テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(1月20~26日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

松本人志「こういうときに消火器を持って駆けつけてくれる人がよくわかるしね」

 何が本当で何がウソなのかを見分けるのは簡単ではない。

たとえば、以前ある番組で指原莉乃が、「インタビューでウソつくんですよ、すぐ」というようなことを話していた。「好きな男性のタイプは?」みたいな質問に対して、媒体ごとに全部違った回答をするのだと。

 では、指原は本当にウソつきなのか? それなら、この発言自体、ウソである可能性が高いので、指原は実は正直者だということになる。だが、正直者ならば、この発言は本当である可能性が高いので、指原は確かによくウソをつくということになる。

 正直者ならばウソつきであり、ウソつきならば正直者――。有名な「クレタ人のパラドックス」ならぬ、「指原のパラドックス」。
指原がウソつきなのか正直者なのかは、どこまで行っても答えは出ない。

 というか、答えが出ないことが重要なのかもしれない。答えが出ないということは、指原の言葉の真意をめぐって、何かと話題になり続けるということだから。

 そしてそれは、『ワイドナショー』(フジテレビ系)での、松本人志の「お得意の体を使って……」発言に対しての指原のTwitterでのつぶやき、「松本さんが干されますように!!!」に対しても言えることかもしれない。このツイートは、松本に対して批判的な人にとっては、「松本を批判している」ように見える。けれど、それ以外の人にとっては、「周囲の喧騒をいなしている」ように見える。


 受け取る者によって意味が変わってしまう指原の言葉。話題にする周囲の声が大きくなるほど、指原の真意は見えなくなっていく。ただ、ひとつだけ確かなのは、どちらにしても最終的に「さっしーすごい」に行き着くことだ。一方で、芸能界の大物にも物怖じしない「さっしーすごい」。他方で、大人な対応で松本をフォローする「さっしーすごい」。

 そして、この記事もまた、絶妙な発言で自身の真意を簡単にはわからせない「さっしーすごい」という話に行き着こうとしている。


 20日の『ワイドナショー』で松本は、自身の「お得意の体を使って……」発言について次のように語った。

「炎上はねぇ、この先もボクはしていくと思うんです。これもうしょうがない。炎上で得られるものもあるし。なるほどなって。こんな大火事になるんや。
大火事になったときに、ホントに大切なものが見えてくるし。持ち出して逃げなあかんものが何なのかもわかるし。こういうときに消火器を持って駆けつけてくれる人がよくわかるしね」

 東野の「消火器持ってきてくれたのは指原さんっていうことでよろしいんですか?」との問いかけに、「指原もそうでしょうし、高須(克弥)先生とか」と答える松本。

 近々、指原が『ワイドナショー』に出演するそうだ。今回の騒動の話にもなるだろう。ツイートの真意を語ることがあるかもしれない。
そのとき、指原が手にしているのは、消火器なのだろうか? はたまた、新たな着火剤なのだろうか? いずれにしても、こちらは「さっしーすごい」と言う準備ができている。

みやぞん「天国みたいな生き方してるか、地獄みたいな生き方してるかの違いだと思いますけどね」

 ウソか本当かよくわからないことを言う人、というのは以前からテレビによく出ていた。たとえば、叶姉妹とか、テレンス・リーとか、湯浅卓とか。ただ、最近はそういう虚実混交な人よりも、ウソがまったくないように見える無垢な人か、あからさまなウソつきに見える人か、どちらか極端な人にスポットライトが当たりやすくなっているような気もする。

 前者の代表格はみやぞんだろう。『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)の初登場時から注目を集め、その後は『世界の果てまでイッテQ!』など、日本テレビ系の番組に多く出演。

いわゆる「お茶の間の人気者」の座に駆け上がった。

 そんな『イッテQ!』で20日、みやぞんが14日間かけてイタリア各地を自転車でめぐる旅が放送されていた。旅の4日目、フィレンツェに到着したみやぞんは、世界遺産に登録されているサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂を訪れる。そこでは多くの観光客が列を作っていたのが、大聖堂の天井に描かれた「最後の審判」。16世紀の作品で、キリストが死者を裁き、天国に行く者と地獄に行く者を選別する場面が描かれている。

 みやぞんは天井を見上げ、絵に込められたメッセージを読み解こうとする。もしかすると、天国に近い場所を天井に描くことで、生きている人間がいる地上、この世は地獄ということを表現しているのではないか。そんな自説を述べるものの、その後、思い直したようにみやぞんはつぶやく。

「でも結局、地獄っていう場所とか、天国っていう場所っていうよりも、天国みたいな生き方してるか、地獄みたいな生き方してるかの違いだと思いますけどね」

 みやぞんは、唐突にこういった含蓄のあることを言う。以前、別の番組で「絶対音感あるの?」と聞かれたみやぞんが、「違います。世の中に絶対はないと思ってます」と答えていたこともあった。

 この日の『イッテQ!』では、こんなエピソードトークも披露していた。

「面白いことっていうのは、実際そんな起きないわけですよ。こないだですね、家に帰りました。ピンポーン。ま、自分ちなんですけどピンポン押しまして、まぁ押さなくていいんですけど。それで家に帰りまして、ガサガサッ、ガサガサッ、て音がするなと思ったんです。ひとり暮らしですよ。あれっ、なんで? なんで? もしかして、お母さんかなと思ったんですよ。で、パッて見たらですね、誰がいたと思います? そう、お母さんだったんです」

 家に帰って物音がしたのでお母さんかなと思ったらお母さんだった、という話。多くの芸人が自分のトークに何かしらオチをつける中、「こんな感じで、あんまり面白いことっていうのは起きないわけです」と、オチではなく、深く読み取ろうと思えば読み取れるような訓示を残して終わるみやぞんのトーク。

 ウソがないみやぞんのトークにオチはない。天国か地獄かという人生最後のオチが重要ではないように。

クロちゃん「(ZOZOTOWNの)前澤さんに100万円もらった夢」

 対して、あからさまなウソつきに見える人の急先鋒は、クロちゃんだ。『水曜日のダウンタウン』(TBS系)でその虚言癖が白日の下にさらされてから、他の番組でも「ウソつき」としての出演機会が増えている。

 そんなクロちゃんが、21日放送の『名医のTHE太鼓判!』(同)に出演していた。過去に同番組の検査で脳動脈瘤、つまり脳内の血管のコブが発見され、余命3年と宣告されたクロちゃん。この日の放送では、その動脈瘤を取り除くための手術を受ける様子が伝えられた。

 4日前から入院し、手術に備えていたクロちゃん。誰もお見舞いに来ず、寂しい気持ちを吐露するといった場面もあった。しかし、手術当日、両親がやってくる。広島の実家からわざわざ上京した両親を前に、クロちゃんは自身のふがいなさを口にする。

「それこそ温泉旅行とかさ、旅行でさ、親孝行でどっか連れてくみたいな感じでね、東京来てもらうんだったらいいけどさ、オレが入院してさ、来てもらうって……(泣)」

 自身の親不孝ぶりを涙ながらに語るクロちゃん。それはまるで、これまでの素行を懺悔しているようにも見えた。

 けれど、そんな息子の言葉を聞いた母親は即、次のように言い放つ。

「演技うまい」

 母親に続き、父親もまた「ウソつきじゃけ」と追い打ちをかける。「ホントに涙出てるのに!」と訴えるも、両親からも演技だ、ウソつきだと指弾されるクロちゃん。その姿を見て、こちらも思わず涙が出そうになった。ウソだけど。

 さて、「親よりも先に死んじゃダメだと思うから」「絶対元気になるから」という言葉を残してクロちゃんは手術に向かう。およそ2時間に及んだ手術は無事終了し、動脈瘤は破裂の危険が遠のいた。

 クロちゃんは手術台の上で目を覚ます。夢を見ていたらしい。どんな夢だったのか。そう聞かれたクロちゃんは、麻酔の影響で口調もおぼつかない中、次のように答えた。

「(ZOZOTOWNの)前澤さんに100万円もらった夢」

 余命3年をなんとかするための手術直後に、お金の話。しかも、降って湧いたお金がもらえるという。朦朧としたクロちゃんの顔を捉えるカメラ。そして入るナレーション。

「脳に異常はないようです」

 手術直後にちゃんと会話ができたことをもって、「脳に異常はない」ということなのだろう。けれど、何か別の異常さを感じずにはいられなかった。というかこのナレーションも、医療・健康番組として番組を見たい人には「脳に異常はない」とストレートに聞こえるように、クロちゃんを面白がりたい人には「別のところに異常がある」あるいは「まだ脳に異常があるんじゃないか」と邪推させるようになっていて巧妙。

 話は最初に戻って。指原の件で、「さっしーすごい」というようなことを書いた。さて、これは私の本心でしょうか? それともウソでしょうか?

(文=飲用てれび<http://inyou.hatenablog.com/>)