日曜朝9時のヒーロー番組枠「ニチアサ」。子どものみならず、一部の大人からも人気の枠で、今期は『仮面ライダービルド』と、スーパー戦隊シリーズとして42作目を数える『怪盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』の2本立て。



 戦隊モノとしての元祖となる石ノ森章太郎原作の『秘密戦隊ゴレンジャー』と『ジャッカー電撃隊』を『スーパー戦隊シリーズ』としては含めないという説(『バトルフィーバーJ』からという説)もあったが、今は正式に含めて語られているようだ。そして、今作で気になるのは「VS」? 対立してるの? という部分。

■「VS」シリーズはお馴染みだったが



 今までも、正式なレギュラー戦隊以外に「追加戦士」として物語中盤などで投入され、起爆剤的に活躍するキャラクターはいた。古くは『ジャッカー電撃隊』のビッグワンから始まり、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』に登場したドラゴンレンジャーは人気のあまり正式メンバーにも加入、続く『五星戦隊ダイレンジャー』のキバレンジャーなどもこの流れに続いた。

『爆竜戦隊アバレンジャー』のアバレキラーは、ずっと敵側だったが終盤共闘の後、壮絶な死。人気を博した。



 そして、これまでも『スーパー戦隊祭り』と呼ばれる豪華版などで「VS」として、主に誤解を原因として新旧2つの戦隊が対立(VSといいながらさほど対立していないのもある)する見せ方は何度もあった。主にその時期放送している戦隊と次年度の戦隊で構成されたが、『海賊戦隊ゴーカイジャーVS宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』(2012)は、それぞれスーパー戦隊35周年、メタルヒーロー30周年を記念した「異種対決」で、往年のアクションスター・大葉健二(バトルケニア・デンジブルー・ギャバン)の衰えぬ活躍にかつてのファンも目頭を熱くした。

 しかし、これらはいわゆる特別篇である。今回画期的なのは「シリーズ初のW戦隊」と銘打ち、初めから2つの戦隊が対立しつつ通常放送をする点だ。

■W戦隊と敵のそれぞれの関係性



 まず、どちらの敵でもある絶対的な悪である「ギャングラー」といういわゆる悪の組織が存在し、それに対しルパンレンジャーは、おのおの大切な人をギャングラーに消されたメンバーばかり。「消えた人も取り戻せる」というアルセーヌ・ルパンの子孫を主とし仕える執事コグレ(温水洋一)の言葉を信じ、主にギャングラーの所有する「ルパンコレクション」なるお宝を収集する。

そして、このギャングラーとルパンレンジャー、どちらも取り締まろうとするのが絶対的な正義として存在するパトレンジャーで、ここまで(第3話まで)戦闘時は3つ巴の戦いになることも多い。

「失ったものを取り戻すために戦う怪盗、世界の平和を守るために戦う警察、君はどっちを応援する!?」と子どもに選ばせるスタンスをとっているが、当然というべきか、ガミガミうるさいパトレンジャーよりも、子どもには、おしゃれで自由そうなルパンレンジャーの人気が高いようで(いかりやが嫌われ志村が人気だったように)、しかしながら、しがらみを抱えつつ、職務をまっとうせんとするパトレンジャー(主に朝加)の姿は、どちらかというと大人目線で楽しむものかもしれない。

 ルパン側のレッドも、パトレン側のレッド(1号)のまっすぐな正義感を悪く思っていないようで、第2話では「しゃあない」と一時的に手を貸しているし、パトレン1号もルパン側が敵を倒し逃げ去った際「ギャングラーが1体いなくなったんだ、今回はよしとしよう」と認めるようなそぶりをみせるなど、徐々に共闘っぽい流れになってきている。

 それぞれのキャラクター設定も凝っている。

ルパン三世はもちろんキャッツ・アイまで



 夜野魁利(ルパンレッド)は普段軽いノリで、宵町透真(ルパンブルー)はクール。それはどこかルパン三世と次元大介のようだし、これに早見初美花(ルパンイエロー)を加えた3人で普段飲食店を切り盛りしているところなどは、3姉妹で喫茶店を営んでいた怪盗漫画『キャッツ・アイ』を思わせる(警察であるパトレンジャーが普段その店を何も知らずプライベートで利用している点も『キャッツ・アイ』の内海俊夫と同じ)。



 名字にはそれぞれ夜を思わせる単語が入り、下の名前を一文字ずつとると「かい・と・う」と細かい。

 普段は私服だが、怪盗として活動時はシルクハットにアイマスクにスーツとやや変態のような格好で、レンジャー変身後は顔面にシルクハットを模した仮面とマント、全体に暗めの出で立ちでシック。変身後、名乗り口上をする際は、どこにいようが背景が夜のレンガとなりスポットライトで照らされ、BGMもジャジーな雰囲気で全体にスタイリッシュ。

 それでいて「例え誰かが倒れても、最後に夢が叶えばそれでいい」とピンチになってもお互いを無駄に助けないという厳しい約束もかわしているなど、昔に比べ全体に情報量が多い。

■銭形警部っぽいパトレン1号



 対するパトレンジャーはといえば、朝加圭一郎(パトレン1号)は、いわゆる堅物として描かれ、犯罪ゼロを目指すまっすぐな熱血漢。そうなのに私服はトレンチコートで「おのれ、怪盗~」とか「貴様ら逃げるつもりか~」と腕を振り上げて追いかける三枚目ぶりなどは思いっきり銭形警部。



 イメージカラーも赤なので不遇のスター赤木圭一郎を連想する名だが、ここまでくると子どもはもちろん50歳以下の多くもピンとはこないだろう。

 パトレン2号、3号となる陽川咲成や明神つかさと共に明るい系の名字に、同じく下の名から一文字ずつ取ると「けい・さ・つ」。

 彼らを指揮する管理官の名前はヒルトップ(=昼トップ・お笑いグループ超新塾のアイク)で、本部にいるロボットはジム・カーター(事務方)ととことんダジャレ。

 変身後は警官の帽子をイメージしたマスクに警察っぽいエンブレム、胸元はネクタイをモチーフとしたストライプデザイン。戦闘前に「国際警察の権限において、実力を行使する!」と口上を述べたり、戦闘中にメガホンを使い敵に大声で指示したり、そのメガホンから三段式のスライド警棒が出てきたりと、警官らしき仕様満載。「パトレンU号」として3人が初合体した際には「なんじゃこりゃあ!?」、もちろん『太陽にほえろ!』のジーパン刑事(松田優作)の殉職時の名セリフだ。


■「デカレンジャー」と共演は?



 警察をモチーフとした戦隊モノとしては、04年に放送された『特捜戦隊デカレンジャー』があるが、こちらも小ネタが多く、ボス(デカマスター)がヘリから狙撃したりと完全に『西部警察』の大門警部(渡哲也)だった。この脚本は、本作『~パトレンジャー』の脚本家・香村純子(生粋の戦隊モノファン)の先輩(同郷の中学でも先輩)にあたる荒川稔久(なるひさ)が担当しており、香村も意識しているという。

 パトレンジャーが国際警察所属の警察官、デカレンジャーは宇宙警察の地球署に所属する刑事で、デカレンジャーは10年後の世界を描く『特捜戦隊デカレンジャー10YEARS AFTER』も作られていたり、『スペース・スクワッド 宇宙刑事ギャバンVS特捜戦隊デカレンジャー』で「刑事」共演もしているので、本作でもどこかで共演を期待したい。

 銃のような武器を交え戦う至近距離での肉弾戦はまるでジョン・ウーの映画のようだし、タイムレンジャー以降増えたCGシーンも今作はてんこ盛りで賛否はあるが、近年見ていない方々も、これを機にぜひ一度ご覧いただきたい。
(文=柿田太郎)