「韓国人ボクサーは日本で試合できないようにすればいい!」

 そう激高したのは、日本のボクシングジム会長だ。昨今の日韓の政治的対立から、韓国への嫌悪を強めていたが「韓国には経済制裁で対抗すべきだ」とまで言っている。

その理由は、韓国のボクシング元世界チャンピオンの2人が3月1日、領土問題となっている島根県の竹島で試合を行うと発表したからだ。

 主催は、長く竹島を韓国領土として認めるよう活動してきた歌手キム・ジャンフンで、過去、新宿や渋谷の建物などに日本を批判する従軍慰安婦問題のビラ1,500枚以上を無断で貼りまくった反日活動家。今回、韓国の独立運動を記念する3月1日の三一節に、竹島でボクシングマッチを開催し、元WBC世界Lフライ級チャンピオンの張正九と、元WBA同級チャンピオンの柳明佑が対戦すると発表した。

 両王者は韓国では伝説的な英雄で、アメリカのボクシング殿堂にも選ばれたことがある。ただ、元武道家で日韓文化研究家であるカン・ヨンヒ氏によると「あんな場所で実際にその日に開催できるかは不透明」だという。

「政府の許可が下りているのかもわからず、現地は天候も不安定だし、ボクシングのリングをあんなところまで運べるのかも疑問。
キム氏はボクシング興行に決して詳しくはないし、ブッキングされたチャンピオンも主旨をよくわかっていない可能性もあります。韓国ではボクシング人気がなく、業界が壊滅状態。試合をしても見に行く人はほとんどいないのでは……」(同)

 開催の可否はともかく、日韓で互いに領土の主張をしている状態の竹島は、韓国が実効支配中。パク・クネ大統領も含め、これまで多くの韓国議員らが現地にヘリコプターで不法上陸したこともあるが、これらは対日というより、選挙資金を集めたり人気取りの国内向けパフォーマンスである色が強いとされる。そのためカン氏も「今回も、その類いに見える」と見ている。

「キム氏は、これまでアメリカに慰安婦記念館を作るなどといって、ライブ活動で何度も大々的に寄付活動をしてきたんですが、昨年12月に集めた金を寄付していなかったことが報道され、本人も反論をしなかったことから詐欺師呼ばわりされてます。
竹島ボクシングも、これを理由に寄付を募っているらしいので、ボクシングのレジェンドがこれに参加するのは、詐欺に加担する危険性もあるんです」(同)

 韓国の英雄2人がこれまで反日的だったという話は聞かない。張はかつて大橋秀行、渡嘉敷勝男と、柳は井岡弘樹と試合をしていて、ともに日本のボクシングファンにも知られた有名選手。引退後も、日本のボクシング関係者と親交がある。

 ともに53歳でとっくに引退している身だから、試合をするといってもスパーリング程度のことしかできないはずだが、前出会長はこの話に激怒し、「アメリカではアジア人を日系とか中国系とか分けて呼ぶのに、日本はそれをしない。日本でも韓国系ボクサーとか韓国系ジムはそう区別するべきじゃないのか」とまで言い出すほどになり、さらには「協会がこれを黙認するなら動きを起こす」とまで言い出した。

 会長が運営するジムはプロ組織の日本プロボクシング協会の所属だが、「同志を集めているところ」と派閥の形成も宣言。


「協会の前会長、大橋は韓国とベッタリで日韓合同大会とかを定期的にやっている。協栄ジムの金平(桂一郎・東日本協会の副会長)も奥さんが韓流グッズショップをやってたぐらい韓国寄りだし、俺としてはそういうのは許せない。合意を平気で破ったような連中に媚びを売ってる奴はボクシング界にいらない。報復として韓国人ボクサーの試合をできないようにするべきだ。それを提案しても協会に却下されるのは分かり切っている。だから狼煙を上げる」(同)

 あまりに極端な主張ではあるが先日、この会長は親しいジム会長と集まり、現在の協会内の資金の扱いなどについての不満を意見交換。
19年の次期会長選挙に向けた派閥作りまでしていることを明かしている。

「これまで何度も協会の金をきちんとさせようとする話が出たけど、帝拳ジムとか大手が反発してみんな尻込みしてきた。もうそういうのは終わりにしないと」(同)

 竹島ボクシングイベントが、日本のボクシング界の内紛につながらなければよいのだが……。
(文=藤堂香貴/NEWSIDER Tokyo)