもちゃんと伝わってないなって感じがして。ちょうどその頃、「CUT」(ロッキング・オン)の表紙の裏広告に、たまたま「トッド・ソロンズ」っていう監督の作品が載ってて、まったく知らないけど、なぜか心惹かれて、ずっと見たいと思ってました。

――「好きな映画は『STAR WARS』」のちゃんと伝わっていない感じを、「トッド・ソロンズ」で解決できるかもしれないと。


長井 はい。中1でようやくTSUTAYAカードを作れるようになり、栄えある初回レンタルがトッド・ソロンズ。ようやく見ることができたんですけど、ただ一般的に中学生が見るような毛色の映画ではなかった。

――自意識の長い旅路ですね……。

長井 まぁ、満を持して「好きな監督はトッド・ソロンズ」って言ってみたわけですけど、友だちは「何言ってるかわからない」と。こっちも不正解だったようです。


――今はどうですか? 好きなものは好きと言えるようになりました?

長井 いや、大人になるにつれて、逆の現象が出てきたんですよ。高校に入って「ウディ・アレン」が好きになって、高校生のときは「ウディ・アレン好き」って素直に言いまくってました。でも、大人になってから「ウディ・アレン好きって女も、それはそれでちょっとウザいかも」って思い始めて、それも言いづらくなってしまった。なんか同じ流れで「岩井俊二好き」も言いづらいんです。

――あぁ、わかります(笑)。

長井 ありますよね。あの世界観が好きって言うと、ちょっと嫌な女っぽいというか。もう逆の逆で『ムカデ人間』とか言えばいいのかなって思ったんだけど、それはそれで狙いすぎっぽいし、いまだにちょうどいいところが見つかってない。

――(笑)。長井さんは役者業もされていますが、それも映画への興味から始まっているのですか?

長井 やっぱりジェダイになりたかったので、役者になればそういう役もやることができるのかなって、そこからです。お芝居はすごくやりたいとずっと思ってました。ただラジオにハマっていたので、ラジオDJもいいなと思っていました。

――ラジオDJって、タレントさんともアナウンサーさんともちょっと違う、絶妙なところですね。でも考えてみれば、役者業って、思いっきり人前に出るものですよね。そこに対する抵抗はなかったんですか?

長井 それはなかったです。私、小1から中3までずっと合唱をやってたんですけど、年に1回ミュージカルがあって、舞台に立つこと自体はわりと慣れていました。だから演劇は大丈夫なんですけど、ただ……バラエティ番組とかは、「私で~す」ってなるじゃないですか。

――「私で~す」(笑)。

長井 その「私で~す」を私がやったところで誰も興味ないだろっていう、そこに対する抵抗はすごく強いんです。誰かが書いた役柄だったら、その作家さんが好きな人たちがいるから、ちゃんと需要がある。その人が書いたものを私が代わりに言わせてもらってます、っていうので少し安心するんですけど。「私」には興味ねぇだろって。

――モデルというお仕事については、いかがですか?

長井 やる前は全然興味なかったです。高校卒業してからも演劇を続けたくて、でもバイトの面接に行っても、ことごとく落ちるんです。あまりに落ちるので「これは“働くな”と神が言ってる」と思うくらい。でも、演劇だけじゃ絶対食べていけないし、どうしたら“いなかった感じ”で演劇に取り組めるんだろうなって考えたんです。

――いなかった感じ!?

長井 今までこういうやり方する人はいなかったな、っていう意味の(笑)。

――あ、そっちですね。よかった(笑)。

長井 そう、それで「モデルやってて映像をやる人はいるけど、モデルやってて舞台やる人ってあんまりいないな」って、これができたらちょっと面白いかなと。最初はバイトの代わりにお金稼げればいいなくらいでしたけど、始めてみたらすごく面白くて。

――イメージと違いました?

長井 それまでは「CanCam」(小学館)とか「non-no」(集英社)とかの、ハシャいでる女っていうイメージだったんですよ。でも、私に来る仕事は「ハシャぐな」。ぼーっとしててほしいっていう依頼が多くて、ぼーっとするのなんて得意得意って(笑)。あと、いわゆるカワイイ服、みたいなのじゃなかったんですよね。普段着ない感じの服が多くて、そういうのを着られるのも面白かった。ちょっと「難解」っぽいのが、自分には合ってる。

――確かに長井さんが「モテ服で着回し〇〇days」みたいな企画に出ているのは、想像できません。

長井 そういうのを、若干バカにしながら生きてきた節もあるので。よかったです。「モテ」とか意識しなくていい仕事で。

――「モテ」は、いらないですか?

長井 いや、普通にモテたいですよ!! ただ、モデルやっても全然モテない……。

――アパレルブランドのパーティーに行って、シャンパン飲んだりしないんですか?

長井 事務所にお誘いのメールは来たりするんですけど、一人じゃ行けないし、行って「あ、長井さんだ」みたいになれば「ごきげんよう」って手を振っていればいいんだろうなと思うけど、そもそも誰も知らないし、友だちもいないし。

――テレビでもお話しされていましたが、長井さんの「友だち」に対する思いハンパないですよね。

長井 ほんっとに、友だちが欲しくて仕方ないんですよ。でも、どうしたらいいかわからない。素敵だなと思うと「友だちになろう」とかすぐ言っちゃうんですけど、「『友だちになろう』って、言う?」って返ってきちゃうし。

――確かに、どんな儀式をすれば「友だち」になれるのかわからない。

長井 そうなんですよ。学校があれば友だちと呼べないまでも、どうしたって3年間顔を合わせ続けるから、一定の間柄にはなれるじゃないですか。学校に行かなくなると、その安心感もなくなる。クラスメイトだったころは「おはよう」って言えるけど、卒業してから「おはよう」ってLINEするのもおかしいし、でも用事もないし、ただ「まだ友だちだよね」っていうのを確認したかったりするんですけど、たぶん引かれるから連絡もできない。

――いや、それには共感する人多いと思います。

長井 誰も教えてくれないんですよ、友だちの作り方と友だちの続け方って。大人になると、飲みに行くしかなくて、「最近仕事どう? 順調?」とか、それもいいんですけど……もっと、なんというか、ゲームしたいんですよ。

――ゲームですか!?

長井 純粋な遊びっていうのがしたくて。居酒屋もいいけど、公園で待ち合わせしたいし、ゲームセンター行きたいし。人と遊びたい、とにかく。「本気でバトルして、絆芽生えた」みたいなのが欲しいんです。

――河原で殴り合って抱きしめ合う的な。

長井 そういう流れが欲しいです。なんで大人になると、できなくなっちゃうんでしょうね……。

――今、長井さんは、何をしてるときが一番楽しいですか?

長井 なんだろう……家で、パソコンでアニメとか流して、テレビで録画したドラマ流して、携帯でツムツムやりながら、ラジオもかけてみたいな、とんでもない情報があふれてるところで一人ぼーっとしてる時が一番安らぎます。

――安心するんですか?

長井 この情報をどこまで追いきれるのか、私? っていうのも楽しい。

――男性に求めるものは?

長井 「正しい人」が好きかもしれない。正しさを感じる人。倫理観とかはどうでもいいんですけど、自分が大切にしたいものや好きなものに絶対誠実に向き合えているかどうか。子どもみたいな人なんですかね。

――なるほど。

長井 「今、今、今」みたいな人が好きなんです。今、ここが、大事。明日より……。

――カッコイイ……昔の椎名林檎みたい。

長井 私が言うと痛いですね(笑)。

――あまりにお話が面白すぎて、うっかり忘れそうになっていたんですけど、12月には舞台も控えてらっしゃいますよね。

長井 そうなんです。7月に玉田企画という劇団にお世話になって、そこの主宰の玉田さんがやっているユニットのコント公演『弱い人たち』に出させてもらいます。私がよくお世話になっている「月刊『根本宗子』」は台本の一言一句きっちり覚えるっていうやり方だけど、逆に玉田さんは論旨が合っていれば自分の言葉でしゃべってくれたほうがむしろいいという人で。そういうところでやるのが新鮮でもあり、難しくもあります。

――演劇以外で、これからやってみたいことは何かありますか?

長井 コラムとか書きたいです。ラジオDJもそうですけど、顔バレしない仕事を。なんか紛れていたいんですよ。バーンっていくのも怖いし、ちょうどいいところにいたいです。知ってる人は知ってるけど、そんなに2ちゃんで叩かれるほどでもないっていう。

――ジャンルは?

長井 なんでもいいです。ただ、ポエムみたいなのはイヤですけど。

――ポエム(笑)。

長井 よくあるじゃないですか。ちょっとした夕日の写真に、うっとりした言葉並べるの。感受性豊かアピールみたいの、キツイですよね。そして、間違いなく10年後の私が死ぬ(笑)。
(取材・文=西澤千央)

●長井短Twitter
https://twitter.com/popbelop?lang=ja

●お笑い×演劇ユニット「弱い人たち」 第2回コント公演『もっと強くなりたい』
<公演日・開演時間>
12月22日(木)19:30
12月23日(金・祝)14:00/19:00
<会場>
ユーロライブ
<企画・脚本・演出・出演>
上田航平(ゾフィー)、塚本直毅(ラブレターズ)、ポテンシャル聡(ハイパーポテンシャルズ)、玉田真也(玉田企画)
<出演>
芝大輔(モグライダー)、岡野陽一橋本小雪日本エレキテル連合)、長井短、菊池真琴ほか
http://eurolive.jp/