元カラテカの入江慎也氏が発端となり、2019年の芸能界で大きな波紋を呼ぶことになったお笑い芸人の闇営業問題。この一件によりタレントが所属事務所を通さずに仕事をしているケースがあることが、世間にも知られることになった。
昨今、タレントや芸能人の収入源は、かつてに比べてさらに多様化している。一般的なイメージにあるCMやテレビ番組出演、ライブや舞台といったエンタメだけではなく、株や暗号通貨への投資から、商品プロデュースといいながらその実態は“名義貸し”というだけのものまで、幅広く展開されるようになった。中でも活況なのはSNSなどを使ったプロモーション案件だ。
フォロワーを多く抱えるタレントが、自身のSNSアカウントで商品画像とともに使用感を投稿すると、ファンたちがこぞって反応する。タレントごとに人気のある層が違うので直接的にマーケティングできる仕組みだが、モデルやイケメン俳優が多いインスタグラムではすでに「レッドオーシャン化している」とネット広告代理店社員は語る。
「フォロワーを多く抱える女性モデルたちからしてみたら投稿するだけでお金を稼げるわけですし、PRしたい企業からはマーケティング効率が良いと思われて競争が激化したのです。また、業界団体では物理的な対価が発生するプロモーション案件には『#PR』といった表記を明記することなどを呼びかけていますが、実際には裏ではステマが今でも行われています」
日本国内においてはまだ、ステルスマーケティング(ステマ)への明確な罰則はない。そのため、「グレーゾーンという認識を持っている広告代理店やPR会社も多い」と前出の代理店社員は話している。しかし、いわゆる“ペニオク事件”によって大バッシングを受けて干されてしまった小森純などステマで大きな痛手を負ったタレントも少なくない。それゆえに、芸能事務所から所属タレントへ「ステマはやるな!」とお達しもあるそうだ。
だが、所属事務所を通さずにタレントと「直営業」ができることを売りにしている闇業者もいるようだ。ある大手化粧品企業のスタッフは、「事務所を通さずタレントに直接、インスタでのPRを依頼する営業がきた」という。
「少し前のことになるのですが、知人を介して売り込みがきました。そこには渡辺直美などインスタで人気の芸能人から、フォロワー100万人以上のモデルなどがステータスとともに写真付きで掲載されていて、金額も掲載されています。新田真剣佑さんが真剣佑名義で掲載されているので、事務所移籍前のものかもしれません」
そのスタッフが見せてくれた価格表には、たしかに有名タレントの名前がずらりと並んでいる。渡辺直美、菜々緒、新田真剣佑が最高額で1投稿300万円のほか、ダレノガレ明美や宇野実彩子が180万円などと生々しい価格が掲載されている。
また、渡辺直美は「※ストーリー1回投稿・タグ付けのみ」やダレノガレ明美の「#PR ハッシュタグが必須となります」といった細かい条件も書かれていた。条件が書かれているのはフォロワー数が多いタレントのみで、逆に少ないタレントは50万円と金額が書かれているものので条件が全く書かれていないのは世知辛さを感じるところだ。
「私には、その資料が本当にこの通りのものなのかどうかもわかりません。その営業担当者は、『事務所を通さないことになってるけど、裏ではちゃんと話は通ってるからバレても大丈夫』と、まわりくどい言い方をしていましたね。実際、悪いことだと思わずに手を出してしまう人もいると思います」(前出のスタッフ)
この資料を見せてくれたのは、誰もが知るような大手化粧品メーカーの社員。さすがに怪しいと思って、危ない橋は渡らなかったそうだ。ただ、こうした営業が回っているのも事実のようだが「なかなかその実態は把握できない」とステマ問題に詳しい広告プランナーは話してくれた。
「こういう案件はこそこそと行われるようなんですが、これが悪いことだと思わなさそうな人を選んで営業するので案外、事務所に報告されないんですよね。
資料を見る限り、薬物使用疑惑を報じた「AERA dot」(朝日新聞出版)へ警告書を送付したダレノガレ明美も、闇営業を斡旋する人間に本人のあずかり知らぬところで利用されているわけだ。こういった闇業者によって悪評が拡散しているのだとしたら、さすがにタレントたちも気の毒だ。