元祖フリーアイドルで声優のルンルンこと宍戸留美さんが、自らカメラマンとしてかわいい声優さんたちの写真を撮り、さらにアイドルライターの私(小明)がインタビューする不思議な連載の51回目! 今回は日本映画界の鬼才、井口昇監督がプロデュースするアイドルユニット・ノーメイクスのセンターとして活躍しつつ、アニメ『世界の闇図鑑』(テレビ東京)で声優デビューも果たした、神門実里(みかどみのり)さんが来てくれました!

――本日はよろしくお願いします! 神門さんは、ノーメイクスに入る前は、どんな活動をされてたんですか?

神門 ちっちゃい事務所でちょこちょこミュージックビデオに出たり、ドラマのエキストラに出るくらいで、オーディションに受かったこともなくって……ノーメイクスが初めて受かったオーディションでした。

――確か、もともとはアイドルユニットじゃなくて、井口昇監督の映画の主演女優を決めるオーディションでしたよね。



神門 そうなんですよ! 「銀幕アイドル女優を復活させよう!」っていうオーディションを受けたはずが、井口監督が「みんな良くって決めきれない、じゃあチームにしちゃえ!」って……。そして気付いたらアイドルデビューしていたんです。今はメンバーの1人が抜けて、カフェ開いてますね。

――ちなみに、井口監督の映画は、かなり癖が強い印象ですが、どうしてオーディションを受けようと思ったんですか?

神門 Twitterで情報を見て応募したんです。映画が好きで、映画オーディションはなんでも受けまくってた時期だったので、まだ井口監督の映画も観てない状態で……。メンバー全員そんな感じだと思います。


――おお……もし観ていたら、オーディションは受けてましたか?

神門 どうかな、私、少し変わった映画が好きなので(笑)。

――ウンコのゾンビにおっぱいドリル、おならで空中飛行などなど、ヤバい例をあれげばキリがない井口作品を“少し変わった映画”でくくれる強さがすごいです。

神門 っていうか、ぶっちゃけ、本当はフランス映画とかが好きなんですよ。日常の一部を切り取ったようなオシャレなやつ。邦画では加賀まりこさんの『月曜日のユカ』が人生で一番好きだし、とにかく女の子が可愛く写っている映画が大好きなんです。

――井口監督の映画も女の子は可愛いし、そこは通ずるものがありますね。


神門 あと、百合っぽい物というか、女同士の恋愛にも興味があったんです。井口監督のオーディションには「女の子同士でキスができる人じゃなきゃダメ」っていう条件があったので、「面白そう!」と思って。オーディションでも参加者同士でキスしましたよ。「アドリブで、どこにキスしてもいいよ」って言われて。

――照れちゃう~!

神門 大冒険でした! そういう選考の結果、変わった監督の元に変わったメンバーばかりが集まったという(笑)。

――女同士のキスには抵抗なかったですか?

神門 私、「これはやりたくない」ってことがあんまりないんですよ。
映画でも、役をもらえたらどれだけ監督の要求に上回って応えるかっていう対抗心が出ちゃうんです。

――あ、確かにノーメイクスの曲「チョット守ってクダサイ」のMVでも、神門さんだけすっごい変顔してましたね。他のメンバーは少し可愛さを残した変顔なんですけど、神門さんは微塵も残さない振り切り方で、「ノーメイクスのセンターになるとはこういうことか!」と戦慄しました。

神門 あの撮影の時も、みんなから「もっと自分を守りなよ!」って言われたんですけど、私としては、どこまで監督の作品の中に入っていけるかが重要だったんです。そしたら、あまりにも酷すぎたみたいで、ファンの人がTwitterに載せるときに、勝手に私の顔にモザイクかけてくれるんですよ……。

――顔が恥部! でも、ハマってましたよ。
私は井口監督が好きで、ノーメイクスが始動したときは「あっ出遅れた」と思ったんですけど、メンバーを見ると「あ、コレは落ちてたな。受けなくて良かった」と思いましたもんね。みんな個性派すぎます!

神門 今時のアイドルさんは本当に可愛いけど、グループでも似てるタイプの子が多いじゃないですか? ウチは誰も被らないんです。

――だから、メンバー全員で映画に主演しても、すぐに顔の見分けがついて親切だと思いました。ちなみに、その個性派が揃ったメンバーに神門さんが受かったのは、なぜだと思いますか?

神門 それが、聞いても教えてもらえなくて……。私、顔とか見た目とか、しゃべり方がアイドルっぽいんですよ。
自分でも自覚があって、女優っぽく見られないのが悩みなんです。でも、ノーメイクスとしてやっていくときに、そのアイドル的な要素が必要だったのかなって。あと、超ドジなんですけど、監督は「それは特技に書きな!」ってすっごい言ってくれます。それもあるのかな。

――ドジってあくまで短所であって、決して特技にはならないような……ちなみにどんなドジを踏むんですか?

神門 オーディションに「特技:ドジ」って書いたら、そのオーディションすっぽかしちゃったんですよ。そしたら受かりました。


――え! 何それ!?

神門 あと、ソロアイドルのコンテストを受ける時に、集合場所が目黒だったので、前日に「明日は目黒だから、みんな目黒に応援に来てね~!」ってSNSに書いたにもかかわらず、当日私は中目黒に行きました。

――すごい、致命傷じゃないですか!

神門 この間も携帯を噛んだらバキバキに割れてしまって。

――噛んだの? なんで? 獣?

神門 切符をなくして、探しているときに口で携帯くわえてたんですよ。そしたらホラ、こんなことに。

――ギャッ! ほんとにバキバキ! どんな強度で噛んだらこうなるの!?
神門 本当に、創造と破壊以外の、日常生活に必要な全てのことができないんです。人間としての生活ができない。私にはこの仕事をする以外に生きていく術がないんですよ。

――予想よりもはるかに大変そうです……。昔からこういう芸能の仕事を希望してたんですか?

神門 いや、もともとは入国管理官になりたかったんですよ。

――めちゃくちゃ限定的ですね。

神門 書類に判子を押したかったんです。ずっと「将来は世界と日本を繋げる仕事がしたい」と思っていたので、学生時代に英語と中国語とフランス語を勉強して、弓道も茶道もやって、語学と日本文化を完璧にして準備してたのに、いつの間にかこういうことに……。

――でも、芸能も立派な国の架け橋ですよ。

神門 そう! ソフトパワーになって頑張りたいです!

――それにしても、ずいぶん多くの外国語を勉強したんですね。「世界と日本を繋げたい」という願望が、ソロアイドルとしてのデビュー曲「世界征服だ!」の作詞に繋がっているんでしょうか? 架け橋から、征服に変わっているのが気になりますが……。

神門 私が征服して愛をそそいだ方が、絶対に良い世界になるんですよ!! だから、「世界征服だ!」の作詞をする時、とりあえず一人で中国に行ったんですよ。征服できるかなって。

――あ、バカなんだ! えっと、征服できましたか?

神門 いや、むしろ現地の人に救ってもらってばっかりで、征服どころじゃなかったです。「荷物盗られる!!」と思ったら普通に運んでくれただけだったり。台湾の人、やっさし~い!

――すっかり絆されて帰ってきている……。でも、征服はさておいても、井口監督の映画は海外でも人気ですし、うまくいけば海外の作品にも参加できそうですね!

神門 はい! 今年の冬には、井口監督×ノーメイクスの2作目になる『ゴーストスクワッド』が公開になるんですけど、早くも海外で記事にしてもらっているんですよ。期待してます!

――どこかで聞いたことあるタイトルですが、楽しみです! というか、予期せずアイドルデビューしたけれど、翌年にはちゃんとクラウドファンディングで資金を集めて、映画『キネマ純情』にメンバー全員で主演されましたね。もう2作目も公開待ちだし、オーディションの公約はウソじゃなかった! 主演映画の撮影はどうでしたか?

神門 『キネマ純情』は、女の子同士のキスシーンが50回以上あるんですよ。もう、どれだけしたか自分でも覚えていないですよね……。

――唇腫れそう! 周りの人からの反応はどうでしたか?

神門 同級生で観に来てくれた子もいるんですけど、正直ちょっと「あ、観ちゃった?」って(笑)。

――恥ずかしいんだ! ご家族はの反応は?

神門 それが、めちゃくちゃ厳しい家で、未だに芸能活動も禁止されてるんですよ。

――えっ!?

神門 だから、父はライブすら一度も観てないですし、家でも芸能の話はタブーになっていて、私が「ライブに行ってくる」って言っても無視ですよ。マンガもゲームも禁止だし、テレビといえばNHKっていう家庭の中で、何もルールを破ることなく生きてきたので、近年になって何かが爆発しちゃったのかなぁ。

――遅咲きの狂い咲きですね! 『ゴーストスクワッド』の予告を観ましたが、メンバー全員メイクでヤバい顔にされていて、神門さんもさらに狂い咲いてましたねぇ。

神門 はい。アイドル映画なのに、みんなファンデーションの色がおかしいんですよ!

――みんなキョンシー色でしたね。『キネマ純情』ではまだキスシーンでしたけど、今回はメンバーの口周りをベロッベロに舐めるシーンもありましたね。あれは神門さん?

神門 そう、わたくしでごさいます。でも、アレはまだぜんぜん序の口どころか、氷山の一角というか、氷ひとかけらくらいのもんです。

――でしょうね……だって井口作品に出るって、そういうことですものね?

神門 そう、そのくらいの意気込みが必要です(笑)! でも本当に楽しかったので、なんの後悔もないですよ。公開をお楽しみに!

――お父さんも観てくれるといいですねぇ。そしてお金がたくさん儲かればもっといいです! 映画も主演だし、ライブもたくさんやってるし、生活はかなり潤ってるんじゃないですか?

神門 ノーメイクスは、まだ利益が出ていないのでノーギャラです。

――……えっ。

神門 アイドル活動の一部は、映画祭に行くための資金とかになります。

――あんなにいっぱいライブやるのに!

神門 1,000万円以上かけて活動しているので、なかなか利益が出ないらしいです。なので、本当に自分たちで写真を撮って、編集して、ブロマイドをちょこちょと売ったりして……。

――チェキとかグッズは身銭になるんだ! じゃあ、ノーメイクスの映画は、上映時にメンバーの誰かしらが必ず劇場にいるっていう4D仕様ですし、そこでチェキを売れば食費や交通費が稼げますよ!

神門 ハッ、そうですね! 今度からはチェキ売ります! 女優とのチェキですよ、皆さん是非是非(笑)!

――確実にレアです! ……あ、そうだ、遅くなりましたが、これは声優さんにインタビューする連載なんですよ。このたびはテレ東の『世界の闇図鑑』にて声優デビューおめでとうございます!

神門 ありがとうございます! めちゃめちゃ緊張しました!

――神門さんは声優の他にグラフィックとCGもやったらしいですね、多才すぎませんか?

神門 なんでも屋なんです(笑)。正直、「アイドルをやりたい」「女優をやりたい」って言うより、「作品を創る」のが好きなので、そういう趣味が高じていろいろできるようになったら、「ちょっとサンプル作ってみて?」って言われて、作ってみたら「良いんじゃない? 採用!」って感じで使ってもらえて。

――すごすぎる! けど、それって声優と別でギャラはもらえるんですか?

神門 これはもらえました!

――良かった! でも本当にいろいろできると、逆に器用貧乏になってしまいますよね。

神門 そうなんですよ。また私もドジなんで、請求書とかも書くの忘れちゃうんですよねぇ。

――それだと、振り込まれなくても文句言えないね……。神門さんは、アイドルにも女優にも特別なりたいわけじゃなかったし、「声優になりたい」っていう気持ちも薄そうですね。

神門 そ・れ・が!! 実は、高校生の時に声優の養成所に通ってたんですよ!! 親に泣きながら土下座して頼んで、もちろん許してもらえないから、最終的にはブッチして自腹で通ったんです。

――でも、アニメもドラマもNHKオンリーな家庭で育った神門さんが、どうして養成所に通おうと思ったんですか?

神門 小学校から中学3年まで、ずっとボランティアをやっていたんですけど、ある年、活動の一環でバリ島に行ったんです。貧しい地域だったから、テレビもその一帯で一つしかなくて、みんなで集まって観る状態で。そこで「日本のアニメも観てるけど、日本語だからわからない。あのセリフはなんて言ってた?」って聞かれたけど、私はそのアニメを観たことがなかったから、全然説明できなったんです。それから語学の勉強も頑張ったし、「こういうアニメや芸術を通じて世界と繋がる方法もあるんだ!」って気付いて、隠れてコソコソとアニメを観るようになったんです。その流れで、高校の時に「声優になりたい」と思って養成所に入って、そこから映画にも興味を持って、映画に出たくなって、最終的に井口監督の映画に……。

――なんか美しい話からすごいところに着地している! けど、ちゃんと映画業界で働いているし、声優デビューも果たしたし、伏線を見事に回収しているのがあっぱれですね。

神門 やりたいことをやるのに、無駄なことはないんだなって思いました。声優もまたやりたいです!

――中国を征服しに行ったことも、きっと無駄ではないのでしょう。いつか本当に征服できるかもしれません。

神門 いや、するつもりでいますよ、本当に(真顔)。

――頑張ってください(真顔)。では、アイドルをやり、女優もやり、声優もやり、次は何を狙いますか?

神門 アカデミー賞を狙いたいです!

――じゃあ、まずは単体で井口映画の主役を狙いましょう!

神門 そうですね! どうしたらやれるかな?

――勝手なイメージなんですが、井口監督って女の子のおならとか好きじゃないですか。だから、芋をやたら食べて、打ち合わせ中やライブ中にうっかり屁をかまし続ければ主役ももらえるんじゃないですか? あと鼻血も出して、歯に青のりもつけましょう。

神門 イヤだなぁ! それに、そもそもアカデミー賞って無理らしいんですよ、今。

――え、なんで?

神門 アカデミー賞を取るには、1日に最低3回はシネコンで映画が上映されてないといけないとか、いろんな既定があって、そもそも単館上映は無理なんですって! だから、まずは井口監督の映画がシネコンで上映されないと無理なんです! あとは、私が自主製作映画で広げた人脈と、私の知ってるアイドルを繋げて、私にしか作れない映画を撮りたいんです。それを海外の映画祭に持っていきたいな。今年とか、来年には!

――おお~! そんな壮大なプロジェクトがあるんですね!

神門 もう脚本も書いてるんですけど、井口監督に相談すると、すごく丁寧にちゃんと構成から見てくれるんです。なんでも学ばせてくれる、すごく良い環境ですよ。あんなに愛に溢れた可愛いプロデューサーはいないです。

――井口監督を校長とした学校っぽいですね。世界的な鬼才にマンツーマンで教えてもらえるなんて、めちゃめちゃお得ですね。

神門 ポスター製作も『アウトレイジ』のポスター作ってる人に弟子入りして教えてもらっているんです。できることは、死ぬまでやりたい放題したい(笑)。

――偉い! しかしながら、なんというか、生き急いでいるの?

神門 確かに、死に対する恐怖がすごいあるんですよ。生に対する執着がすごい。死にたくない。身近な人がけっこうポンポン亡くなってるので、そのせいもあるのかな。「守護霊がいっぱい憑いてる」って言われます。

――確かに、神門さんは多めに護られてないと生きていくのが辛いレベルのドジっぽいです。ちなみに、映画の製作に入ったらアイドル業はどうされますか?

神門 死ぬまでアイドルを辞めるつもりはないです!

――アイドル界の横浜のメリーさんみたくなるのかな?

神門 いや、宍戸留美さんみたいになりたいです。この間、森下純菜さんともご一緒させていただいて、「アイドルを長く続けることもできるんだ!」と思って。私はアイドルも女優も、どっちも長く続けていきたいんです。そしてアイドルで女優だからこそ撮れる映画を創りたい! なので、辞めるときは死ぬときですね。

――リングで死のうとするボクサーみたいな生き方で、守護霊もなかなか気が抜けませんね。今後とも良いご加護がありますように! 応援してまーす!!
(取材・文=小明/撮影=宍戸留美)

●みかど・みのり
生年月日:11月23日
155cm/42kg
B.83 W.54 H.82
特技:ドジを踏む、19年間習っているクラシックバレエ
語学:英語 TOEIC750(英語)、HSK4級(中国語)、弓道初段
好きな作家:ウディ・アレン、オー・ヘンリー、阿刀田高
趣味:料理、手芸、食べ歩き、ダンス

■9/17ノーメイクスのニューシングル発売決定!
【サイファイ/大傑作】(両A面)
品番:NMKS-1007
<収録曲>
1 サイファイ
2 ゴーストスクワッドのテーマ
3 大傑作 <ノーメイクス with 井口昇>
9月17・18日とタワーレコードにてリリベ決定!<井口昇監督も出演!>

■ノーメイクス主演映画第2弾『ゴーストスクワッド』2017年冬公開予定!
監督:井口昇
https://youtu.be/jv9ZUOWbrG0

●ししど・るみ
1973年、福岡県生まれ。1990年にアイドルデビュー、18歳でフリーアイドルになり現在まで様々な分野で活動中! フランス、ドイツ等でもライブを行い音楽活動で高い評価を得ている。

【27周年記念プロジェクト】
モーションギャラリーにてクラウドファンディング開始!石嶋由美子&福田裕彦のゴールデンコンビの楽曲を新たに再録予定!!
https://motion-gallery.net/

増田賢一氏と25年分の宍戸留美を撮りためた「東京幻想写真集」(http://tower.jp/item/4293243/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%B9%BB%E6%83%B3%E5%86%99%E7%9C%9F%E9%9B%86)発売中!!

公式HP: http://rumi-shishido.com/
ブログ: http://lineblog.me/sundaliru/
Twitter: @RumiShishido

●あかり
1985年、栃木県生まれ。02年、史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。『卑屈の国の格言録』(サイゾー)、『アイドル墜落日記 増量版』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/>シングル「君が笑う、それが僕のしあわせ」発売中。<http://www.cyzo.com/akr/>