今週もニノちゃまこと嵐・二宮和也がすこぶる愛らしかった日曜劇場『ブラックペアン』(TBS系)も第5話。視聴率は13.4%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、ほぼ横ばいです。
というわけで、振り返りましょう。
(前回のレビューはこちらから)
■完全に『水戸黄門』とか『遠山の金さん』とか
今回も基本的に、ほかの医者が失敗した手術を主人公・渡海(二宮)がリカバリーするという、いつもの展開。マンネリ感の漂う中、目新しさとして投入されたのが手術用ロボットの「ダーウィン」でした。
このダーウィン、実際の医療現場でも使われている「ダヴィンチ」という手術支援ロボットなのだそうです。
もうこのドラマは『水戸黄門』とか『遠山の金さん』のように、お約束を楽しむ作品だと思ったほうがよさそうです。「なんだかんだあって、渡海が助ける」という以上の展開を期待すると、肩透かしを食らってしまう。5話目にして、ようやく楽しみ方がわかってきました。
とはいえ、思い返してみれば、原作である『ブラックペアン1988』(講談社)は研修医の世良くん(竹内涼真)の心情描写に多くのページが割かれているわけで、主人公を世良くんから渡海先生に変更した時点で、1クールのドラマとしては、まったくエピソードが足りなくなることは自明なんですよね。そこで尺足しのために投入されたのがダーウィンだったわけですが、ものすごく、これは違和感があるマシンでした。原作タイトルから『1988』を外したのは、このためだったのでしょうけれども。
■じゃ、スナイプいる?
私は医療についてなんの知識もない単なるどらまっ子ですので、このドラマから得た知識と理解だけで話を進めますけれども、「スナイプ」は最先端医療マシンとして登場したはずなんですよね。これまで開胸が必要だった手術も、スナイプならちょっと穴を開けるだけで心臓の中までいける。
そこで登場したダーウィンなんですが、特徴はこうです。これまで開胸が必要だった手術も、ダーウィンならちょっと穴を開けるだけで心臓の中まで行ける。患者の負担も少なく、執刀医の技量にも左右されない。
まんまこれ、スナイプの超進化版というか、「4本腕のオートメーションスナイプ」というか、ダーウィンが世の中に存在するなら、スナイプっていらなくない? と思うんです。スナイプなら可能で、ダーウィンで不可能なことが想像できない。ここまでさんざん「外科の世界を変える」と喧伝してきたはずのスナイプが、完全に「ダーウィンの腕部分のおもちゃ」にしか見えなくなってしまう。
原作は1988年の話で、当時の現実としてスナイプっぽいものはあっても、ダーウィンっぽいものはなかったのでしょう。
その1988年の時点で“最先端”として登場したスナイプを2018年の現代劇であるドラマにそのまま持ってきて、さらに2018年の“最先端”であるダーウィンも登場させてしまう。自動車に例えれば、4話目まで『頭文字D』(講談社)でおなじみの藤原とうふ店のパンダトレノが「最先端の夢のマシン」だったのに、5話目から急に自動運転の電気自動車が出てきたようなものです。パソコンでいえば「PC-9801」とIntel Core i7搭載の「MacBookAir」が両方とも「最先端」と謳われている。ゲーム機ならゲームボーイとNintendo Switchが……といった具合です。
何が言いたいかというと、それくらい『ブラックペアン』というドラマの肉付けはいい加減なので、マジメに考えながら見ていると頭が混乱するという話です。
『ブラックペアン』のすごいところは、シナリオ的にそこまで粗いことをやっておきながら、毎回それなりにきっちり面白いということです。とにかく見せちゃう。見せ切っちゃう。
今回も、ダーウィンのスペシャリストとして渡海たちの勤める東城大に乗り込んできた松岡さん(音尾琢真)がいい具合に憎たらしく、トラブルに陥ると、いい具合に狼狽えてくれる。アーム同士が干渉して動けなくなったダーウィンが巨躯を震わせて呻く様子を切り取った数秒のカットも、「暴走寸前の最先端マシン」という感じで、異様に怖い。年端もいかない重病の女の子に「高階先生は、干されたんだよ」などと言い放つ渡海は相変わらず猫背で素敵だし、どの場面でも、だいたい一番まともなことを言っているのに扱いがよくない関川先生(今野浩喜)も存在感を発揮している。ノースリーブのカトパンは今日もエロエロにエロい。
端的に言って、画面が終始エモいのです。エモーションに満ちてる。ダーウィンの撮影には、本物のダヴィンチを借りてきたそうです。本物を借りてきておいて「ロボット手術」の信頼性を著しく損なうような描写を平気でやっちゃうあたり、狂気すら感じます。
原作からエッセンスを拾いつつ、基本的には「死にそうな人を助ける」という“場面の強さ”を演出することに全力を注いでいるように見える『ブラックペアン』。あんまり深く考えずに、「今日も最後に渡海くんが助けるぞ!」という気持ちで最終話まで楽しみたいと思います。
(文=どらまっ子AKIちゃん)